自宅に戻ると、4つ上の兄が実家に来ていることに気付く。
4つ上の兄は今年の4月から一人暮らしをしている。
彼は100円ショップに正社員として就職して体を壊した時に、
しばらくの間働くことも教育を受けることもできない、
ニートのような状態になった。
その時に彼は両親に迷惑をかけるわけにはいかない、
両親に迷惑をかけている自分は駄目だ、
というようなことを思ったのかもしれない。
真実は分からないが、もしそんなことを思ったのなら、
彼が一人暮らしをしようとするのは理解できる。
駄目な奴、情けない奴というレッテルを貼られて、
惨めな自分が露呈するのは本当に苦しいことだと思うから。
彼は現在市役所の教務課で働いている。
地方公務員だ。
彼は就職して体を壊して、身体と心の具合が良くなった後、
猛勉強して地方公務員になったのだが、
今は燃え尽き症候群のような状態になっているらしい。
母親から聞いただけなので、
詳しいことは全然知らない。
4つ上の兄と目が合う。
『元気か?』
兄が話しかけてくれた。
確かに実家にいた時より覇気がないようにも見える。
やっぱり社会に出た後の不自然な日々が原因なのか?
『まあ、割と元気だよ。』
『怖いけど・・・自分を変えるために・・・。』
『話し方教室やインターンシップに参加することを決めたんだ。』
『そっか・・・。凄いな、お前。』
『何・・・が?』
兄の言っていることが分からない。
『いや・・・お前は本当に大変だったんだなって思ってさ。』
兄の意図が理解できないので、
自分の感じていることを話そう。
『愚痴や文句を言っても・・・。』
『言い訳や責任転嫁をしても・・・。』
『何も変わらないし、誰も助けてくれないから。』
『まあ・・・そうなんだけどな。』
『だから、自分の限界が来るまで・・・。』
『受け入れられないことや不満に立ち向かうんだ。』
『そうか・・・。』
『実はお前に渡したいものがあったから、今日ここに来たんだ。』
『渡したいもの・・・?』
兄が一冊の本とたくさんのCDを取り出す。
『お前に読んで欲しい本があるんだ。』
『と言っても、元気そうだから大丈夫か。』
『苦しくなったら読んでみてくれ。』
俺は一冊の本を受け取る。
本のタイトルは・・・「精神の休息方法」
『それからこのCDをあげる。』
『クランなどのゲームを制作した人達が作った音楽が入っている。』
『暇な時に聴いてみてくれ。』
俺は10枚近くのCDを受け取る。
あの人達が作るBGMや歌は好きなので、純粋に嬉しい。
『ありがとう。』
だから、俺は兄にお礼を言った。
『CDに関しては俺の趣味だ。遠慮しなくて良い。』
『じゃあ、俺は帰るよ。』
兄と別れる。
・・・。
後でCDに入っている音楽を聴いてみよう。
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