藤沢とおるx青柳尊哉クロストーク
〜17歳の決断〜
始めに。
僕は歴代のウルトラマンシリーズの中でも特に『ウルトラマンオーブ』に強く思い入れがあり、特にジャグラスジャグラーが大好きで、田口清隆監督ともお話しをさせて頂き、青柳さんのお人柄や演技に対する熱意を聞いたり、劇場版ウルトラマンオーブのBlu-ray特典のクランクアップの映像を観て僕も泣いてしまいました。
青柳さんを微力ですが応援させて頂きたくこの企画を立ち上げました。
『青柳尊哉さん勝手に応援企画』の第1弾として、『湘南純愛組!』『GTO』など様々なヒット漫画を産み出した「藤沢とおる」先生との対談をさせていただきました。どうぞじっくりとお読み頂ければ嬉しいです。(レッドシャーク近藤)
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=2018年1月14日=池袋にて
青柳尊哉(以下 青柳):今日はよろしくお願いします!
藤沢とおる先生(以下 藤沢):よろしくね。
青柳:僕、漫画の【GTO】や【湘南純愛組!】が大好きで、今日は藤沢先生にお目にかかれるって、ものすごく楽しみにしていました。
2014年に放送したドラマの『GTO』にも出演していたんです。
藤沢:いっぱいでやりあうシーンだよね。
青柳:鬼塚英吉役のAKIRAさんに裁ちバサミで髪の毛をバッサリ切られて「おぼえてろよ!」って(笑)
藤沢:切られたのは付け毛?
青柳:はい、付け毛です。
藤沢:本物の髪の毛切られたらたまらないもんね。
青柳:いや、別に切る手間省けるから別にいいんですけどね。(笑)
近藤:藤沢先生と青柳さんは初対面ですよね?
青柳:じつは僕、藤沢先生のご自宅に一昨年の新年会でお邪魔してるんです。
藤沢:え、そうなの?
青柳:高野八誠さんに誘われてお邪魔したんですけど、あまりの人の多さに恐れをなして1時間で帰ってしまいました。(笑)
藤沢:あの時、人、多かったもんね。(笑)
青柳:素晴らしい邸宅で、僕もいつかは・・って心に誓いました。(笑)
藤沢:役者になろうとしたのはいくつからなの?
青柳:僕は15歳からです。でもどうやってなったらいいか分からなくて、高校やめてうどん屋さんで働いていて、一ヶ月、毎日遅刻してました。
大将が「おまえ何がやりたいんだ。 やりたいことがわかんないんだったら、日本一のうどん屋を目指せ」って言われたんです。 僕この人達嫌いじゃないし、日本一になれるならいいのかな?っても思っていたんです。
藤沢:悶々としてたってこと。
青柳:思春期の自分なりの狭い哲学的な部分に入ってたと思います。
藤沢:特有のね(笑)
青柳:「ダメだこんなんじゃ!生まれた理由を探せ!俺は何者かである!」みたいな。
あるときテレビでアカデミー賞の授賞式を観て「ここに行きたい!ここで日本一になりたい!!そしてレッドカーペットを歩きたい!!!」と思いました。 でも、観てたのは『修羅のみち』とか『ミナミの帝王』とかばかりでしたが(笑)
藤沢:ど真ん中観てるね~(笑) 役者になりたいと思ってもなり方がわかんなくない?
青柳:そうなんですよ。 うどん屋の大将に「僕、役者になりたいです!」と相談したら、「そうなの、じゃあ手紙をだそう」と、大将が【俳優を目指す15歳の少年がいます】と写真を付けて福岡のローカル局に手紙を出してくれました。 そしたら本当に取材に来てくれました。
藤沢:来てくれたんだ。
青柳:その番組を見た別のプロデューサーさんから連絡いただき、別の番組にも出演させていただきました。 そのプロデューサーさんに養成所の存在や東京に事務所があることを教えてもらったんです。
藤沢:そういうのわからないよね。
青柳:そのあと養成所に入って、東京の事務所にも斡旋してもらいました。
ある時に東京の事務所からオーディションがあると連絡があり、
「ついに来た!レッドカーペットへの道!!」とひとり浮かれてました。
それでうどん屋さんに
「来月、上京します」
「来月?お金大丈夫」
「たぶん大丈夫です」
東京に出て来てオーディション会場に行って、
「田舎から出てきました」
「住むところどうしたの」
「えっ、住むところないんですか?・・」。みたいな・・(笑)
僕は仕事が決まって月給と住むところが用意されているものだと勘違いしていました。
藤沢:そのまま行っちゃたんだね。(笑)
青柳:「どうしよう、家無いな。でもカッコつけて出てきたから田舎帰れないしな」って新宿のサウナでしばらく寝泊まりしました。
藤沢:それが17歳?
青柳:はい、17歳です(笑)
藤沢:お金はいくら持ってたの?
青柳:うどん屋さんでもらった給料が10万円でした。
藤沢:交通費やなんかでほとんど飛んじゃうよね。
青柳:飛行機代以外にも、飛行機内で読む漫画もいるし、CDも欲しいな、財布も新しくしちゃって5万円位使いました。
藤沢:まあ、住むところも給料も出ると思ってるもんね。
青柳:はい。10万円はいい小遣いだと思ってましたから(笑)
藤沢:おれも17歳で東京に出てきたけど、ちゃんと働くところと住むところは決めてきたからね(笑)
住込みの仕事で、パン屋だったり新聞配達だったりしながら絵を描いてたよ。
青柳:え?そんな時代があったんですか?先生も17歳で北海道から、一人でですか?
藤沢:成功するまで実家には帰れないと思って頑張ったよね(笑)
青柳:僕は19の時にバイクで事故して両親が傷害保険を入ってくれたおかげで、そこそこまとまった金額が入って、初めて自分で部屋借りました。 その時にこの東京砂漠を生き抜くためのパートナーとして犬も一緒に飼っちゃったんです。
藤沢:食費が余計にかかっちゃうんじゃない?(笑)
青柳:そうなんです。足を怪我したので仕事もできなくなって、犬と二人、せっかく借りた部屋が維持できない状況が早々とやってきたんです。 何も考えずにまとまったお金が嬉しかったんでしょうね、とにかく犬だ!と(笑)
藤沢:親には泣きつかなかったの?
青柳:その時はまだ胸を張れなかったので恥ずかしくて泣きつけなかったですね。
藤沢:おれも大見得切って出てきた以上、成功するまで帰れないから、ず~っと連絡取らなかったんだよ。 そしたら親は新聞で東京湾で上がった身元不明死体とかずっとチェックしてたみたい。 死んでるんじゃないかって。
(一同笑い)
近藤:大学行っててもやりたいことが見つからない人が多い中、お二人とも17歳で人生の決断をされていたのですね~。
藤沢:でも二十歳の時に一度すごく悩みましたよ。 漫画家を目指すべきなのか、実家に帰ったほうがいいのか。 その頃にアシスタントの仕事をもらって、それから人間関係で好転して漫画家として上がっていきました。
青柳:漫画家先生の人間関係は担当編集さんとかですか?
藤沢:そうだね、担当編集と気が合って、それがすごく遊び人の担当でよく一緒に遊びにいったな~。
誰と出会うかは大切なよね~。 青柳君もそのうどん屋さんがなかったらどうなってたかね。
青柳:確実に東京には出てなかったです。 地元で就職して結婚して子どもができて離婚してますね。
藤沢:離婚までシナリオできてるんだ(笑)。 でも、売れてない時代があるからいいんだろうね。
青柳:おかげで楽しく出来てる部分はあると思います。
藤沢:だからこそ、役者について考えたり、自分について考えることかできるんだろうね。
青柳:勢いでかっこつけて田舎を出てきたので、何者かにならなければと言う思いが根底にあるんです。
藤沢:昔より熱くなったんじゃないのかな。
青柳:昔は恥ずかしがり屋でしたけど、恥ずかしくてもしゃべろうって思うようになりました。
自分ってこんなやつです、高校中退ってことも隠すこともなく、バカだって思ってもらって大丈夫です、これしか出来ないんです、みたいな・・。(笑)
それがとっつきやすい入口になったりするならそれでいいなと思いますし、長く繋がっていく出会いになればいいなと思います。
藤沢:その繋がりはできた?
青柳:はい、大切な出会いが少しずつ増えていると感じています。
藤沢:・・・、ひとつ聞きたんだけど・・、
青柳:はい?
藤沢:犬はどうなったの?
青柳:先生、ずっと犬が気になってたんですか?(一同、笑)
亡くなっちゃたんですよ。ウルトラマンオーブ直前スペシャルのOAの30分前に。
僕が東京に出て来て飼った犬だから15歳位。老衰かな?
実家で母がまだ温かい遺体抱いて泣きながら放送観てたとのことでした。
藤沢:長生きしてくれたんたね。ドラマがあったね。
近藤:劇場版ウルトラマンオーブも本来なら青柳さんの故郷の佐賀の映画館での上映予定はありませんでしたが、青柳さんの出身だということで佐賀のみなさんが働きかけて下さり上映できるようになりました。 そして青柳さん単独の舞台挨拶も行われたんです。
青柳:ウルトラマンのOAが始まってから佐賀での仕事がすごく増えて、それまではほとんど帰ってなかったのに2か月に1回くらいは帰るようになっていました。
藤沢:ご両親もうれしかったでしょうね。
役者はいつ咲くかわからないものだし、方程式がない職業だから、そこで偶然とか時代の流れとかの中で地元に凱旋できるのは凄いことですよ。
青柳:本当に出会いと応援して下さる方々に助けられてます。感謝ばかりです。
藤沢:達成すべき目標が見つかったのがまずいいことだよね。
青柳君がアカデミー賞でレッドカーペットを歩く姿、僕も見たいね~。
青柳:実は、日本アカデミー賞に、一般人が投票出来る賞があるってことをけっこう知らない人が多いんです。だから、知ってる人のファンクラブとかの方だけが組織的に訴えかけていたりして・・。(笑)
僕は、やっぱり50年の歴史があって、子供から大人まで記憶に残って、いつまでも心の支えになっているような【ウルトラマン】という映画やドラマ作品のことをもっと世の中に知って貰いたいですし、ウルトラの世界に関わるということはどういことか骨の髄まで沁み込みました。
未来永劫、今、5歳の子供が20年経っても覚えて繰り返し見たくなる作品がウルトラだと思うんです。
そんな作品にジャグラス・ジャグラーという初の人間体のダークヒーローをやらせて頂き、予想外に皆さんに愛されて、色々な作品に関わらせて頂きたくさんの方に喜んで頂きました。
藤沢:単独イベントもやったんだよね? 「枚方パーク」ってあの有名な大阪の「ひらパー」?
青柳:はい、そうです。 単独イベントは名古屋が最初でこのときはヒーローのいないヒーローショーを史上初でやりました。(笑)
お客さん来てくれるのかなと不安でしたけど、ありがたいことにたくさん来てくださいました。それから映画の舞台挨拶も含めて何回もやらせて頂きました。
藤沢:ひらパーは土砂降りって書いてあるよ。
青柳:この時はオーブの石黒さんと二人、ほんとに恐ろしい土砂降りで11月末の寒い中1500人くらい来てくれて、雨天最多人数記録を作りました。
藤沢:人気キャラクターになったんだね。
漫画の場合って例えば主人公を主人公らしくしていくのは、長い時間が必要で、最初からすべて決まっているわけではないので、描いていくうちにキャラクターが動いてきたら固まってきたなと。
青柳:僕は役が作れるのが楽しくて、発見がすごく多いです。 こんな感情は僕にはなかったなと感じることも多いです。
藤沢:助走から連載がスタートして、本格的に走り出したころで熟成されていくみたいな作り方もあるので、
役者さんはいきなりセリフをもらってキャラクターを作って演技できるってすごいな~と。
青柳:僕も撮影がスタートして、ジャグラーという役がどんどん膨らんで行って、スタッフと監督と出演者の皆さんとで創り上がった奇跡のキャラクターにさせてもらったと感じています。
ところで、漫画の作り方ってコマで動かしていくと思うのですけど、先生の中でこのカットの次はこのアングルとかあるんでしょうか?
藤沢:やっぱりまずは読みやすさですね。 それと顔アップばかりだとみんな飽きちゃうので、絵や構図にメリハリを効かせることかな。
青柳:漫画家先生のすごいと思うのは、脚本もカメラも照明も,監督も,役者も,全部一人でやってしまうことですよね。
藤沢:でもね、うちの役者はぜんぜん文句言わないですから。
青柳:僕も文句なんて言ったことないです。
(一同笑い)
藤沢:次の役は決まってるの?
青柳:次は日本初公開の翻訳劇の舞台(2月8日から赤坂レッドシアターで公演『BLOODY POETRY』)なんですけど、それの稽古をしています。 観念的で情感溢れたセリフがたくさんありましてそれと向き合っています。
藤沢:俳優、やり続けてたら面白くなってきた?
青柳:やっと面白くなってきました。
30歳過ぎるまで役者という仕事にたいしてずっと自問自答してて、
誰かにやれと言われているわけじゃないのに何でやってんのかな?と思いました。
今、やっと難しいという意味も分かってきましたし、最近は、人生を賭けて自分という人間を完成させていく、それが僕にとっての俳優だったんだなと。
藤沢:カッコいいこと言うね。
青柳:うけうりです。
(一同笑い)
藤沢:じつは春に仕事で佐賀に行くんだよ。 「初」佐賀だよ。
青柳:ええ!ほんとですか!! 良いですよ佐賀。 歴史がとにかく深いので、ちょっとしたところに歴史が落ちています。 「武士道とは死ぬこととみつけたり」の葉隠も佐賀です。
佐賀がすごく僕を応援してくださってて、2年連続で県知事さんとお正月の対談番組をさせて頂きました。
藤沢:そうなんだ。貢献できてよかったね。 食べ物は何が名物なの?
青柳:佐賀牛に竹崎ガニと牡蠣に海産物もおいしいですね。 レンコンや玉ねぎの根菜などもおいしいです。 素材がとにかく美味しいので、どんな料理もお勧めです。
藤沢:佐賀行ったら青柳君がアルバイトしてたっていうそのうどん屋さんに行くよ。
青柳:ほんとですか!ありがとうございます!!!
(藤沢先生と青柳さんがおしゃべりしつつ色紙にサインと画を書く時間などあり)
近藤:藤沢先生、最後に青柳さんに一言お願いします。
藤沢:同じ17歳で上京してきて、共通点も多いのでこれからも応援させてもらうよ。
続けることは大事なことだよね。夢の実現に向かって頑張ろうね。
青柳:ありがとうございます。がんばります。
藤沢:こんどゆっくり飲もうね!
(一同笑い)
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(藤沢先生がお帰りになった後の青柳さんの感想)
青柳:とても楽しい時間でした。ありがとうございました。
藤沢先生は海のように広い、心の大きな方でしたね。この出会いがまた一つ、宝物の出会いとなりました。
成功した方のエネルギーを身近で感じることがいかに大事か!感謝感謝感謝の連続です。
恩という借金をたくさん背負える人であろうと思いますね。
本日は本当にありがとうございました!
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本当は約2時間に渡る対談だったので、そのお話の内容を全部載せきれず残念です。
佐賀の名物の話、藤沢先生の苦労話、青柳さんのウルトラマンオーブのジャグラーについての役作りの話、
その他色々盛りだくさんな貴重な対談でした。
【青柳尊哉さん、勝手に応援プロジェクト】記事の拡散などもお願い出来れば嬉しいです。近藤
浅田弘幸先生と青柳尊哉さんのクロストークはこちら。 浅田先生直筆の青柳さんイラストが見れます。かなりの福眼イラストです。
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