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夏に咲く筈であったあの花。
今年の夏。
陽射しが熱くて心がチリチリ傷んだ私。
こんなに痛いのにもかかわらず、あの花は蕾のまま、花びらは難く閉じてるだけだった。
いつ咲いてくれるかと幾度も幾度も足を運んだ。
何度も足を酷使した。
けれども花を咲かすことなく…。
傷だらけになった私の足を指をみては誰もがもう諦めろと止めに来てくれていた。
大好きだったあの花をようやく忘れかけていたいま。
ゆっくり歩く私の横をいつか見つめていた確かに記憶のある懐かしい色がちらついた。
立ち止まり色の方に目をやると…。
ずっと忘れかけてたあの笑顔が私の方を見つめていた。
もう二度と会うことは無いと思っていた。
もう二度と咲かすことは無いと諦めていた。
あの花が。
あの花が。
『あの花』が。
目の前に大きく両手を広げながら凛と立っているじゃないか!!
10月も終わりに近付き。
季節はこれから冬を迎え入れようとしている。
私自身。
信じられなかった。
何度も見直した。
けれども、あの花は間違いなく私の目の前に咲いている。
忘れていた感情が。
どこからか流れ出てくるのを感じた。
あの花も同じように。
花びらから。
茎から。
大きく広げられた葉さえからも。
透き通り、私を映した雫の粒がどんどんどんどん流れ落ちていく。
その時。
私は透き通っていた。
あの花もやはり透き通っているかのようだった。
雫の塊は、私を伝い、
ゆっくりと地面に落ちていった。
涙なのか。
言葉なのか。
一生懸命、咲き誇っていた勲章だったのかわからないけれど。
私の中に忘れかけてた何かがほんの少し、音を立てて流れ出てきた。
もっと見ていたい気がしたけれど、あえて私はその場を去った。
振り返ってみたかったけれど、あえて私はその場から走り去った。
でも。
いまでもこの目に焼き付いているセピア色のあの花が。
走り去る瞬間にそっと呟かれた言葉。
『来年の夏にはきちんと咲くよ』
どこにいても。
咲いていてくれるなら。
太陽はあの花を。
あの花は太陽を。
いつまでもどこかで。
きっと見つめてるに違いない…。
いまなら言える。
あの花の素晴らしさを…。




