青い小人の話 | ぼくはきっと魔法を使う

ぼくはきっと魔法を使う

半分創作、半分事実。
幼い頃の想い出を基に、簡単な物語を書きます。
ちょっと不思議な、
ありそうで、なさそうな、そんな。

「お客さん?この時計、電池入ってませんよ。」

「・・・え?電池入ってませんでした?」

「はい。新しいの入れときますね~。」

??おかしいな。いつ出したんだろ?

っていうか、出し方わからないからわざわざお店まで持ってきたんだよな。

そんな疑問を抱えて家に帰った。

そして洗濯物を取り込んだ。

案の定、干してあった靴下の中に・・・

アレ?今週は100円玉、2枚だ。

ここまでは先週の水曜日の話。

10月の最後の週かな?靴下に500円玉が入っていたのは。

それ以来、毎週水曜日に靴下の中に100円玉が入っている。

ただ、今週は2枚だったが。

雨などで洗濯物が干せなかったりした時には、ベランダにコロンと転がっている。

「あれじゃない?小鳥とかが運んできてくれてるんじゃない?『ブラック・ジャック』でそういう話あるじゃん!」

と、言う友達もいた。

でも、怪我した小鳥の看病なんてしたことないぜ。

今週の水曜日は授業が休講。だからずっと家にいた。

洗濯物も干した。

毎週100円玉を運んでくる何者かに出会えるかもしれない。

ガラッ

「へ??」

午後2時頃、ベランダの窓が開いた。

青い帽子。

青い服。

青いズボン。

青い靴。

現れたのはちょうど親指くらいの大きさの小人だった。

肩に大きなカバンをかけ、背中には何本かペンを背負っている。

「あ、こんにちは。」

小人が話し掛けてきた。

「あぁ・・・こんにちは」

「このボールペン、お返ししますね。」

と言って彼は僕に背中のボールペンを渡した。

確かにこれは・・・僕のボールペンだ。

「ねぇ、もしかして靴下の中の100円玉・・・君が入れてくれてたの?」

「はい。先週はボールペンのレンタル料100円と・・・」

彼はカバンの中から時計を取り出した

「この時計の電池・・・お借りしたままなので延滞料100円を入れておきました。」

電池・・・?まさか、

「電池って、この時計の?」

先週新しく電池を入れたあの時計を彼に見せた。

「そうです。お借りしていま~す。・・・でも、あれっ??動いてます?」

「うん、先週電池入れてもらってきた。」

「あ~そうなんですか!ご迷惑お掛けしました。

じゃあ・・・この電池、もらってもいいですか?」

まぁ、特には問題ないよな。

「ん~、いいよ。」

「ありがとうございます!ちょうど合う電池がなかなかなくて困ってたんですよ~!」

最初の500円は時計の電池のレンタル料か・・・。

「あっ!そろそろ時間が・・・次はこのサインペンをお隣の大島さんのところに返さなきゃいけないんですよ。」

彼が出て行こうとしたので、

「お、ちょっと待って!名前は?」

「ルブランといいます。

では、また。」

彼は出ていった。

そういえば、母が昔言っていた。

“借り暮らしの小人”

人のモノを借りて暮らしている小人がいるって。

お金を払う・・・なんて初耳だったけど、まさか本当の話だったとは・・・。

隣のベランダの窓が開く音がした。