なぜ広告の世界に興味を持ったのか、を振り返ってみると、NYはmadison Ave.のDDBやO&Mに代表される広告代理店隆盛期の一連の作品(ビートル、マルボロ、エイビス)のアートワークやコピーに惹かれたからだ。
今にして思えば、デザインもさることながら、その根っこにある「マーケティング」というものの魅力が僕の好奇心をくすぐったのかもしれない。
学校を出て、すぐにCM制作会社に入った僕は来る日も来る日も撮影や編集に明け暮れ、とうとう身体を壊してしまった。
医者に仕事を辞めるよう勧められ、貯まった金を持って憧れのNYに飛ぶ。
折しも、キースへリングやバスキア、ウォーホールといったポップアートの全盛期、音楽ではヒップホップが生まれ、54やROXYがクラブカルチャーを牽引していた今や伝説の時代。
かれこれ1年半ほど働きながらNYの空気をたっぷりと吸い込むと、いつしかお腹一杯になり、やりたいことがなくなってしまった。
帰国してからはナショジオのフォトグラファーなどと契約のある写真通信社でアートディレクションの仕事をしたり、グラフィックデザインの手伝いをしたりするも、どこにもつながっていかないもどかしさを抱えていた。
半ば抜け殻のような状態でたどり着いた今の仕事には、かれこれもう26年いることになる。
その間にデザインもマーケティングも実践を通してそれなりのノウハウは身につけてきたけど、果たして、どれくらい自分の思うようなアウトプットができただろうか?
社会的にも保障された居心地の良さに安住し、その時々は波乱万丈、やりがいも楽しさもあったけど、本当に自分を賭けて何かを成し遂げた充実感を感じたことはなかったように思う。
今更、おおげさなことは望まない。
ただ、途中で置き忘れてきたものを、もう一度拾い集めて、自分なりに見直してみたい。
それがたとえ、人から見てとるに足らないことでも、その中に僕が探していたものがあるかもしれないから・・