2021年5月のブログです
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先日、テレビを観ていたら、英国の旅行家イザベラ・バードさんの特集番組の再放送をやっていました。
とても面白かったので、本も読もうと思い、本棚を探したところ、じーじにはめずらしく、すぐに見つかったので(?)、久しぶりに読みました。
バードさんの『日本奥地紀行』(高梨健吉訳・1973・平凡社)。
1878年(明治11年)にバードさんが通訳と2人で東日本を旅した時の紀行文で、横浜から関東、東北、北海道の日高地方まで旅した記録です。
まだ道路がまったく整備されていない明治初期、人力車や馬、徒歩などによる旅行です。
しかも、泊まる宿屋もノミや虫でひどいところが多く、さらに、外国人を初めて見る人々は、バードさんの泊まる部屋の障子にたくさんの穴を開けて(?)、興味津々と眺めます。
そういう旅を続けて、北海道まで、3か月の旅です。
いろんな苦労を重ねるバードさんですが、しかし、なんというか、その文章の底のほうには英国人特有というか、先日の登山家のウェストンさんもそうでしたが、ユーモアと温さがあります。
もちろん、日本の農村の貧しさや不衛生さ、それなのに、西洋の物まねや軍事増強に走っている明治政府を痛烈に批判しますが、一方で、貧しくとも真面目で正直な庶民への視線は優しく、温かです。
われわれが忘れがちな、昔の日本の庶民の良さをうまく描けているように思います。
時代は日清、日露、太平洋戦争を経て、多大な犠牲の上に、ようやく日本の庶民も平和憲法を手に入れましたが、それも今日、再び、危うくなってきています。
英国婦人を感心させた日本の庶民の良さを大切にしていきたいなと思います。 (2021.5 記)