STARDUST FIVE-74 | RED EYES

RED EYES

ウルトラ小説

 ∽∽RED EYES∽∽
THE STAR☆DUST FIVE★
Episode.74
「can you see me?」

…おかあさんも
…おとおさんも
…しんじゃった

…みんなが
…おほしさまになったって
…おしえてくれた

…ぼくも
…おほしさまになったら
…あいにいけるかな

…そらにとんでいけたら
…あえるのかな




最初の異変は、対Pウォリィア戦直後から発生していた。大気圏外、地球の軌道衛星上の宇宙空間に、僅かな未確認エネルギー反応の発生が観測されたのである。
それは計器類の誤作動として片付けられてしまう程の、極小の反応であった。発生地点にも、何も存在していないかのようであった。
しかし確かに何かが存在していた。それは始め、アメーバ状のナノサイズであった。それが宇宙空間に浮遊するあらゆる物質を吸収し、次第に質量を増していったのである。極僅かな水分や、それこそ塵屑のようなもの、更に太陽光線からなるあらゆる紫外線など、ありとあらゆるものをエネルギーとして取り込んでいったのである。
そしてそれは一週間もしないうちに、直径100メートルは下らない大きな隕石のような物体へと成長していった。だがここまで至っても、まだ何らかの脅威とは考えられていなかったのだが…。

「…人工衛星が吸収されたですって?」

驚いて聞き返したのはJSMR怪獣対策本部ブルーチーム・ユウキ隊長。ここは作戦司令室。

「…はい。
 最初は廃棄決定されて
 放棄されていた、
 いわゆる宇宙のゴミでしかない
 衛星でした。
 エネルギーも底を突き、
 唯の大きな鉄屑の塊に過ぎません。」

資料片手に説明するのはカザマ隊員。

「…しかし次から次へと、
 正に手当たり次第だ。
 近場の人工衛星の類を吸収しては、
 その質量とエネルギーを
 増大させていやがる。」

会議中とは思えぬ口調でそう説明するのはアサカ隊員。

「…今や直径500メートル強の
 隕石に成長しています。
 いや、もはや隕石とは呼べません。」

モニターを切り替えて、宇宙空間に浮かぶ謎の物体を映し出してそう説明するのはサジマ隊員。

「…黒いボディーに緑のライン。
 この曲線美ある物体を、
 隕石だなんて
 思えるヒトはいないわね。
 …宇宙船、
 のようにも見えてしまうわ。」

黒地に緑のライン模様、女性の腰を連想させる丸びを帯びた物体。言われて見ればガラス状の部位がコックピットに見えなくもない。

「…無機的でありながら有機的。
 意思があるか否かは別にして、
 あらゆる物質を吸収して
 自己を再構築するプログラム。
 もはや生命体です。
 既に宇宙セクションによる
 迎撃作戦が行われましたが、
 自動防衛システムとでも
 言うべきものの働きで、
 全て無効となっています。」

サジマ隊員の報告と共に、モニター上では宇宙空間における大規模な爆撃シーンがリプレイされていた。だがシールドのようなものがそれを寄せ付けず、また接近するものは触手のような部位で絡め取って吸収していた。

「…でも未だ
 レッドアイズ反応なし、…か。」

独り言のように呟くユウキ隊長。そこが一番重要な点であった。宇宙の未確認生命体であった方が、どれだけ気が楽なことか。

「…いえ、
 因果関係ありと考えるべきです。
 データを遡って検証しましたが、
 万有引力の如く
 地球上の何かと引き合っています。
 それが引き合わされた時、
 あの物体は本当の進化を遂げます。」

司令室とは別のオペレートルームから音声のみで参加するのは、オペレーター・タザキ隊員。推測というよりは予言めいた言い回し。彼女も微弱ながらイラストレーターなのである。

「…攻撃さえもエネルギーとして
 吸収されてしまうようね。
 しばらく様子を見ましょう。
 諸外国にも手出し無用と
 通達しておいて。」

険しい表情で命令を下すユウキ隊長。

「…誰と引き合っているというの?」

しかし内心、恐ろしくてならない。あれだけの質量がレッドアイズとして、闇の使者として覚醒したなら、その脅威は計り知れない。そのことをユウキ隊長は十分承知していたから…。


一方、都心の超高層ビルの一室、シルバーチーム作戦室。レイドウ参謀は、デスク上のモニターに映し出されるリアルタイムの映像を見ていた。そこに映るは宇宙空間の謎の物体。

「…魂なき器。
 あれがボディーか。」

葉巻を吹かしながら呟くレイドウ参謀。それは先日、少年の声のような幻聴を聞き、そしてその手で捕らえたモノの名。

「…確かに掴んだと思ったんだがね~。」

自分の右手に視線を落としながら、その感触を確かめるようにして蠢かす。

「…触れてみて分かったことがある。
 あれはエネルギー体でもなければ
 精神体でもない。
 ほんの僅かな意識の塊。
 この世界には存在し得ないモノ。
 だからどこにでも存在し、
 どこにも存在しない。
 ワタシが認識したことにより、
 一瞬だけカタチを得たのか?
 幻のようなものだな。」

彼はイラストレーター。見えないモノが見え、イマジネーションにより具現化することができた。触れることもできた。だが相手が意識を消したことにより、その存在は消えた。空を掴む、というか掴まされた感覚なのだろう。

「…まあ良い。
 あれは取るに足らないモノ。
 魂なき器に宿るべきモノは
 別に存在する。
 是非とも我が手中に納めたいものだ。」

そう言って彼は立ち上がり、誰もいる筈のないフロアを見回す。

「…聞こえているかな?
 キミという意識が迷い込んだおかげで、
 この世界自体が器を生み出そうと
 躍起になっている。
 しかしそれはキミのモノではない。
 キミは招かれざる客なのだよ。
 分かるかな?」

だが返答はない。その声が意中の相手に届いているのかすら怪しい。もはや彼は感じることはできないのである。何故ならば、相手に拒まれているから…。





                …ねえ
            …おねえちゃん
         …ぼくのことみえる?

声がしたような気がして、振り返ったのはキサラギミライ。ここは都内の軍事医療施設。個室のベッドに眠るはアカバネユウト。Pウォリィア戦で半壊した病院から転院したユウトを見舞っていたところであった。

「…どうかしたの?」

声をかけたのはユウキ隊長。彼女はミライとユウトのことを承知している。だから手の届く範囲、軍事医療施設の転院を手配したのである。空も見えない閉塞感のある病室であった。まるで牢獄のようですらあった。

「…ううん、
 気のせいみたい。
 誰かに呼ばれた気がして。」

素っ気なく答えるミライ。

「…とにかく、
 彼のおかげで救われた命がある。
 ワタシ達だってそう。
 彼が命を賭して守ってくれた命。
 彼は立派に戦って…」

「…ミズキは死んでない!!」

ユウキ隊長の言葉を遮って、ヒステリックに叫んでしまうミライ。重い沈黙が病室を暗く沈めていく。

「…そうね。
 アナタがそう願うなら、
 彼は死んではいないのね。
 でも今、
 目の前に問題がある。
 ひとつひとつこなしていかなきゃって
 教えてくれたのはアナタよ。
 何か分かったことがあったら
 教えて頂戴。」

そう言って、ユウキ隊長は病室を出ていった。全ての鍵を握る『運命のヒト』であるキサラギミライに、宇宙空間の謎の物体に関して何かしらの手掛かりを得る為に聞きにきていた。
だが当のミライは塞ぎ込んでいた。自らの命と引き替えにPウォリィアの自爆から世界を守ったミズキを想って、塞ぎ込んでいた。何も手が付かない。ユウキ隊長からすれば、とてもではないが何かしら情報を引き出せる状況ではなかった。

      …たいせつなひとだったの?

ミライの脳裏にノイズが走る。

        …だいすきだったんだね

誰の言葉も聞きたくないのに、彼女の類い希な感応力が何かを呼び寄せてしまう。

             …さびしいね

「…放っておいてよ」

ミライも自覚していた。何かがいることを自覚していたが、今の彼女は心を閉ざしていた。

             …ねえってば
         …きこえるでしょー?
           …ねえねえってば

「…うっるさい!!」

たまらず叫んでしまうミライ。

「…どっどうした??
 オレそんなデッカいオナラした??
 ごっめーんミライちゃん!!」

その声で飛び起きたのはユウト。彼は5番目の星、ジークライト。明るく元気に冗談めかして振る舞ってみせてはいるが、先日の戦いでも無理をして巨人へと変身し、一向に退院の目途が立たない。

           …みーちゃん!!

「…はあっ!?」

ミライは素っ頓狂な声を出して立ち上がった。

              …ねえねえ
          …みーちゃみーちゃ
         …みーちゃんってばー

「…何なのよ馴れ馴れしいわね!!
 ちょっと静かにしてくれない!?」

どうやらユウトの言葉で自分の名を知られ、いきなりあだ名で呼ばれたらしいミライは、そのことに苛立ってしまう。

「…あ…ごめん」

ユウトは自分が怒られたと思ったのか意気消沈、布団に潜ってしまう。オナラ発言はともかく、勘違いなのであるが…。

「…アナタ、誰?」

               …ぼく?
           …ぼくはふぃーね

「…フィーネ?」

                …ねえ
         …ぼくのことみえる?

そう言われて、ミライは周囲を見回す。しかし窓もない殺風景な病室、でしかない。何も見えない。今の彼女の眼には、その心には、『フィーネ』は映らなかった…。

~つづく~