以前、ここで紹介したドキュメンタリー
『400万企業が哭いている-ドキュメント検察が会社を踏み潰した日- 』
の当事者である佐藤真言(まこと)自身が書いたのが、この
『粉飾-特捜に狙われた元銀行員の告白-』
『400万企業~』が、佐藤と共に逮捕・起訴された中小企業の社長らを含め、事件の全体を描いたドキュメンタリーだっていうのに対し、本書は主犯格として特捜に絵を描かれ、追い詰められていった本人の独白だ。
キャッチコピーにも「私は刑務所に入ることなどしていない!」とあることからも、全体に自己の経営コンサルタントとしての業務の正当性を訴えるような、弁解的な記述に終止するものだろうと予想し、実際、読み始めはそんな印象だった。
ところが、読み進むにつれて、それはまったくの思い込みであって、実際にはもっと大きな真実が描かれた作品であることに気づき、グングン引き込まれていった
まず、佐藤は普通に経営コンサルタントとして誠実に仕事をし、厳しい財政状況の中で苦闘する中小企業経営者たちを支えるために、力を尽くしていたわけだが、ある日、なんの前触れもなく検察官が自宅に現れ、そこから想像もしない方向へ人生が転がっていった
懸命に取り組んでいる仕事が、まさか犯罪に当たるなんて、思いもよらない中での出来事だ。
その間の苦悩は、通常体験することのできない絶望的なものであることは容易に想像できるわけで、そのような窮地に追い込まれた者だからこそ到達し得たであろう境地が存分に伝わってくる。
単純な弁解なんかでは決してない、心の叫びのようなものだといっていいだろう
佐藤は、現在上告中で、これが棄却されれば、2年4月の実刑が確定する。
いつ来るか分からない最高裁からの呼び出しに怯えながら、司法試験の勉強を続ける日々を送っているはずだ
それにしても面白いのは、400万企業の方では、自分のために必死に闘ってくれたはずの特捜OB大物弁護士が、本書では率直に恨みの対象となっているところだ。
ここでは、詳しくは書かんけど、どちらも何の飾りもない本心だろうし、そしてその変化を隠さず書いてあるところが、本書の価値を象徴しとるといえる
個人的には、最後の20ページは蛇足で、ちょっと残念だけど、でもホントに面白いし、多くの人たちに読んでもらいたいと心から思う
それにしても、俺と佐藤が知り合った(彼からいきなり連絡が来たわけだが)のは、最初の取り調べから逮捕に至る間の時期で、その後、酒とロックが大好きってことで、これまで結構親密に付き合って来た
その間、先ほど触れた大物弁護士に依頼したっていうのは聞いとったし、それから1年以上経って対立があり、また他の大物弁護士を立てたっていう話も聞いた。
が、弁護士を探すのに苦労したなんていう話は、この本を読んで初めて知ったんだよな
なんで俺に相談しんかったんだろう・・・
いや、遠回しにしとったのに、俺が気づかんかったとか。
ちなみに、一審のころから本人にも言っとったけど、俺だったら情状立証で執行猶予を求めた大物弁護士とは違って、最初から無罪主張一本だ。
粉飾決算ぐらいで犯罪が成立するわけないじゃんっていうのが俺の立場だでさ。
だって、そういう決算書を提出することが欺罔行為とまでは言えんし、第一、審査のプロである銀行がそれによって錯誤に陥ったなんて考えられない。銀行は、決算書だけじゃなく、その他あらゆる要素を総合的に判断して、融資の可否を決定するはずだ
・・・なんて、そんなことを言うもんで、イマイチ信頼できんかったのかな。
まあ、どっちでもいいや。
また酒飲もうぜ、ライブに来いよ、そしてこの本、めちゃナイスだったぜ