12/22(水)

 

 

@大森

キネカ大森 にて

 

 

 

 

のさりの島

 

 

 

2020年|日本|129分

 

監督・脚本:山本起也

プロデューサー:小山薫堂

出演:藤原季節、原知佐子、杉原亜美、柄本明、野呂圭介、小倉綾乃 他

 

 

 

 

 

舞台は、熊本県天草

 

オレオレ詐欺をしながら放浪している

若い男(藤原季節)が流れ着き

 

寂れた商店街でひとり楽器店を営んでいる

老女(原知佐子)に電話をかけ

 

うまくひっかかったぞ、と

金を受け取りに行ったらば

 

老女から孫の“翔太”と呼ばれ

そのまま奇妙な共同生活がはじまるお話

 

 

 

冒頭の、若い男(藤原季節)が

天草にたどり着いたその

背景で流れているニュース音声が

 

桜の開花情報、かと思いきや

詐欺電話の移動前線の話で

ちょっとクスッとしてしまう

 

 

オレオレ詐欺で

現金を受け取りに来た若い男を

孫の“翔太”と呼び

迎え入れる老女には

 

あれ、認知症?大丈夫かな…?

と思ったけれど

後半で明らかになってくる

老女には老女の

そうした行動をとった理由があり

 

そしてまた

老女にスマホと財布を隠され

出ていくに行けなくなってしまい

なんとなく、そのまま孫の“翔太”として

しばらく暮らすことになる若い男も

 

スマホを探すなら

とりあえず思いつくであろう

お店の電話から、自分の番号にかけて

鳴らしてみる、という簡単な確認方法も

とっていなかったので

 

おそらく

オレオレ詐欺をしながら放浪している

この状況から、もしかしたら

抜け出せるかもしれない、という希望

もしくは、抜け出したい、と

心のどこかで思っている

その無意識の発動からの行動だったのか

 

はたまた、孫の“翔太”と呼ばれ

手づくりの食事に

お風呂や寝床が提供され

誰かの大切な人間として暮らす

そのあたたかさに、束の間

包まってみたくなったのか

 

おそらくそのどちらもなのだろうと

思うのだけれども

 

終盤に出てくる、状況からして

「祈り」や「信仰」といったものに

対しての台詞なのであろう

 

“まやかしでも、人には必要な時がある”

 

それはそのまま

この若い男と老女とが過ごした

奇妙な生活の時間にも当てはまり

 

ちょっとした嘘からはじまった

短い時間だったけれど、それは

ふたりにとって、とても必要な時間

(まやかし)だったんだろうなぁ、と

 

 

そんな、やさしいお話、ではあるのですが

この映画自体が

まやかしそのものであるかのような

もしくは、島時間なのか

とてもゆったりとしていて、静かで

ゆえに、何度か舟を漕いでしまい…;

 

 

“のさり”というのは

この映画の舞台である熊本県天草地方に

古くからある言葉で

 

いいこともそうでないことも

自分のいまある全ての境遇は

天からの授かりものとして

否定せず受け入れる、という

考え方のことなのだそうで

 

前述の、若い男と老女の関係性

その嘘時間のはじまりにも

当てはまるのかな、と思いつつ

 

確かに

地元を愛していて

かつてのにぎわいを取り戻したいと

行動するものもいるけれど

 

東京へと出ていくものもいて

 

かつて賑わった商店街は

いまやシャッター通り状態で

 

でもそれを嘆いているわけではなく

あるがままのその状況をまるごと

そのままに受け入れている

そんな空気感がある映画でした

 

 

途中、街の賑わっていた頃の様子

火事、そこからの復興、お祭り等の

街の記録映像を、商店街にある映画館で

上映するシーンがあるのですが

 

それを眺めている観客たちが

なんだか本当の地元の人たちのようで

そのシーンの感じと

 

終盤、ちょっとファンタジックな

幻のような描写がちらりとあり

 

それらの空気感に、ふっと、以前観た

「嵐電」()を思い出したのですが

 

帰宅後検索してみたらまさに

「嵐電」と同じ「北白川派」の作品でした

 

 

【北白川派】とは

「京都造形芸術大学」と映画学科が一丸となり

その全機能を駆使しながら、プロと学生が協働で

一年をかけ一本の映画を完成させ

劇場公開を目指すプロジェクト、とのことで

 

※下記HPから引用

 

 
 
ちなみに「嵐電」が第六弾作品で
この「のさりの島」が第七弾作品
なのだそう
 
そんなプロジェクトがあったとは
知らなんだ キョロキョロ
 
 
 
それから、老女役の原知佐子さんは
この作品が遺作となったのだそうで
 
味わいのある姿を
スクリーンで観ることができて
よかったな、と思います
 
 
 
そして、今回初めて認識した
イルカセンターのチケット販売窓口で
働いている女の子の役だった
小倉綾乃ちゃん
 
外国人のお客さんが来たものの
英語ができなかったために
意思疎通がはかれず、あわあわ
 
後日、おそらく上記の経験をもとに
必要なフレーズを習得したのだろう
華麗な対応(英語での声かけ)をしたものの
相手は日本語が流暢だった、というオチ 笑
 
も可愛らしくって
クスクスしてしまったのですが
(表情とか空気感もよかったんですよね〜)
 
彼女、寂れた商店街のシャッターの前等で
ブルースハープを吹くシーンがあり
 
私自身は、そんなに耳がいいわけでも
詳しいわけでもないのですが
とてもエモーショナルな音だったので
てっきり吹き替えなのかな、と思っていたら
 
どうも彼女本人が吹いていたものらしく
ビックリ キョロキョロ
 
映像を探してみたのだけれど見つからず

でも予告編↓の背景で流れているものが

そうです