レンタルショップで過去に借りているのを忘れて、つい借りてしまう作品がいくつかあるけれど、この映画もそのひとつ。
とくに小津映画のファンではないのだが、この遺作を含め彼の後期作の空気感が好きでつい観てしまう。とくにロケ、セットにかかわらず室内の調度や照明の適度な暗さが良い。私の母方の実家が柴又にあったのだが、その家と周囲にあった昭和40年代の空気感に通じていて心地よい。
物語のスジは小津安二郎の定番とも言える娘の縁談を中心とした周囲の人物の人情劇。だからキャスト以外に目新しさは無いし正直言って退屈だ。しかし、笠智衆や中村伸郎らをはじめとした俳優のセリフ回しや呼吸は(たぶん)当時の流行であり小気味よく感じるところもある。
また、テーマのひとつが「老いに向かう男の哀しさ」は上手く表現していると思った。とくに東野英治郎と杉村春子演じる親娘の場面は、そのテーマに加えて適齢期に結婚できなかった娘の怨念が加わって残酷ですらある。この作品の見どころのひとつだ。ただ、度々顔を出す家父長制度の名残や男尊女卑的なセリフは鼻につくが、昭和37年という時代を考えれば仕方ないのかもしれない。
また、岡田茉莉子や岩下志麻といった当時の若手女優のたたずまいが美しい。可憐だ。本編の内容だけなら星3つだが、4つにしたのはこれが理由。さらに蛇足ではあるが笠の会社の田口というOLが印象的だ。彼女は結婚退職するにあたってめかしこんで笠のところへ挨拶に来るのだが、彼女の履いているストッキングのバックシームが艶かしくて目を引かれる。
