5/11(水)

 

 

@新宿

シネマカリテ にて

 

 

 

 

ハッチング - 孵化 -

 

 

2021年|フィンランド|91分|PG12

 

監督:ハンナ・ベルイホルム

脚本:イリヤ・ラウチ

出演:シーリ・ソラリンナ、ソフィア・ヘイッキラ、ヤニ・ボラネン、レイノ・ノルディン 他

 

 

 

この広告ヴィジュアル ↑ からしても

気になっていた作品

 

もともとホラー好き、でありつつ

 

その中でも好物である

ダークファンタジーホラーど真ん中

(あれ、違う…?)で

とても好みな作風

 

堪能しました

 

 

 

舞台は、北欧、フィンランド

 

完璧で、幸せな「素敵な家族」を

動画で配信することに夢中で

 

事故で潰えてしまった

自身のフィギュアスケートのキャリア、成功を

娘を体操選手として成功させることによって

追体験し、得ようと躍起になっている母親

 

その母親をよろこばせ、愛されたいがために

がまんし、押し殺し、母の望む娘を演じようと

頑張る娘のティンヤ(12歳)

 

 

ある日、自宅へ飛びこんできたカラス

 

花瓶やら、シャンデリアやら

あれこれと壊しまくったのち

 

どうにか捕獲したティンヤが

 

「逃す…?」と母親に問うも

 

こっちにちょうだいと手を伸ばした母親

 

渡したとたんに、縊り殺され

「生ゴミね」「ゴミ箱に入れといて」と

返されてしまい

 

 

そののち、娘(ティンヤ)は、森で

縊り殺されたはずのカラスと

その卵を発見

 

回収したその卵を密かに育てていき

 

 

ティンヤの抑圧された感情

痛み、哀しみ、苦しみ、涙等を吸収して

すくすくと(笑)育った卵は

やがて孵化し

 

生まれ落ちた「それ」は

抑圧された感情、その欲望のままに

暴走をはじめ…

 

というお話

 

 

 

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以下、ネタバレを含みます

そして、個人的な解釈でもあります

苦手な方はご注意ください

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孵化した醜い「それ」は

ティンヤの抑圧された感情のかたまりであり

ゆえに、ティンヤ自身とリンクしてもいて

(ティンヤが身体的に傷を受けると

「それ」も同様に傷を受ける

逆もまたしかり、で)

 

ふたりでひとつ、というか

分身のような存在で

どちらもティンヤであるのだけれど

 

終盤の展開で

「理想の娘」だけが欲しい母親は

もちろん「それ=娘の抑圧された感情」を

(そもそも娘に感情があることすら)

理解したり、受け入れたりすることはなく

 

この邪魔な、自分の理想に害をもたらす

「それ=娘の抑圧された感情」を

排除さえすればよい、と行動し

 

結果、娘を殺し

残ったのは、見た目はティンヤだけれど

中身は抑圧された感情だけの怪物という

 

毒親が娘を殺す(壊す)

壮大なるメタファー

 

 

動画での幸せアピールに必死で

 

潰えてしまった自身の過去の栄光を

追体験したいがために、娘を酷使し

 

不倫相手に恋していることを

臆面もなく娘に打ち明け

 

さらには、週末、その不倫相手と過ごす家へ

娘を連れて行き

 

旦那のことは「素敵な家族」を演じる

そのためのコマとしてしか見ておらず

 

その旦那によく似た息子には

同様に興味関心がなく

 

もうものの見事に

「自分」しかない母親もすごいのだが

 

 

それを、すべて受け入れ、許している

事なかれ主義で、なにもしない父親も

娘が苦しんでいること、その異変にも気がつかず

(もしくは、見て見ぬふりで)

消極的な毒親であり

 

 

唯一、娘の状況に気がつき

手をさしのべようとするのが

母親の不倫相手の男性だという皮肉

 

 

 

観終わって振り返ると、そもそも、冒頭の

闖入し、家の中を荒らしまわったカラスを

容赦なく縊り殺した母親のシーンで

結末は暗示されていたんだなぁ、とも

 

彼女(母親)の完璧な理想(虚飾)を壊すものは

速やかに排除される、という

 

 

 

そんな母親の完璧な理想を体現している

北欧スタイルの室内は

やわらかな光、パステルカラー、バラの花

ロマンチックな調度品であふれていて

 

そんな明るく美しい環境の中で孵化した

グロテスクな「それ」

 

CGをほとんど使わずつくられたという

その造形、生っぽさがマッチしていて

(CG全開だとすわりが悪かったと思う)

 

それから、鶏がらのような細く長い手足の

(手の指も鳥の足の指のような細長さだった)

ティンヤを演じたシーリ・ソラリンナも

はまっていて

 

 

 

ダークでファンタジーな

ホラーな世界

 

堪能しました