読了記録

 

 

 

皆川博子 長編推理コレクション 1

虹の悲劇 霧の悲劇

皆川博子(編:日下三蔵)

柏書房

 

 

 

正確には

収録されている二編のうちの

前編『虹の悲劇』の読了記録

 

最近なんだか確実に

衰えた感のある記憶力

 

なので、読んだ記憶が

霧散してしまわないうちに

記録しておこうかと

 

 

 

小さな旅行会社で働く原倫介が

添乗員として同行した

長崎の祭り会場で事故が起こり

 

巻きこまれた客が、2名死亡

16人が重軽傷を負う事態となる

 

けれど、原倫介には

事故ではなく、故意を疑う

ある心証があって

 

狙われたのではないかと思われる

死亡した客のひとり斎田栄吉の

息子である斎田玉雄とともに

真相を探っていくパートと

 

夫の不倫が原因のひとつで

息子を喪った白坂蓉子が

その復讐のために、計画を立て

夫の不倫相手を手にかけるが

 

その殺したはずの相手の死体は消え

現場には、別の人物(義母)の死体が

残されていた…

 

という

ふたつのパートが交互に進んでいき

水面下で錯綜していた

そのそれぞれの道行きが

やがて交錯し

終幕を迎えるストーリー

 

 

推理ものはあまり読むことがないので

これがこのジャンル的に

めずらしいものなのかどうかは

よくわからないのですが

 

ふたつのパートのうちのひとつが

まず、殺人者の視点と心情の

殺人のシーンからはじまるのに

ちょっと驚き

 

 

ここからは、少しネタバレに

触れてしまうかもしれないので

苦手な方はご注意を

 

 

帯にある

「戦争の影に覆われた二つの悲劇」

の通り

 

この同時進行していく

ふたつのパートの殺人事件は

 

突き詰めていくと

朝鮮人の強制連行・強制労働

労務者への虐待等に端を発していて

 

 

ラストに、原倫介が

 

「自分への不条理を絶対化した。

そのエネルギーに、こっちが

圧倒されてしまったってことかな。」

 

と口にしていたけれど

 

まさにその通りで

 

顛末がつまびらかになると

その保身ではない

行動のありように

 

ひとつの言葉では

言い表せないような

異様なエネルギーを感じる

というか

 

それは、あまりにも凄惨な

想像も絶するような体験を

経たものにしかわからない感覚

至らない境地、なのだろうな、と

 

 

振り返ってみれば

 

戦争で埋めこまれた地雷が

ちょっとした刺激で

爆発したような事件

 

だったのかな…