「私、上司のこと好きですよ」

ラーメンを食べながら上司に言う。
その日上司に誘われて、仕事帰りにラーメン屋に来ていた。
なんのことはない、恋愛感情があって特別に言っただけではない。
ただそう思ったから言っただけ。

彼はただ黙々とラーメンを食べていた。
彼はとても恋愛経験が豊富。
そんなことからも私は安心して上司を誉めちぎっていた。

これで少しでも喜んでくれたらなぁと思いながら…。

その日、とても楽しく彼との食事会は無事終わった。

その後、一緒にゲームしたり「一緒に満喫行こうか?」「一緒にカラオケ行こうか?」と彼が言ってみたり(実際には行っていません)友達みたいな関係になってきた私たち。
そんなある日、バレンタインデーが近づいてきたので、私は彼用にチョコレートを買った。
ブランド物だけど700円の無難なチョコレート。

義理だけど、いらないと断られたら嫌だなと不安になる。
でも、当日は手伝いに行く日だから渡さない訳にはいかない。
しかもその日の前日、メールを彼が返さない&疑問系でも返さないので私が少し怒っていたら、なんのことで私が怒っているのか、何で突然冷たくされているのか分からなかった彼は落ち込んでいた。ということもあり、渡さないわけにはいかない。

チョコを渡すと物凄く彼は喜んでくれた。
「これ、五千円くらいするんじゃない?俺でいいの?」
いや、しないし。700円のだし。
私はただ黙っていた。

「これ本命?」

いやいや、本命のわけないでしょ。
彼氏のが本命だって。

彼「義理ばっかでさ、本命貰ってないんだよね」
私「そう思っているのは上司だけじゃないですか?本命ということにしておいてください」
彼「♪」

そんな彼は、チョコを20個くらい貰っていた。

どこから私達の歯車は狂ったしまったのか。
男性経験が今の彼氏しかない私に、課せられた試練という名の喜劇がここから始まるのだった。
「そっちの仕事が終わったら少し手伝いに来ない?
そこの店長のせいで柴田さんの評価も下がっちゃうのは良くないよ。
こっちも仕事が終わらなくて、来てくれると助かるんだよね。
ただいるだけでいいから、ゆっくりゲームでもしててよ」

私は嬉しかった。

信頼できる上司など今までいなかった。
ましてや、私を心配してくれる上司などいるわけもなかったのだ。
だから、心配してくれて嬉しかった。

私「はい、喜んで!」
そして、週末の土日だけ彼が店長を勤める店舗にて、サービス残業をやることになったのだ。

その週の土曜日、私は約束通り仕事が終わってから彼の店を手伝いに行った。
彼に会うのはこれで三度目。
行ったら会社から支給された青いジャンパーを着ていた。
エアコンが壊れているのか事務所は寒かった。
笑顔で迎えてくれて、飲み物まで頂いた。
軽快なトーク、絶えない笑顔、手伝いは一時間程度だったのだが、物凄く楽しく時間が経つのが早い。
優しさが嬉しかった。

だが、隣に座っている彼が「柴田さんは化粧しないの?」とふと言う。
私はもう26歳なのだが、化粧下地とリキッドファンデーションとチークしか使わないので、しかも化粧直しをしないから仕事が終わる頃には化粧は見事に落ちていた。
以前にも違う男性上司に「化粧は女のマナーだ」と言われたこともあったのだが、ムッとするだけで改善などするわけない。
でも、彼にそれを指摘されたことは嫌だった。

その日の手伝いも終わり、私は帰路につく。

その次の週はクリスマスがあり、私はディズニーシーに彼氏と行っていた。
パレードまではかなり時間があり、凍りつくような寒さに全身が震える。
そしてその時、ふと思い出したのは例の上司。
優しさが物凄く嬉しくて。

脳内でチュー。

ただ漠然と考えていたが、そんなことあり得ないから考えられる。
妄想は大好きだ。

整理して置かなければならない。
私は上司のことを尊敬しており、あわよくば、もっと仲良くなりたいと思ってはいたが、上司として彼のことは好きなだけ。それ以上に考えることはなかった。

「クリスマス手伝いに来なかったね」
クリスマスがあったその週の週末に手伝いに行ったとき、彼に言われた。
彼「彼氏とデート?」
私「はい」
彼「ふぅん、クリスマスも来れば良かったのに」
私「いやいや、さすがに無理ですよ」

その後、仲良くなったから聞いた話。彼は女好きでモテたらしく、五股をしたことがあると武勇伝(?)を披露した彼。
エロいことが大好きで、下ネタとかもよく言っていた。
他の女性社員(多数)にエロチックなメールを送ったりと…
それを聞いた時は引いた。ドン引き。
書いていて頭が痛くなるわ、ホント…。
それでも仕事は出来る尊敬している上司には変わらなかったので、週末は必ず手伝いに行った。評価も上がるかもしれないしね。

なにより、ここでもっと彼と仲良くなったら、ここの店舗に呼んでくれるかもしれない!
なんて、そんなことも思っていた。利用出来るかも?と思っていた自分がちょっぴりダークだ。

数日後、会社のピッチに彼の店舗から電話がかかってくる。
案の定、電話は彼からだ。
彼「元日なんだけど、空いてる?」
私「なんですか?」(まさかデートに誘われるんじゃ…?)
彼「元日営業になっちゃったさ、朝から手伝いに来てよ」
私「(なぁんだ)えー、元日は初売りに行くから無理ですよ」
彼「初売りなんか楽しくないよ、手伝いに来てよ」
私「(無茶言うなぁ)無理ですよ」若干いらっと来る私。
しかし、彼は粘っていた。

そんなに手伝わしたいんかい!とその時は思った。

私のいらっと感を察すると、彼は「やっぱいいよ」と撤回したのだ。
その後、悪いことをしたなと思い、彼に「やっぱり手伝いに行きましょうか?」と申し出るも、気を使われてしまい「大丈夫」と丁寧に気遣う様子がメールに書かれていた。

続く

無事に祝賀会が終わり、また日常生活に戻る。

しかしある日、事件が起こった。それはクリスマス前の出来事。

うちの店の売上金全てがなくなったのだ。
状況証拠は内部を指していた、ただ、証拠がなく犯人と思われた人物は釈放され、今現在もこの会社で働いている。
はっきり言って、犯人はその疑われた人物だと思う、共犯者はいたかいないか分からないが…。

そしてその目的は、怨恨だと私は考えている。


この詳しい話はまたいずれ…。


とにかく、大変だったのだ、12月上旬。
さて、ここで新たな問題が勃発。
今後絶対に1人で、入退店してはいけないというルールになったのだ。
今まで残業して仕事を終わらせていた店長達の、頭を悩ませるタネとなる。

そして、例の彼から提案があると言われるのだった・・・。

続く。