これまでのストーリー

春から夏は、ホームレスにとっては楽な季節である。

空き缶の量も増える。

都心に行くと、ゴミ箱に空き缶が目立つ。

私も拾ったりはしないが、石川さんがいたらと思う。

考えてみると、都心にはホームレスは少ない。

いても空き缶を集めたりしていない。

それよりも、ホームレス防止のために公園のベンチには仕切りがしていて、寝転べないようにしている。

泊さんのアパートは、アパートというより倉庫の管理小屋で、今は人の荷物を預かっていて、予約でゲートを開けている。

私の知人から借りたもので、他には貸したことかない。

場末の建物の裏側で、誰も住んでいるとは思わない。

借金で追いかけられた泊さんには、都合がいい。

フェンスには鍵がかかっていて、誰も入れない。

泊さんも鍵を使って出入りしていた。

駐車場は五千円払っているが、スペースは広く、トラックの出入りさえ邪魔しなければ、どこでも使える。

私がしていることは違法だがら、いつ中止になるか分からない。

衛生許可とか、商売のライセンスが必要だ。

ホームレスで邪魔する人はいなくても、一般市民には、そういう人がいないとは限らない。

だから、人が集まると、そういう投書があったりして、いつやめさせられるか分からない。
 
もしそのようなことがあれば、弁当屋でも始めるようにと、はつさんに言った。

その時は、私も手伝うつもりだ。

秋に私が来るまで、どうにか上手く生きていってもらいたい。

それで、週二回の鍋よりも小さく毎日売れて、人も集まらないので怪しまれない。

多田さんのところは人目につくので、芦の奥に小屋を移して、三箇所から出入りが出来るように道をつけた。

そうすれば目立たない。

世の中にはお節介な人がいて、ホームレスがそこらに住み着くことを嫌う。

そういう人達は、何かと邪魔をしてくる。

私が帰国した後のことが気がかりだった。

安全な住処が見つかったのは、幸いだ。

私が気がかりなことは、いくつかある。

泊さん家族がうまくやっていけるか、泊さんは金遣いが荒いので、はつさんの金に手をつけないか心配だった。

その他にも、邪魔が入って商売が続けられないことがある。

世の中、うまく行くことが続くのは難しい。

だから、うまく行かない時どうするのか、人の運と才能が問われる。 

多田さんとはつさんと、三人で話し合った。

多田さんも色々と考えていた。

車があるので、泊さんはどうも遠くまで魚を売り歩いているらしい。

泊さんに言った。

「俺、貴方たち親子を信用して、住まいも車も任せてるんだからね。破ったら、もう手伝わないから覚悟してやって」

「はい」

心からの返事をした。

荷物は泊さんのアパートに置いたので、身軽に成田行きの電車に乗った。


関わりを広げ過ぎてしまった。

手広くやると、問題も出てくる。

倉庫の管理小屋を借りたのは、幸運だった。

家賃だけ、敷金礼金なし、それに高熱費もただ。

それは、泊さん達に鍵を渡して、仕事をしてもらっているからだ。

泊さんに借金取りが押しかけて来る心配もない。

その辺りは、外国人の売春婦がいるらしいが、車で動くので、そういう人たちと関わることはなかった。

夜は、不気味なほど静かだ。

倉庫の周りは、はつさんが掃除をして雑草も手入れをしたので、以前より片付いていた。

うまく行くだろう。

行って欲しい。

10月が待ち遠しかった。

アメリカの生活は単調だ。

家も草木が繁って、庭の手入れから始めなくてはならない。
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