劇場公開時に映画館で観ました。いつものように素敵なおとぎ話を作る人だなぁ、と思うのです。
 舞台がフィンランドではなくフランスの北の港町だったり、移民問題を扱っていたり、「おや?」と感じる部分はあるのですが、いつものようにダメな大人がまわりのやさしい大人に助けられながら、ダメなりに“正しく”生きていく…人生はそう捨てたもんじゃない、みたいなカウリスマキ作品の“基本”は踏襲されている感じです。
 もちろん移民問題は難しい点が多く、どの先進国にとってもしばらくは解決されない難問でしょう。物語終盤には非現実的な展開もいくつかあります。でもこの作品はおとぎ話なので、それらの奇跡が起こってもいいし、彼の映画はそういうことが許されるやさしさに満ちている。
 求婚、交際サイトに見る「相手に求める条件」ではないけど、我々の多くが誤解していると思われる「やさしさ」に関して、カウリスマキの作品はいつも“答えのひとつ”を出してくれているような気がします。
 いつもカウリスマキ作品を観て感じるのは、登場人物たちのどこかやるせない「哀しみの表情」が良いということです。日々貧しくて生きるのが大変で、楽しいことが少ないんだなぁ…みたいな顔。でも、そんな彼らによる些細な幸せの表現が作品の観る者(私)のカタルシスになるんだと思うと、あらためてカウリスマキのスゴさを思い知るってものです。
 蛇足ですが劇場で売っていたパンフレットを買いました。これが素晴らしかった。移民の黒人少年が着ているセーターの柄がデザインに使われていて、ページをめくると内表紙は主人公の奥さんが大切にしているドレスの柄になってるんです。