この映画の宣伝をしていた時「松ケンと長澤まさみか・・観たいな」からのアマプラに上がっていて「観なきゃ」という強迫観念にかられながらも配信終了 間際にようやく観ることができました。
詳細はあまり知らなかったものの、ヘヴィーな作品はメンタルが丈夫な時じゃなければ観るのがしんどいので
思ったより比較的まだ軽め(※私基準)の作品だったので良かったかな。
映画.com様から画像をお借りしています
(以下同じ)
介護や老後や死などについて改めて考えさせられました
数年前に義母は看取ったけれど、私の両親は健在で幸い まだ介護が必要な状態でもありません。
※※あらすじ(以下ネタバレあり)※※
斯波宗典(松山ケンイチ)は訪問介護の介護士で、要介護者に寄り添った仕事ぶりから その家族や仲間の介護士からの信頼も厚かった。
ある日、彼が担当していた独居老人(梅田)宅で梅田と介護施設の所長が殺されているのが訪れた家族によって発見された。
最初は所長が犯人かとも思われたが、周辺の防犯カメラに映る斯波(松山)の姿から彼が事情聴取されることに。
彼は殺害したことを認める(ただし所長は揉み合う際の階段からの転落死)。
取り調べの中で、あろうことか斯波は「施設利用者(介護される人)と、その家族を救った」と言うのだった。
「自分がしてほしかったことを してあげたのだ」・・と。
そして彼は42(+1)人もの人を“救った”と告白する。
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なぜ そういう考えに至ったのかと言えば、過去に彼自身が父親(柄本明)の在宅介護をしていたことに起因する。
徘徊するから目が離せず付いていないといけない。
仕事も辞めざるを得ない。
しかし生活保護の申請は冷たく却下される(声の大きな者には不正支給するくせにね)。
お金もなく食べるものもなく家の中も荒れ放題で、ひたすら疲弊していくだけ。
そんな折、父親から「自分が自分(まともな人間)でいられるうちに殺してくれ」と懇願される。
葛藤しながらも、彼はその願いを叶えたのだった。
介護する側、される側、いろんな感情がある。
もちろん自分の身内だから手厚い介護をしてあげたいと思うのは皆同じ。
しかし家族が認知症になり暴言を吐かれたり暴力を振るわれることも珍しくない中、介護する方もどうにもできない苛立ちや悲しみ、苦しみに耐えなければならない。
しかも、それはいつ終わりが来るか分からない。
出口のない暗闇が広がっているのだ。
本当に難しい問題で答えなんか無いのかもしれない。
斯波の父親の件は『尊厳死』そのものだと思うけれど「自分がおかしくなる前に、家族にこれ以上 迷惑(負担)をかけないように死にたい」という気持ちも正直なところだと思う。
誰しも厄介者、お荷物には なりたくない。
現在、日本では『尊厳死』は認められていないけれど、もう そういった制度も取り入れる時期が来ているのではないだろうか?
色んな選択肢があっても良いのではないか。
もちろん、どんなことがあっても最期まで生き切りたいという考えの人はそれでも良いし、その場合も安心できるよう介護に国がお金をかけるべきだと思う。
こういうことに使うのが税金の正しい使い方なのではないだろうか。
北欧など税金が高いというが教育や医療・介護などは国民の負担がないと聞く。
他国のやり方を全て真似ろとは言わないまでも、安心した子育てをしたり、安心した老後を送ったりできないような国は先進国とは言えないのではないか。
斯波は「家族も救った」と言うが、その家族のうち2人の女性が対比して描かれている。
羽村洋子(坂井真紀)は介護がなくなり、その後 男性ともお付き合いをしてプロポーズを受け第二の人生を送れているようで幸せそうに見えた。
梅田美絵(戸田菜穂)も限界だった介護生活から解放されたが、彼女は法廷で斯波に対して「人殺し!!」と何度も罵っていたのが印象的だった。
確かに彼自身が直接手を下して介護老人を殺めたので人殺しに違いない。
罵られるのは当然と言えば当然なのだ。
介護から解放され自由になれるとしても、どれだけ介護生活が悲惨で可哀想に見えたとしても赤の他人がそれ(殺人)に関わることはまた別の話。
結局 斯波は犯罪者(連続殺人犯)として法で裁かれることとなる。
対比と言えば斯波と対峙した大友秀美(長澤まさみ)も対の構造となっている。
大友もまた母親(藤田弓子)を介護しているものの、そこは一般庶民の斯波と違って上級国民なので至れり尽くせりの高級老人ホームに母親を入居させており、たまに手土産を持って面会に行くのみである。
彼女は決して『社会の穴』に落ちることのない『安全地帯』にいる人間なのだ。
立場の違う人間が高みから綺麗事を言っても説得力の欠片もない(彼女は彼女で葛藤もあるのだけれど)。
そこの描き方も良かった。
福岡で起こった介護疲れから母親が7歳の娘さんを殺めた(人工呼吸器を外した)事件の判決が確定した。
長年の介護生活に情状酌量の余地があるとみなされ、執行猶予がついた判決に少しホッとした。
これは『ロストケア』の斯波と同じ殺人であっても「家族」が 手をかけたから赦されたに過ぎない。
死生観は100人いれば100通りあると思う。
昔『カステラ』というバンドがいて「死ぬのはこわいからボケてから死にたい」と歌っていたが
カステラ
(ネットからの拾い物)
それを聞いた時(まだ10代の頃)「なるほどな~(言い得て妙)」と思ったけれど、棺桶に片足入っているぐらいの年齢になった今は「ボケる前に死にたい」と願っている。