2/15(水)

 

 

@新宿

TOHOシネマズ にて

 

 

 

 

イニシェリン島の精霊

 

 

2022年|イギリス|114分|PG12

 

監督・脚本:マーティン・マクドナー

出演:コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、ケリー・コンドン、バリー・コーガン 他

 

 

 

劇場で予告編を観ていたときには

これは、はて、なんの、どういった話…? と

私の中では、つかみどころがない感じで

それほど引っかからず、だったのですが

 

頼りにしているフォローしている方々が

なにやらそれぞれに言及されていて

 

お、これはもしやまた好物な

観た人それぞれに解釈が、な作品かな? と

気になってしまい、行ってきました

 

 

 

舞台は

いまから100年前(1923年)の

内戦に揺れるアイルランド(本土)の

沖に浮かんでいる、住民皆が顔見知りな

小さな島、イニシェリン島

 

毎日、牛を追い、午後2時からは

友人の コルム(ブレンダン・グリーソン)といっしょに

パブでお酒を飲むことを楽しみに暮らしている

パードリック(コリン・ファレル)

 

けれどある日突然

 

おまえの無駄話につきあって

人生の時間をこれ以上浪費したくない

俺は思索や音楽(作曲)のために時間を費やしたい

だからもう話しかけてくれるな

 

と絶縁宣言されてしまい

 

ケンカしたっけ? いや、してないよな…

酔っ払ってなにか気に障るようなこと

言ったりやったりしちゃったのかな〜

と困惑する パードリック 

 

あの手この手で、なんとか

もとの関係性を取り戻そうとするものの

コルム の意志は固く

 

これ以上俺にまとわりつくなら

俺は自分の指を切る!

そしてそれをおまえにくれてやる!

指がなくなるまで!

(それくらいの覚悟なんだ!)と

宣言されてしまい

 

そんな、どうなるこのふたり、な

ストーリー

 

 

-------------

以下、ネタバレを含む可能性があります

苦手な方はご注意ください

-------------

 

 

これは、なんだか観ていて

 

長くダラダラとつきあってきたけれど

この先の人生、その残り時間のことを考えると

この人といて、時間を共有していても

あまり有意義ではないなぁ、と

別れを決心した彼女(=コルム )と

 

その流れで、突然、別れを告げられ

なんで? どうして?

いままで問題なくうまくいってたじゃん

このままずっと続くと思っていたのに

それが急にどうして???

と、受け入れられない彼氏(=パードリック 

 

そして、なんとか

元さやに戻ろうとするものの

彼女(=コルム )の

「別れたい」という意志は固く

 

かつ、彼氏(=パードリック )は

彼女(=コルム )の別れたい

(=残り時間を、自分の思う通りに

有意義に使いたい)という意志をまったく

組めず、理解できず

 

そうこうしていくうちに

ストーカー化していく彼氏(=パードリック 

という構図にも見えてきて、なんとも

 

そう、これ、普遍的な

人間関係なのでは、とも

 

そして、それは

音だけが聞こえてくる

本土の「内戦」にもそのまま

オーバーラップし

 

 

これ、劇中

自分宛の郵便は勝手に開封され、読まれ

(プライバシーなし)

利己的に感情的に暴力を振るう警官

地獄に堕ちろ!という神父(牧師?)等々

 

狭いコミュニティのあれこれに

嫌気がさした パードリック の妹が

島を飛び出していくのだけれど

 

それが正解だと思うんですよね

 

コルム も パードリック との関係性を

終わりにしたい、そうして

自分時間を謳歌したい、と思ったのなら

 

島を出てしまった方が

よかったのではないか、と

 

まさに前述の

恋人同士の別れ話からの

ストーカー化、ではないけれど

 

一方的に、絶縁状を叩きつけられ

 

それまでの良好だと思っていた関係性が

突如、断ち切られ

 

でも、その相手である本人(=コルム )は

身近にい続ける、視界に入り続ける

 

俺(=パードリック )じゃないやつとは

楽しそうに会話し、お酒を飲み、等している

 

かつてその相手は、そこにいたのは

俺だったのに…!!

 

となるわけで

 

そんな彼女(=コルム )の姿を目にする度に

 

いままでの楽しかった時間が思い出され

 

それと同時に

なんで、どうして、こうなった…?

という思いが日々新たに更新され

降り積もっていき

 

そうして、かつて感じていた感情

楽しさ、愛しさ、は、そのままの分量で

執着や憎しみへと変換されていき

(まさに愛憎は表裏一体)

 

それが日々、繰り返されていったとしたらば

 

必然的に、事態は泥沼に…

 

 

土地から

狭いコミュニティから離れられない

もしくは、その小さな世界が

全てとなっている、というのが

ネックなのだと思うのだけれど

 

そして、最終的に、どちらかが

己の主張、願望を諦めなければ

 

パードリック がかつての

コルム との楽しい時間を諦めるか

 

コルム が自分の使いたいように

自分の時間を使うのを諦めるか

 

どちらかがなければ

収束しない事態となり

 

そして、一度、壊れたり

ねじれたり、こじれてしまった関係は

二度ともとの状態に戻ることはない

 

それはまた

音だけ聞こえてくる

対岸(本土)の「内戦」も

おそらく同様のありさまで

 

いやはや、なんとも…

 

壮大な寓話のようなお話だったなぁ、と

 

 

そして、そこここに

あふれ、にじみだしていた

「人間」らしさ

 

コルム も単純に

パードリック を嫌いになった

というわけではなくて

 

ただ、自分の時間や人生を

大切に、優先したいがために

距離を置きたい、というだけで

 

例えば、パードリック が憎くて

死んでほしい、とか

消えてくれ、とか

思っているわけではなく

 

なので

パードリック が怪我をすれば

手助けするし

 

パードリック の哀しみを

嘲笑うやつがいれば

そいつをぶん殴るし、で、情はあり

 

でもその行動がまた、パードリック 

もとの関係に戻れるかもしれない、という

希望の灯を存続させ続けてしまう

ということにもなってしまうのだけれど

 

と、なんとも厄介で

 

それこそが「人間」ということか キョロキョロ

 

 

観る前に想像していた

人によって、解釈がいろいろ

というよりは

 

このあれこれの描写から、派生して

はたまた、自身と照らし合わせたりして

いろいろと、それぞれに

考えを巡らせてしまう作品

という感じでしょうか

 

それもまた好物で

 

そして、悲喜交々

愚かさも、滑稽さも、厄介さも含めた

「人間」が詰まっている作品が

好みでもあるので

 

劇場で味わえてよかったです

 

 

収穫といえば

パードリック を演じていた

コリン・ファレル

 

ちゃんと認識して観たのは

初めてだったかも?

なのですが

 

突然の絶縁状に、困惑しきりの

見事なしょんぼり八の字眉から

 

ストーカー的、怒りへの変遷

その間の、微細な気持ちの揺れ等も

見事に、細やかに、伝わってきて

 

特にあの、いい人、でも退屈(笑)

というのが、体感できてしまうような

何回か出てきていた

「はぁ?」「あぁ?」みたいな言い回しが

とてもよくて、クスクスしてしまい

 

それから、ラストシーンの

 

おそらく、もうもとには戻れないというのは

本人もさすがにわかっているだろうけれども

 

それでもまだ、戻りたい、戻れるならば…

 

もしくは、どうしてこんなことに…

 

というのが

一瞬の表情や目の色にしっかりと映えていて

それがとても印象的で、よかったでした

 

達者な方なんだなぁ キョロキョロ