8時25分に朝飯を食いながらyoutubeで予告映像を見ていたら「劇場で観ないとイカンかな」と優柔不断に思ったのです。そこで少し迷ったものの、寝間着ジャージを着たまま歩いて5分の劇場(T-JOY)へ行って8時40分の回を観劇。

 結論。期待してなかったけど、たくさんツッ込めて楽しかった。

 ウラン濃縮工場の爆撃シーケンスがスターウォーズのデス・スター陥落作戦そのものであったり、どの国だか知らんがスホーイSu-57装備している基地にF14があって、それにスパローと20mm弾が装填されて燃料や電源が離陸できるように準備されていたり、あれだけ攻撃されて混乱状態の基地で電源が消失していなかったり、ノーヘルでH2R二人乗りしてあいつとララバイだったり、数えればキリがないくらいその手の矛盾に突き当たる、ツッ込みどころ満載の映画なんですが、そのたびに「それでも、まぁ、よし」と観続けられる推進力がある映画です。

 これ、なんだろうと考えてみたら新谷かおるの昔のマンガ「ファントム無頼」だと思い当たりました。同作の主人公2人は航空自衛隊のF4パイロットなのだけど、一般人をナイショでF4に乗せたり、離島の飛行場に不時着して電源車もコンプレッサーも無いのにエンジン再始動したり、エンジンまでバラバラだったF4を列線整備員が一晩で組み上げたり、何よりパイロットが専用機を持っていたりするんです(!)。

 ひとつひとついきますが、減圧や緊急脱出訓練を受けていない一般人を無断で音速が出る戦闘機に乗せたら、普通なら左遷だけじゃ済みません。それから離島の何も無い飛行場でF4を始動させることはできません(この手のご都合優先な感じはトップガン・マーヴェリックにも共通しますね)。そして列線整備員とは日常の飛行にまつわる点検整備を行う人たちのことで、ファントム無頼に出てくる今井整備員はこの仕事をしてる人です。しかしエンジンやアビオニクスなどのメンテナンスは整備補給群の検査隊や修理隊の隊員が行っています。バラバラになっていたら専門家でないと元に戻せません。バイクの整備ではないので、ひとりでそれも一晩だけでは組み上げられないのです。また、主人公2人はいつも680号機という決まった機体に乗って、愛機風情(ふぜい)の展開でお話が進みますが、実際の現場ではパイロットは機体を選べません。1日に3回飛ぶ場合でもその度に指示された機体で訓練するようです。電車の運転士に似てますね。1機1機の自衛隊機はパイロットのものというより機付長(各機体の管理責任整備員のこと)のものという話は今では知られた話です。

 当時は子供だから知識が浅かったこともありますが、能天気でロマンチックな感じが好きでファントム無頼を読み続けていました。この「なんだかわからないけど、また読みたくなる」魅力がトップガン・マーヴェリックと共通するかもしれません。

 マニア的にはヘルメットのバイザーがスモークでないのはキャラクター識別のため仕方ないにしても、海軍の設定なのに空軍で使うモデルを使っていたり、コールサイン(TACネーム)を後頭部ではなく前頭部に入れていたり、第5世代戦闘機のSu-57から発射されるミサイルがナゼかフレアで撃墜される赤外線誘導弾だったり(普通は自立型目標索敵弾)、極めつけは後半の出撃シーンでマーヴェリックが階段ではなく機体用エレベーターに乗って飛行甲板に上がっていくところは「それ飛行機用だから!」と心の中でド突いたりしました。

 そうは言ってもマニア心をくすぐる場面も少なくありません。F18もF14もコクピットの情報はすでに公開されていて、とくにHOTAS思想が取り入れられているF18のスロットルには親指や人差し指、中指で操作するマウスのようなスイッチがいくつかあることは、飛行機雑誌を定期購読しているヒトなら知っているのだけど、それを実際に操作するとどのようになるのか見ることができました。また、F14の主翼展開角をどのレバーで変えているのかよくわかったのも収穫です。アマプラで公開されたらスローでチェックしたいところです。

 さらに、ウラン濃縮工場爆破作戦にF35Cが使えない理由がGPS妨害システムが張りめぐらされているから、というものでしたが「えー?」と思いました。機体に数カ所装備したカメラの映像とセンサー類を駆使すれば飛行ルートの計算やターゲット解析はできそうですし、SAMの照準となるレーダー波を反射するステルス機なわけですから絶対に適役なのに。しかしF35Cでの撮影は海軍から許可が出なかったらしく、そこは「言わない約束」でいいような気がします。「最新型アンドロメダの拡散波動砲では白色彗星の中心核を狙えない」的なロートルでなければ達成できない作戦という妥協点は理解しているつもりです。

 そういえば、アメリカでヘルメット着用義務があるのは50州のうち20州。まぁ、場所さえ選べばララバイできるんですね。基地があるところって砂漠が多いから規制厳しくないのかも。アメリカで撮ってるとは限らないけど。

 ツラツラ書いてきましたが、もちろんファンタジー映画だから細かいところをツッ込むのはヤボだってわかってるんですがね。