我が師・田中秀征さんから「君がやってる裁判で役に立つかも知れないよ。」と言って手渡された新刊『“福島原発”ある技術者の証言-原発と40年間共生してきた技術者が見た福島の真実-』(名嘉幸照)を読んだ。
沖縄出身で、船乗りになり、アメリカ船籍の機関士の資格を取ったことがきっかけで、GEに就職、そして福島第一原発の1号機が動き出したころに福島に移り住み、3.11までの40年余り、原発とともに生きてきたという、まさに生き証人のような人の手記というだけあって、すべてがリアルで重い。
もちろん、原発は夢のエネルギーだと信じて仕事に打ち込んできたわけだし、自分の生活も原発によって豊かになった。
それだけに思い入れは強い。
しかし、それだけに事故が起こったことに対するやり切れない思い、自責、行き場のない怒り、苦しみは、誰にも理解し得ないほどのものだということが伝わってくる。
この本の中には、そういった複雑な思いがそのまま詰まっとって、そこがこれまで読んだどの原発関係の本とも違うリアリティを感じる。
そして、この筆者に共感できるのは、原発に対する誇らしい気持ちを隠しはしないながら、事故が起こるべくして起こったことを素直に認め、東電、GE、政府等の責任については、極めて冷静に分析しとることだ。
さらに、福島の復興について、責任ある立場として必死に考え、具体的な提案さえ自分なりにまとめ上げ、本気で実現させるべく行動をしとることで、この人の証言がより信じられるものになっとる。
これまで原発を推進してきた人、今でも必要じゃないかと考えとる人たちに、是非読んでもらいたいぜ。