岩宮恵子『思春期をめぐる冒険-心理療法と村上春樹の世界』2007・新潮文庫-その2・物語と臨床 | ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人)  

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 たぶん、2016年のブログです

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 先日、河合俊雄さんの『村上春樹の「物語」-夢テキストとして読み解く』(2011・新潮社)を再読していろいろ考えるところがあったので(2011年のブログの再録がありますので、よかったら読んでみてください)、今度は岩宮恵子さんの『思春期をめぐる冒険-心理療法と村上春樹の世界』(2007・新潮文庫)を再読しました。
 2011年10月のブログに一度書かせてもらっていますが、この間、たぶん1~2回は読んでいると思うのですが、やはりいつものように記憶があいまいで(?)、ただ、小さな文庫本はアンダーラインや付箋でいっぱいになってきて、たいへんな状況です。
 今回、あらためて感じたのは事例のすごさです。
 中学生の娘さんが不登校になって相談にみえたお母さんの事例ですが、お母さんとの相談が進むにつれて、お母さんだけではなくて、不思議なことに娘さんも変化し、それにつれてさらにお母さんやご家族もが変わっていくという感動的な事例です。
 この事例を岩宮さんは村上春樹さんの小説や心理療法のことなども参考にしながら考えを進めていきます。
 とてもていねいで、しかも深い考察がなされ、たんなる知識だけでなく、こころの奥のほうから揺り動かされるような感じがする本です。
 今回、特に印象に残ったのは、意識と無意識のバランスをとることの大切さと、無意識の世界を大事にするためには日常の生活をていねいにおこなうことの重要性を再認識させられたことでしょうか。
 なぜか、唐突ですが、禅の道元さんが中国の食事係の禅僧との問答で、食事の準備が即仏道修行だと悟る場面を思い出しました。
 もう一つ印象に残ったのが、生の中に死を感じて生きることの大切さ、ということ。
 先日、松木邦裕さんと藤山直樹さんの『愛と死-生きていることの精神分析』(2016・創元社)を読んでいて(こちらもブログがありますので、よかったら読んでみてください)、同じように、死を感じながら生きていくことがいい生き方になる、と述べられていたのですが、偶然とはいえ、おもしろいところでつながるなと思いました。
 いい本はいろんな学びを与えてくれます。
 さらに謙虚に勉強を続けていこうと思います。   (2016?記)

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 2020年10月の追記です

 本書の増補版(2016・創元こころ文庫)をようやく読みました。

 増補されたのは、村上さんの『1Q84』、『色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年』、『女のいない男たち』の三作品についての論文。

 いずれも、本書と同じく、やはり思春期に焦点を当てて分析をしていて、刺激的です。

 また、女性ならではの視点もあるように感じられます。

 さらに勉強をしていこうと思います。   (2020.10 記)