6/7(水)

 

 

@渋谷

ホワイトシネクイント にて

 

 

 

 

TAR ター

 

 

2022年|アメリカ|158分

 

監督・脚本:トッド・フィールド

出演:ケイト・ブランシェット、ノエミ・メルラン、ニーナ・ホス、ソフィー・カウアー 他

 

 

 

ドイツの名門オーケストラ

ベルリンフィルで、初の女性マエストロ

首席指揮者となったリディア・ター

(ケイト・ブランシェット)

 

まさに

その栄華を極めようとしたそのとき

一転して、の、転落劇

 

 

 

去年観た『ナイトメア・アリー』で

すっかりとその魅力につかまれてしまった

ケイト・ブランシェット

 

そのお目当てというところと

彼女の役が、レズビアンで

同性のパートナーとともに

養女を育てている、という要素とで

若干、惑わされてしまうというか

贔屓目に見てしまうというか、な部分が

ある気がしたのだけれど

 

これ、彼女の役を男性に置き換えると

とてもありがちな

パワハラとセクハラの構図なんですよね

 

権力を持ち

 

奥さんと子どもがいて

 

その奥さんは

自分がトップを務める団体の

重要な役職(コンマス)についていて

 

同じくその団体内での重要ポスト

(副指揮者)につきたがっている好みの女性を

愛人に、そして秘書(付き人)にし

 

その他、好みの女性をつまみ食い

 

次いで現れたる、若かりし好みの女性

自分がトップを張る団体に所属希望で

それが叶うように、それとなく画策し

かつ、そういう関係になれないか

そばにおきたい、と近づいていく…

 

 ここのところの、どうにかして

 彼女に取り入ろう、気に入られようと

 媚びるような表情を浮かべるターが

 王様として君臨しているときの

 威厳のある姿との落差で、なんとも、で

 (そう、それらから、狂気に陥ったさままで

 ケイト・ブランシェットが見事に演じていて)

 

そして、そういった奔放な女性関係

(パワハラ・セクハラ)のもつれの一端が

スキャンダルとして

表沙汰になることによっての転落劇、と

 

なんだか

ここのところの日本の芸能界でも

二、三、おおやけになっている

あれやらそれやらを想起してしまう形で

 

芸術的才能や力、生み出された作品等と

人間性や品性は、必ずしも

イコールにはならない、ということ

 

それからこの作品

パーツはあちこちに

あれこれと落とされているけれど

明確には回収されないし

説明もされないんですよね

 

そうそう、冒頭からして

説明もなくはじまるので

目の前のシーンの状況

そこで語られていることを理解しつつ

 

会話や態度等を見ながらの

立場や関係性の把握

 

そこからの、見えていないところ

(こんなことがあった?)の推測と

なかなかに忙しく集中力を要する構造で

 

そう言えば

回想シーンもいっさいなく、このあたりの

観客の想像に委ねられているつくりからは

ちょっと『対峙』を彷彿したりして

 

そして、その説明のなさ

回収のされなさからは

 

目の前のパーツ

明らかになっている要素から

こうだったんじゃないか、と

推測して、判断する

 

まさに「現実」のようだな、とも

 

なので、上記は

私の解釈、主観の入ったあれこれで

 

人によって、それぞれの見え方

受け取り方になっているんだろうなぁ、と

 

それは結末も同様で

 

私は

・初心を思い出した、取り戻した

 と感じられるシーン、と

・自分のしてきた行為を客観視した

 と思われるシーン

 (そしてそれを目にして嘔吐している)

・音楽へのアプローチのしかた、姿勢は

 以前と変わっていないと感じられるシーン

 

それらから

「凋落」ではなく「再起」と

受け取りました

 

傍目からどんな風に見えようとも

本人が、自分にとっての真に大切なものを

失っていなければ

それはバッドではなく、ハッピー

なのではないか、と

 

 

この映画自体、それから

ターをはじめとする登場人物たちも

そうだったのですが

 

物事や人間て

たとえば、偉大な芸術家だったり

パワハラ・セクハラ野郎だったり、は

それは一面であって

全体ではない、というか

 

複合的で、多面的で

 

でもって

そうであることを踏まえたうえでの

視点、というか、感覚、思考、は

 

とかく、なにか失敗をしたもの

誤ったもの、間違ったもの等を

ここぞとばかりに、いっせいに責めがち

そして、叩いてもいいものとばかりに

攻めがち、な現状において

 

欠かしてはいけない感覚だな、と

改めて思わされたりしました