だってわたし ――
―― あのひとを追いかけているわたしが好きなんだもの。
藤原千代子に対する、というより人間一般に対する強烈な皮肉に思えた。
同時に、アニメの世界から現実に引き戻されたと感じた。
だけど、大切なものを開ける鍵で開けられたものが思い出であることを考え合わせるとき、引き戻された現実にあったのは、ひとりの女性であり、ひとりの女優である藤原千代子という、底の見えない存在。
人間という底の見えない存在。
「あのひとを追いかけているわたしが好き」
そんな一言では表しえない人間という生き物。
一言で表しえないからこそ、人は絵を描き、映像をつくり、物語をつむぐ。
当たり前のことだけど、こんな表現の仕方もあるんだと驚いた。
今敏監督がアニメの可能性を模索して、最も成功した作品ではないかと思う。