今回はLEICA SL2で手持ちのレンズの中から、Kievのレンズとして旧ソ連時代に作られていたL39マウントのレンズを試してみました。

この頃のKievというカメラ、レンズはWW2により東西分離してしまったドイツZIESSの東ドイツ側、ツァイス イエナの生産機器や技術者、労働者までも鹵獲し。

キーフへ移設してKievというブランドでこれらのカメラレンズを生産したという事から始まります。

なので初期の1947年よりのKievⅡというカメラには、戦後やっと復帰したツァイス イエナのCONTAXⅡの面影が残るというか、CONTAXの文字を消したノーネームKievなんてのも存在するくらいほぼ同じものであるとの検証が有ります。

詳しくはわたしの昔のブログ記事に有りますので興味があればお読みください。

コンタックスとキエフ、、、。 | redtylerのブログ

 

今回使用したのはジュピター3という50㎜F1.5標準ハイスピードレンズと、オリオン15という28㎜F6広角レンズをアダプターにて装着した。

 

 

ジュピター3はF1.5という大口径ですがコンパクトだ、いや口径一杯に詰まったレンズは大口径で、現在のAF駆動機構を内蔵したレンズが大きいから余計にそう見えるんですね。

ソ連のこの頃のシリアルナンバーはカメラもレンズも上2桁が制作年号です、なので1957年製です。

この50年代というのがキーで、60年代以降はどんどん品質が低下していきます。

これ徐々に生産に関わる技師がドイツ人からロシア人に替わって行った事によると想定できます。

なので私が持っている旧ソ連製レンズは殆どを50年代でそろえています(例外はソ連オリジナルですがルサールという20㎜の広角レンズで、こちらはコーティングがまだ薄い初期の白鏡胴よりもブルーコートですが濃くなった黒鏡胴の後期型の方が良いと思います、私の私論ですが)。

 

ではジュピター3 50㎜ F1.5、その描写はどうだろうか、千住界隈を徘徊して撮ってみた。

 

 

後述するオリオン15と比較出来る同じ場所から撮影しました。

解放のF1.5で撮っています、かなり甘いのですが、手すりの左側手前の支柱上部に小さくある緑ベースに黒文字の何かのステッカーを拡大してみるとそこへフォーカスしているのが判ります。

なんかべス単(ベストポケットコダック)で撮ったような何とも締まりのない画像だ。

 

 

ピントは来ていてもやはりシャキッとしません。
眠いという表現で良いでしょう、解放では流石に使えないなぁ。

 

 

こちらは一段絞ってF2で撮影した物、防犯カメラの文字にフォーカスしています。

コントラストが甘いからくっきりとはしていませんがそれが軟らかで印象は良いです。

室外機のボケが印象的です、手前の雑草のボケ含めこれは使いようによっては作画に使えますかね。

少し絞るだけで画質はグンとアップします、オールドレンズでは定番ですね。

この後は絞って行ってもF4以上はそれ程画質はアップしません、なのでこの辺りが美味しい所なのでしょうかね。

 

色が出ているのがいいですね、この頃の国産レンズと比較してなんですがモノクロのシャープネス追及で色再現は二の次だったのが多い、青っぽかったりマゼンタかかったりの印象です。

古いニコンやキャノンのレンズ使ってみれば一目ですよ、この辺りは流石に元がZEISSです。

コダクロームは映画用のカラー(当時日本では総天然色なんて言ってた)フィルムとして戦前から有った(風と共に去りぬ、での使用が有名ですね)。

ZEISSはその頃からシャープネスだけでなくカラーバランスを考慮したレンズを作っていたんですね。

 

 

オリオン15の方はどうだろうか。

このレンズはフィルム時代にLEICA M2やMDaでよく使っていたんです。

兎に角シャープで中心部はしっかりとと周辺でも破綻せずで歪曲もほぼ無い、周辺光量は落ちるもののその描写は驚くほどの物でした。

勿論カラーも同時期の国産レンズとは比較にならない位で、濃厚なZEISSらしい描写でした。

先のジュピター3と同じ場所で同じ位置での画像です。

 

 

流石にフィルムでの印象通りにシャープで歪曲も少ないのですが、色見はやはりノスタルジックに写ってる。

前ピンなので左の金柵見るとその辺りがよくわかるか、かなりシャープに捉えてます。

ですが反対側の金柵は滲みが出てしまっている、強い光に当たるとこうなってしまうのも古いレンズなんですね。

 

とはいえこちらのレンズは1959年製です、この頃はまだソ連製のレンズの方が日本製を凌駕していたんじゃないかと思う。

それは勿論鹵獲してきたZEISSの設計、生産技術が反映されていたからなのだろう。

勿論この後1960年代以降一気に日本製レンズは世界を席巻し今に続くのはご承知の通りです。

 

 

ノスタルジックな描写なのがかなり惹かれるものの、それは個人的な感傷によるものでしょう。

私的に暖かい春近しの雰囲気が伝わりますが、やはり白の境とか強めの反射部分の境目は滲んでは甘くなっている。

これも味といえば味なのですがね。

 

 

うーん、こういう雰囲気は何とも冬の暖色の具合とふわりとしたフォーカスがいいなぁ。

ピントが合っているのに甘いって今のレンズには無いですよね。

ただこれはもっとそれらしいモチーフに出会わないと難しいですかね、作品作るならやはり今のレンズの方が良いですね。

 

 

これらレンズはフィルム時代には十分に使えたレンズです、それが今回ノスタルジックなんて言っているが、それはもう遥か過去の物になっているという事でそれを実感しました。

特に色乗りはフィルムだとポジもネガももっとぽってりするくらい濃厚でしたから、デジタルになるとこうも違うんだと。

いまこれらのレンズを作画に使う意義は私には無いでしょうかね、お遊びには良いでしょうが。

ブログ繋がりでお付き合いいただいているLEICA M使いのmaboさんがルサール20㎜をM9やMonochromで使っているのを見るとこれは使えるようですね。

シャープな中央部と光量と共になだらかに落ちる周辺部が印象的なレンズです。

ただルサール20㎜とかトポゴンの末裔35㎜のジュピター12とかは後部が出っ張っていてSL2には装着出来ないんですね、四角い穴のマスクがが当たってしまいます、残念です。

 

ソ連製になったレンズはそれまでの真鍮による鏡胴では無く、原材料費と加工しやすいことを一番の理由にアルミになっている。

精度には問題ないし何より軽いのがいい、おかげでSL2が軽快に扱えました。

 

とはいえ確認という事でこれらも試さないとですね。

 

 

Rレンズは如何にですよ。

この初期の50の2はかなり評価高いですから試してみる価値はアリですね。

実際アダプターで使って再認識したなんって言っている方も多いですしね。

かの赤城耕一氏も自身のアカギカメラ内でこのように書いています。

「このレンズはかなりヤバいです。MマウントのズミクロンM 50mm F2こそが至上だと思っている人にこそ一度は体験していただきたいなあと思います。

本レンズには見る人を惑わすための特殊な粉が硝材に練り込まれ、それが光子に乗り撮影者の網膜に到達しているのではないかと思わせるほど感動が大きいですね。

褒めすぎかな(笑)。」(当以前記事引用)。

更に。

 

 

28の2.8も定評ありますからね。

こればかりは撮って見ないと解りませんからね、早いうちにやってみましょうね。