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Reddened

stories, and so forth.






職場近くのコーヒーショップで休憩時間を一人満喫していると、前の席に突然人が座ってきた。

驚いて顔を見たら、同僚の鷹梨さんだった。


「な、ちょ、なに座ってんですか」

「いいじゃないですか、お店混んでるんだし、早川さん1人なのに二人席使ってるし、有効利用ですよ」

「ああ…」


確かに店内を見渡してみると、席が結構埋まっている。


「しょうがないですね」

「しょうがないってなんですか。俺と一緒にコーヒー飲めるのを喜んでくれてもいいんですよ?」

「いや、それはないです」


ばっさり言い切ると、彼は顔を左右に揺らしてやれやれと言った。


いつも冗談ばかり言う人で、私はその度対応に困る。

繰り返すうち、冷たくあしらうと良いという結論に至った。


それにしても。


「鷹梨さん、お昼それで足りるんですか?」


目の前の彼のプレートには、コーヒーとホットドック一個。

とても成人男性の昼食とは思えない量だ。


「ダイエット中なんです」

「はいはい。給料日前だからですか?」

「お、よくわかりましたね。しかし、早川さんは反対によく食べますね」


私のプレートにはコーヒーとレアチーズケーキ、手にはベーコンと野菜を挟んだ大きめのサイズのサンドイッチを持っている。

確かに、食べすぎだ。


「違うんです。レアチーズケーキが無性に食べたくなって、つい」

「ついですか。なんで女子ってお昼に、『そんな量いけるの?』ってくらい食べられるんでしょうね。ケーキ一口くださいよ」

「えっ、イヤです」


思わず即答してしまった。

だって、すでに私が一口食べていて、彼も食べたら、その、あれになっちゃうし。


「うわぁ、完全拒否ですか…。いいですいいです、どうせ俺は早川さんに嫌われてますもんね」


がっかりしてみせた彼は、自分のホットドックをがつがつ食べだした。


嫌っている?

私が、彼を?


いや、本当はむしろその真逆なんだけど、そう見せまいとする態度が、嫌っているように見えたのかもしれない。


弁解のつもりで、私も彼を真似て冗談めかして言った。


「そんなことないですよ。むしろ大好きですよ」

「ほ、みゃーおむみはいみまふは?」

「・・・はい?」


口いっぱいにホットドックを含ませた彼が何を言ったかわからなかった。

聞き返すと、前に手を出して待ってくれと合図した。


「‥ふう、すいません。じゃあ、お付き合いしますかと言ったんです」

「ああ、お付き合いね。…って、ええ??!なんでそうなるんですか!」

「なんでって、俺も早川さん大好きですし」


わからない。この男は本当にわからない!

こんな時まで冗談を言うなんて。


「いいんですか?もうすぐ休憩時間終わりますよ、急がないと」


私が呆気にとられて言葉をなくしていると、チラリと時計を見た彼が言った。

はっと我に返って、まだ残っているサンドイッチを食べにかかった私の前で、彼はなんの躊躇いもなくフォークを取り、私のケーキを一口食べた。


「~~~!」


口にものを含んでいて叫べない私をあざ笑うかのように、彼はにっこりした。


「手伝ってあげたんですよ。いや~しかし美味しい。‥あっ!間接キスですね!」


わざとらしく言ったあと、「じゃあ先に戻ります」と彼は席を立って行ってしまった。


残された私はがっくりとうなだれた。

どこまでが本気なのか、本当にわからない…。


とりあえず全部平らげた私は、休憩時間に心休めることもできぬまま、仕事へ戻っていった。


この先、どうなることやら。








012514