※史実ネタバレ含むので注意!
キングダムのアニメ見た。すげー面白い。
ようやく5期の最後まで追いついて「蔡沢の矜持」見たけど、色々すげー。連載は何処まで進んでるのか知らないけど、早く6期が見たい。
史実と良い感じに違うのもキングダムの面白いところで、パッと思い返しても、名の通った人物では、楚のカリンと河了貂以外はおおよそ実在の人物な気がする。性別変わったりしてるけど。
史記の記述が簡素なのを上手に料理して、独自にキングダム世界を作り上げたのは、或いは三國志に対する三國志演義に匹敵する偉業かもしれない。演義が妖術や天候操作アリのファンタジーであることを思えば、キングダムの方がまだ人間の所業から逸脱していないと言えるかも。異常なガタイの良さとかあれだけど、日本にも延沢満延みたいな人が実在したから許容範囲ってことで。
で、「蔡沢の矜持」。幾つもの伏線が見えるようで大変面白かった。
史実のネタバレを含むので、少し空けます。
1.昌平君ではなく昌文君を同席させたのは何故か
まず左丞相と右丞相のどちらが上か?という話なんだけど、これがよく分からない。日本だと左の方が上だけど、漢だと右の方が上で、時代によって左右が逆転している。
秦の統一後は右が上らしいんだけど、キングダムは統一前のお話だし、この世界で二人が左右丞相に任命された頃の力関係から言えば、呂不韋派だった昌平君の左丞相の方が上なんだと思う。そして左右のうち左が秦を裏切ったことから、秦帝国になる際に右丞相の方が上になったのかな?と想像。
昌平君を外して、昌文君を会見に同席させた蔡沢は何を考えていたのか?
加冠の儀と呂不韋の失脚によって、蔡沢の忠誠は嬴政に向けられることになった。まさに命尽きる時まで嬴政の為に奔走
したのは、呂不韋の描く秦国の姿より、嬴政の目指す中華を見てみたいと思ってしまったからだろう。
蔡沢から見ると、嬴政の最後の障害は楚でも斉でもなく軍総司令・昌平君になりかねない。昌平君が中華統一の志を持っておらず、ただの優秀な軍人に収まる器であれば良かったのだが、悲しい事に昌平君は駒ではなく、英雄の器として描かれている。両雄は最後には並び立てなくなる。
昌平君は後年、楚に鞍替えする。キングダムでどう描かれるかは分からないけど、たぶん史実のように嬴政に反論したことで罷免されるという展開ではなさそう。長じた嬴政が読者に嫌われるような描かれ方をしたら悲しいし。
キングダムで誰が言ったか忘れたけど、「昌平君は人の下につくような男ではない」という意味の評価をされている。そして中華統一という嬴政と同じ志を持っている。たぶん、この2つが昌平君寝返りの伏線になっている。
昌平君を総指揮官とする秦軍は征服事業を進めていくけど、やがて昌平君は自らの手で中華統一を成したいと思ってしまうのだろう。それを理由に秦から楚に鞍替えするのかなと。
これならキングダムの嬴政に傷が付かないし、昌平君の評価との整合性も取れる。
蔡沢は昌平君がいずれ秦と袂を分かつことを予感していたのだろう。呂不韋派から嬴政側に投じた過去もあるし。
だから斉と秦の重大な会見に立ち会うのも、嬴政が目指す中華のビジョンを共有するのも、昌文君を第一に据えた方が良いと思ったのかな。
同時に、この内々での序列の変化は昌平君の心に歪をもたらし、楚へ鞍替えする遠因になっている・・・気がする。
私の目には、蔡沢が良かれと思って取った昌文君を立てていく判断が、むしろ昌平君の寝返りという導火線に火を点けていったように映った。今後、昌平君がどのように描かれるか楽しみだ。