STARDUST FIVE-73 | RED EYES

RED EYES

ウルトラ小説

 ∽∽RED EYES∽∽
★THE STAR☆DUST FIVE★
Episode.73
「Is it the memory of new star?」

核となるクリスタルプレートの暴走したPウォリィアを連れて、深紅の巨人アクア・ビクトリーフォームが消えた現実世界。破壊されるだけ破壊された惨憺たる現実であったが、小型の無人兵器が空を飛び交っていた。

「…移動型空間相転移シールド
 展開準備整いました!!」

それは墜落したファイターWX2号機から、カザマ隊員の通信。空を飛び交う無数の小型無人兵器が、円陣を組んで静止する。それは墜落したファイターWXに搭載されていた新兵器であった。

「…位相空間崩壊座標軸固定完了!!」

続いて矢継ぎ早にサジマ隊員。円陣組んで静止した小型無人兵器は、隣同士がレーザーで繋がり、円形状のシールドを展開した。

「…試験運用もまだの試作機
 使うなんて正気ですか!?」

裏返った声で口を挟むのはアサカ隊員。だが小型無人兵器は構わず次の段階へと移行する。円形状のシールドが窪んで、お椀状に変形していった。

「…これしか方法ないのよ!!
 やるしかないじゃない!!
 弱いワタシ達にできることって言ったら
 守ることくらいでしょ!!
 今やらなくていつやるの!!」

空に展開される巨大なシールド、まるでレンズのように窪んだそれを凝視しながら、ユウキ隊長は力強く言った。やがてシールドが待ち構える空に亀裂が走り始めて…。

「…次元振動波きます!!」

JSMR本部オペレーター・タザキ隊員の超予測からなる報告。それに遅れること僅か数瞬後、空が弾けた。時空の亀裂が生じ、天文学的に膨大なエネルギーが噴き出した。
それは亜空間メタフィールド内において、Pウォリィアが自爆した瞬間であった。その爆発エネルギーは、アクアのメタフィールドがほぼ全て抑え込んでいた。しかしメタフィールドとはアクア自身、その肉体のようなものである。余りに膨大なエネルギーによって、メタフィールドは崩壊するに至る。
結果、空が割れて現実世界にエネルギーが漏れ出した。それは全爆発エネルギーに比べたら大したものではなかった。しかしそれでも周辺地域が更地にされてしまうと推測されていた。最悪、関東地方全域が全滅する規模と推測されていた。
そこで提案されたのが、『移動型空間相転移シールド』である。これは小型無人兵器を飛ばし、それらが繋がることで、自由にシールドを展開するという画期的な兵器であった。空間を歪ませることが目的であり、その歪みを利用してエネルギーの増幅等もできる。
だがこれは試作段階であった。よって最大の強敵であるPウォリィアを前にしても使用されることはなかった。
はたして空の亀裂から噴き出した膨大なエネルギーが、湾曲した反射板のようなシールドに受け止められて集約され、ひとまとめに直上へと向かっていった。そして天空を突き抜け、大気圏外へと放出されていく。

「…守ったのか…みんなを
 …カッコ付けやがって」

瓦礫まみれの地上から割れた空を見仰いで、アカバネユウトが呟いた。彼も又、ヒトとしての肉体が万全でなかったにも関わらず、赤毛の巨人ジークライトへと変身。守る為に登場し、辛うじてヒトへと戻ることができていた。Pウォリィアの自爆が広がっていれば、彼も死んでいたことであろう。

「…アナタのこと
 …感じられない
 …何処に行っちゃったの?

 …ミズキ」

遠くの川辺のキサラギミライ。彼女も又、守られた一人である。彼女には、アクアのメタフィールド崩壊の意味を理解できていた。それ即ちアクアの肉体の崩壊なのである。アクアは皆を守る為に、その身を犠牲にしたのである。

「…どんなカタチでも良いわ
 …魂だけでも良い
 …ワタシがアナタを表現して
 …きっと現実に描き出してみせる
 …だからお願い

 …戻ってきて」

祈る彼女の脳裏には、無愛想なミズキの顔が浮かんでいた。大丈夫、彼女は未来を描くイラストレーター。彼女の記憶に彼が刻まれている限り、彼女の表現力がきっと彼を具現化する。記憶さえあれば…。


こうしてクリスタルプレートの欠片から端を発し、亜族のプリンス・ピエールから最強最大の巨人Pウォリィアへと進化したタキマサノリの、赤い眼の使者としての物語は幕を閉じた。だがその代償は大きい。生き抜くこと、守ることを決意したキサラギミズキを自爆に巻き込んで消し去ったのだから…。





「…逝ったか」

雪のちらつく山奥の教会跡地にて。ロングコートを着込んだ翡翠の瞳の男が、何かを察して呟いた。ここは東北地方の何処か。西の空を凝視する彼は、ミドリカワケンゴである。

「…いや
 そう簡単に死ねる運命ではないか」

スターダストファイブ第3の星『サベル』である彼には、アクアとPウォリィアの戦いを察することができた。当然、アクアが自爆にも等しい行為で人々を守り、ミズキとして戻ることもなかったことを理解している。それでも彼は、ミズキの身を案じることはなかった。解っているのである。キサラギミズキという男が、究極の闇であり、不死であることを…。

彼はここで何をしているのか。人里離れた雪山の奥の教会跡地。ここには15年前に、まだスクエアエメラルドとして戦っていた際に、強敵と戦って破れた地。その後にヒトとして生かされることとなったが、戦士としては一度殺された場所である。

「…我が右腕が
 …落ちている訳もないか」

自嘲じみた笑みをこぼすミドリカワ。スクエアエメラルドとして死ぬ際、右腕を斬り落とされたのである。その欠損はヒトとして復活した今も残っており、新たにスターダストサベルとして新生して尚、欠損したままであった。

「…我が武器は心の刃
 …誇りという名の剣…か」

落ち窪むコートの右腕部分に視線を落とす。

「…ワタシにしては随分と
 洒落たことが言えたもんだ」

欠損した箇所を、決して人前には晒さない。しかし確かに、そこに右腕はない。

「…それもいつまで通用するか」

彼は自分のことを理解していた。対ザビーモンス戦で見せた居合い斬りの如き光の刃は、覇気のようなモノが力となって具現化したに過ぎない。それが通用するのは、覇気に勝る相手だけ。いずれ通用しない相手が出現することは容易に予期できた。

「…スクエアの結晶でも
 落ちていればと思ったが
 そう易々とはいかないか」

スクエアエメラルドは、力の結晶体としてクリスタルが存在していた。しかしそれは15年前の最終決戦において、絶対の秩序をもたらすスターダストスクエアの使命の為に力を使い果たして消滅していた。



     …みぎうでをさがしてるの?


その時、不意に声がした気がした。いいや、そんな筈はない。

       …みぎうでがほしいの?

幼い子供の声だった。幻聴、にしてはやけに鮮明に聞き取れてしまう。

              …ぼくね
      …まいごになっちゃったの

幻聴だからか、脈略というものがない。

               …ねえ
            …ぼくのこと
            …さがしてよ

率直な疑問、オマエは誰だ?

              …ぼく?
             …ぼくはね

しかしそこで幻聴は途絶えた。ミドリカワは周囲を見回すも、一切の気配はない。だが何かを感じて、空を身仰いだ。雪のちらつく曇り空だけ、何も見えはしない。

「…来る」

だが彼は感じていた。空に、もっと高く大気圏外、宇宙空間に異変が起きていることを…。





時同じく、都内の高層ビルの一室。ガラス張りのフロアから空を身仰ぐ人物。白いスーツに身を包み、嫌らしく葉巻を吹かす男性。

「…クリスタルプレートは
 中々面白い玩具だったね
 …アクアを道連れにしてくれるとは
 天晴れな反面
 複雑な心境だよ」

彼こそが元凶であるレイドウ参謀。JSMR怪獣対策本部シルバーチーム所属だが、彼はレッドアイズ、闇の使者である。シルバーチームは、もはや彼の手駒でしかない。

「…だが次のお目当てが決まった
 やはり『星の記憶』が
 活発になっている
 新たな何かを呼び寄せずには
 いられないのだろうね」

レイドウ参謀は、新たな玩具を与えられた子供のような笑みを浮かべ、いやそんな純真なものではない、舌なめずりする程に酷く嫌らしい笑みを浮かべ、そう呟く。





            …おじちゃん
          …ぼくきらいかも

「…これはご挨拶だな」

レイドウ参謀にも、声が聞こえた。

「…『星の記憶』に導かれしモノよ
 オマエは一体何者かな?」

            …おじちゃん
        …わるいひとでしょ?
         …おしえてあげない

「…いいや結構
 ワタシはイラストレーター
 解らないことなどない」

              …こわい

「…異世界の来訪者よ
 オマエの名を当ててやろう」

           …できるもんか

「…その名は『フィーネ』
 我がモノにしてくれよう」

自信満々にそう言い放ったレイドウ参謀だが、幻聴はそれに答えることはなかった。広がる静寂が、彼を滑稽な一人芝居に仕立て上げた。

「…そこか!!」

だが、レイドウ参謀は動いた。ガラスを突き破って外に身を投げ出し、何かを掴んだ。だがここは超高層ビルの一室。眼下に広がる街並みは積み木のようにしか見えないが、それだけここが高いことを示していた。身を投げ出したのである。それは死を意味して…

…!!…

暗転する世界。一瞬のノイズが空間を塗り替える。割れた筈のガラスが元に戻り、飛び出した筈の彼はそれまでいた場所に平然と存在していた。唯、その手は何かをつかんでいた。

「…随分と小柄だな
 本当に幼子のようだね
 はじめましてごきげんよう」

掴んだものの目に見えない何かに対して、彼は挨拶をした。それは彼の言葉を借りるならば、『フィーネ』に対しての手荒い挨拶であった…。

~つづく~