立原正秋『冬の旅』1973・新潮文庫-凛とした孤高の青年を描く | ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人)  

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 立原正秋さんの『冬の旅』(1973・新潮文庫)を久しぶりに読みました。
 おそらく30代の終わりくらいに再読をして以来、約30年ぶりくらいの再読です。
 とてもいい小説で、記憶力の悪いじーじにしてはめずらしくあらすじを覚えていて、再読がひさしぶりになってしまいました。
 本当にいい小説なので、あらすじだけでなく、文章もじっくりと味わうことができるのですが、もったいないことをしてしまいました。
 今回は、文章を丁寧に味わいながら、ゆっくり、ゆっくりと読みました。
 やはりすごい小説です。
 文章がたびたび胸に迫ってきて、こころを平静に保つのが難しくなることもありました。
 じーじが持っている文庫本は1973年に購入したもの。
 大学1年の時です。
 おそらく高校時代に「冬の旅」のテレビドラマを観て、印象に残っていて、原作を読んだのだと思いますが、当時、ものすごく感動をしたのを覚えています。
 そのころ、じーじは中学校の社会科の先生になりたかったのですが、この小説を読んで、中学校で不良生徒の相手をしたいな、と強く思ったものです。
 結局、いろいろあって、家裁調査官になり、非行少年の相手をすることになったのですが、なぜかわかりませんが、じーじは昔から非行少年に親和感があり、この小説を読んで、その感覚がいっそう強まったように思います。
 官僚や社会的に偉いとされる人より、貧乏や不幸な生い立ちの中で格闘している彼らに共感をしてしまいます。
 自分が貧乏で苦労をしたということがあるのかもしれませんし、自分の中の反体制派の感覚やアウトローの感覚が彼らに親しみを覚えるのかもしれません。
 しかし、ずるい人間を許せないという点では、この小説の主人公と一緒です。
 ずるくない非行少年には優しいですが、ずるい非行少年やずるいおとなは許せません。
 厳しくいえば、結局はおとなになりきれないということなのかもしれませんが…、でも、そういう人生でいいや、と思っています。
 一所懸命に生きつつも、うまくいかない人たち、非行少年もそうでしょうし、病気の人たちもそうでしょう。
 そういう人たちを理解できるおとなでいたいな、とつくづく思います。     (2019.5 記)