シロクマ裁判の控訴審は、あっさり棄却されたshirokuma6


 この裁判の最大の争点は、地球温暖化(以下「気候変動」)が「公害」と言えるかどうか、ということだ。

 「公害」の定義は、環境基本法2条3項に書かれていて、整理すると、①事業活動その他の人の活動に伴って生ずる、②相当範囲にわたる、③大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。・・)、土壌の汚染、騒音・・及び悪臭によって(いわゆる典型7公害)、④人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることである。

 

 気候変動は、CO2等温室効果ガスの過剰排出によって、地球上のすべての場所で気温が上がり、それに伴う異常気象等が発生して、熱中症、ゲリラ豪雨やハリケーン等による災害、伝染病の蔓延、島嶼国等の水没などが発生することから、①②④を満たすことは明らかだ。

 ③については、大気汚染と言えるかどうかは、普通の感覚では微妙なところだろうが、公害等調整委員会は、例えば、シックハウス症候群や電磁波による被害なんかもここに含めて、柔軟に対応していることからすれば、大気中のCO2濃度が上がりすぎることによって被害が生じる現象を大気汚染とみなすことに大きな問題はないはずだ。

 

 では、裁判所はなぜ気候変動を公害と認めないのか ―


 その一番目の理由は、環境基本法の2条2項に「地球環境保全」について、「人の活動による地球全体の温暖化・・その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす自体に係る環境の保全」と定義されているから、気候変動は「地球環境保全」の問題であって、「公害」ではないということだ。

 こんな理屈が通るだろうか?

 環境基本法2条の2項と3項が排他的関係であるなんて、どこにも書かれていないし、むしろ法全体の構成をしっかりと分析すれば、「地球環境保全」と「公害」のいずれにも該当する問題があることを、法自体が予定していることは明白だ。

 我々は、その点について、詳細に主張を展開したが、裁判所は一審でも控訴審でも、まったく答えていない。


 二番目の理由は、仮に公害の定義への該当性を考えたとしても、毒性等を含む物質の排出によるものじゃなければ公害とは言えないというものだ。

 信じられないことに、裁判所が勝手に公害該当性の要件を追加している。

 しかも、「毒性等」が何を意味するのかについては、一切説明していない。例えば、それが「生命活動に芳しくない影響を与える性質」だとすると、過剰排出によって上記のような被害を生ずるCO2も毒性を含む物質ということになる。粉じんやPM2.5だって同じようなもんだろう。さらに言えば、「等」は何を意味するのか。「毒性を含む物質」とは、結果的に人の生活に被害を及ぼす物質をいうのではないのか、とか。


 また、原子力発電所の廃水などによる熱公害は、単なる温度の問題で、毒性とは無縁の公害だ。これについては、上に書いたように、「水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。・・)」と書いてあるが、「大気の汚染」には、そのようなカッコ書きがないからいいんだと。

 しかし、それはおかしいだろ。

「水質の汚濁」は、「水の汚濁」になっていないから、敢えて「水質以外の水の状態」を入れる必要があるわけで、大気の方だって「大気質の汚染」となっていれば、「大気質以外の大気の状態」というカッコ書きが必要になるはずだ。「大気の汚染」には、大気質もその他の大気の状態も含まれているから、そんな注意書きは必要ないと考えるのが自然だろう。



 というわけで、裁判所の説明は穴だらけだし、もちろん、迷うことなく上告するぜファック!


 な、シロクマ!!