2024年8月のブログです
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馳星周さんの『少年と犬』(2023・文春文庫)を読む。
以前から気になっていた本だが、なかなか読めず、今回、旭川の本屋さんで買って読んだ。
いい小説だ。
最後は久しぶりに泣いてしまった。
じーじの涙がまだ渇ききっていなくてよかった。
一匹の犬をめぐる短編連作だが、それに関わりあう人々の様子がとてもうまく描けていると思う。
どの人たちも、貧困や病気、犯罪、障害などを抱えていて、なかなか大変な人生である。
楽な人生は一つとしてないが、犬との出会いで、一時の安らぎを得る。
犬との別れも必ずしも幸せな形とはいえないが、ある種の余韻を残して、充足感が漂う。
おとなの小説だと思う。
いろんな読み方、味わい方がありそうだ。
子どもには少しわかりにくいかもしれない。
最後は、東日本大震災での犬と人間の関わりが明かされるが、ここでもハッピーエンドとはならない。
しかし、ひょっとすると、それ以上の学びになっているのかもしれない。
深い小説だなと思う。
(文庫本には、2020年刊行の単行本に未収録の「少女と犬」が収録されています。これもいいお話です) (2024.8 記)