今更かよって感じで「鉄血のオルフェンズ」を見た。くっそ面白かったし、それ以上に哀しいガンダムだの。
オルフェンズについては「頭バエル」が批判されてることは知ってたんだけど、実際に見てみるとマクギリスの評価は少し違う気がしている。
マクギリスのクーデター計画は、あの世界においては十分に合理的だった。ガンダム・バエルの起動者になることでアグニカ・カイエルの意思を体現するものとなり、その権威と威力をもってギャラルホルンを統治する。この筋書き自体は間違っていない。
なにしろマッキーの悪謀が明らかになってもセブンスターズの面々は「バエルには逆らえない」と言っている。またバエルの存在を誇示した際の革命軍の士気の上がりっぷりを見ても、ギャラルホルンという組織においてアグニカの意思とバエルがどれほどの価値を持っているかが分かる。
カルタ謀殺、ガエリオ殺害(未遂)などをやらかし、それが白日の下に晒されても、バエルの起動者であれば敵対できない。悪逆非道の人間であっても、アグニカの意思を体現する限りは敵対できないというのが、あの世界を構成する骨格。バエルは錦旗として十二分に機能しているのだから、クーデターの要になるのも当然だろう。
天皇を抑えた方が官軍という歴史を持つ日本人には馴染みのあるやり方と言える。
マクギリスの敗因は、生きていたガエリオによって数々の悪謀をバラされたこと以外に無い。
仮にガエリオが死んでいれば、マクギリスの悪謀が知られることも無いため、最初から対抗姿勢を見せていたエリオン家とクジャン家はともかく、他のセブンスターズはマクギリス陣営に付いただろう。
これまでの経緯を見れば、"何も知らない"ボードウィン家とイシュー家は味方に付くし、その様を見て他の二家も参加するだろう。それならアリアンロッドとも十分以上に渡り合えるので、成算のあるクーデター計画だったように思う。
ガエリオの死亡確認さえしていれば、マクギリスは勝っていたはず。チャドさんが至近で爆弾喰らっても再生治療でなんとかなったように、この世界の医療技術は半端ないので、死亡確認は念入りにしておけば。
それだけに、二期の序盤でガエリオ生存が判明してしまったのが辛かった。
マクギリスが絶対に負けることが確定してしまったことと、オルガは手を組んだ相手を裏切らないという設定の合わせ技で、鉄華団に哀しい未来しか無い事が分かってしまったから。ダブルオー1期で必ずしも主人公側が勝つとは限らないことを実証したしね。
だから少年たちが滅びに向かっていく物語にしか見えなくなって、結末を見たくない気持ちになったわけで。
ともあれ、マクギリスは言われてるほどに無能ではないし、本当に紙一重というか、ガエリオの首の皮一枚の差だったんだよね。
以下は蛇足なんだけど、視聴しながら「なんでセブンスターズにカイエル家が無いんだろ」と思ってたんだけど、アグニカも三日月のように阿頼耶識に身体を持っていかれることでハシュマルを撃破する力を得たってことなんかな?
おそらくガンダムフレームを使って厄災戦を戦った集団がギャラルホルンの前身で、それを組織したのがアグニカ・カイエルなんだと思うけど、阿頼耶識で半身不随になったことでセブンスターズとしては残らなかったのかな。
アグニカは身を挺して人類を守り、しかもセブンスターズという栄華に溺れずに消えていったことが、ギャラルホルン内で神格化していった要因なんだろうと妄想。
ハシュマル戦に限って言えば、三日月とアグニカは同じ行動を取ったことになり、それを見たマクギリスが三日月に拘る理由も分かろうというもんだ。