す 今年の百里基地祭は12月6日に開催されました。今回はブルーインパルスの飛行展示があるので、その分観客が増えてトイレ行列が長くなるからイヤだなぁ、と警戒していたのです。
しかし当日の会場は例年の入場者数と大差ない印象でした。
実際の入場者数は2023年が40,000人、2024年が65,000人、そして今年が65,000人。いずれも天気は快晴だったので、ブルー目当ての観客増と「今年は築城行くから百里はパス」みたいな観客減が相殺されたんだな、と勝手に思っています。

前回百里に来たのは301飛行隊のファイナル・ファントムを観るために来た2018年でした。コロナ前だったとは、2年前くらいに思ってました……

第3飛行隊が百里に来て、基地の外からF2を見たことはありましたが、そのエプロンに並ぶのを間近で見るのははじめてでした。
どの航空基地祭でもコクピット展示はほぼありますが、格納庫内ではなく屋外で行うのは珍しいと思い。
行列には整理係みたいな隊員がいます。今回の百里では若いパイロットがメガホンで話しながら交通整理をしていました。行列している人々の退屈をまぎらわそうと、イロイロなお話しをしています。ミサイルは主翼の下に搭載できますが、端っこにも取り付けできます、とかエンジンの下側に緊急着陸用のフックがついていますみたいなファミリー向けトークです。サービス感満載で好印象でした。私やマニアにとっては『言わずもがな』ですが、ファミリーやカップルも大勢いるので大切です。
いつもの基地祭では1周1時間くらいはかかるコクピット展示を3周程度しますが、今回は1周で止めました。それは先述のトークとは正反対で、サービスしなさすぎだったからです。
コクピットを見るために登る台車があるのですが、その台上にはパイロットや整備員が立っています。多くの基地祭ではファミリーの場合、子供とパイロットの2ショット写真を撮ったり、簡単な質問をしたりといった1~2分のお楽しみ時間が与えられています。整理係の役目は2分を過ぎると「そろそろ…」とプレッシャーをかけるのが大切な仕事だったりします。
多くのマニアはこのお楽しみ時間のために1時間以上かかる行列に根気よく並ぶのです。
ところが今回の百里では先述のサービス満点のアナウンサー・パイロットが「台の上では写真撮影は禁止です。それからパイロットには話しかけないでください。コクピットを見学される時間は10~20秒です。速やかに次の方に交代してください」と注意喚起しています。これには少し驚きました。マニアだけでなくファミリーの楽しみも『展示見学の円滑さ』のために切り捨てたわけです。
これは選択の問題だから、私を含むマニアにとっては残念ながら『ハズレ展示』と諦めるしかない。しかし、私のように『運転席展示の際に運転手に2、3の質問を投げかける』ことを来場するための大きなモチベーションにしている人も少なくないと思うのです。たぶん新規隊員勧誘には寄与しないが、もう少しで良いのでマニア向け要素のある開催をしてほしいと思いました。アニメキャラみたいなマスコットとか、ではなくて……

格納庫展示はアーマメント(武器小隊)の武器弾薬員による装着展示。こういう精密誘導爆弾はリフトを使い、AAM3のような短距離空対空ミサイルは4人で抱えて装着していた。

コクピット左後方に装備している機関砲の20mm弾(弾丸とカートリッジ)。ダミーにも火薬と同重量のウエイトを入れるらしいです。

いわし団子スープ
今回のケータリング行列は短めで、比較的ストレス少なく買えました。

F2退役まで約10年。
展示実演が終了した会場に残っていた中堅と見える整備員から「今となってはF2が時代についていけない」という話が聞けました。
F2は機動性の高さや多様な作戦に対応できる兵器搭載機能等で評価されている機体だが、現代空戦能力としては時代遅れの感が強いという内容です。
そのひとつが拡張性の低さ。HMDシステムが導入できないほど機体内に余裕が無い。2013年に近代改修されたF15はHMDにより各種レーダー情報をヘルメットのバイザーに表示できる。さらに以前は機首を相手に向けなければできなかったロックオンが、ヘルメット(目線)を向けることで可能となっているのです。つまり横を飛んでいる目標もロックオン可能ということ。使うミサイルは同じAAM5 なので、F2もシステム導入できる拡張性があれば戦闘力を向上できたが、物理的に無理という話でした。「機体各所に点検用のパネルがありますよね。F2はどこを開けてもギッシリ機器が詰まっていて、新しい機材は入れられないんです。F15のような拡張性は場所ありきなので。F2はこのまま残りの年数を運用していく感じですね」
残りの年数に関しては言葉を濁していたが、15年と問いかけたら「もっと! 短いです」と答えるところを考えると、あと10年くらいか。F3がプロモーション以外の情報が無いところで、あと10年で実用化されるとは考えにくい。

ヘルメット
新型と旧型のどちらを使うかはパイロットの希望も考慮されるらしい。ベテランが新型、新人が旧型というわけでもないのだそうだ。ただし両方持つことはできない。

AAM5
04式空対空誘導弾。母機のレーダー索敵によりロックオンした目標へ向けて発射される。追尾終盤にはAIによる画像解析により目標を認識し、自律照準を行いながら命中させる。
つまりチャフやフレアを撒かれても一瞬誤認するが、すぐに修正され目標に向かっていく。
オレンジのベルトで保護されているのが近接信管。ボディ側面にレンズ状のレーダー波発振機があり、目標に近づくことで起爆する。

ミサイルや爆弾などの誘導弾をランチャーに搭載するためのリフト付きトレーラー。微妙な位置合わせが求められる運転はケッコー難しいらしい。コツと要領をつかむには多くの訓練や経験が必要らしいです。

110エンジン
5~6人の整備員が他の業務と並行しながら約半年かかって整備する。
タービンブレードはタービンの圧力に耐えられるよう1枚1枚特殊合金を使って強度高く作られており、先端は不用意に触ると手を切ってしまうほど鋭い仕上がり。
ドライサンプエンジンなので前方右下にオイルタンクがある。

後方4ヶ所にあるダンパー状の機構を使って排気口のノズル開閉を行っている。排気流速の高さから相当な圧力がかかる部分だが、それに負けない強度と出力のあるパーツ。
飛行時間の長い110エンジンは各部に燃料やオイル、それに付着するゴミやホコリでものすごく汚れているんだそうな。整備員視点では洗浄が大変らしい。

カナード翼ではなくアンテナ
2022年から空中給油機KC-767が運用開始され、F2の訓練項目でも空中給油を行うようになりました。それによりコクピット後方にあったアンテナの位置が後方へ移動しているだけで、姿勢を安定させるものではないとのことでした。

こんど来るのは何年後かな?

参考文献:航空自衛隊F-2A/F-2B F2ファンブック 新紀元社
コレ、今まで出版されたF-2関連本の中でサイコーです。マニアが見たいもの知りたいことがかなり網羅されています。とくに飛行機より電車が好きなパイロット、ジオスさんがたくさん出ています。