すごい騒ぎになっておりますようで。
いきなり4630万振り込まれてたらどうする?って話題があちこちでされてると思うんだけど、ワタシも例にもれず。
そんときは「怖くて使えない」という意見で一致したんだけど、世の中にはワタシのような蚤の心臓の持ち主とは違い、勇者のような人がいるもので。
ワタシのような気の小さい小者は、まず悲観的にモノを見る事から始めるので、この手のトラブルに対しては逃げの一手を考えるところからスタートする。
枕詞はこれくらいで、「電子計算機使用詐欺」というやつを考えてみるのが本題だ。
詐欺罪とかは講義で扱われた記憶あるけど、これはさすがに覚えてないというか、やってないんじゃないかろうか?
拙いワタシの理解を箇条書きにしてみる。間違ってたらすまん。
・加害者は被疑者のTさん
・本罪の理論上の被害者は決済代行業者。
→この場合はオンラインカジノに使うコインを管理してるとこと思えばいいか。
・逮捕容疑は警察発表によれば、"4月12日、自身のスマートフォンを使って、400万円を振り替えることにより不法な利益を得た疑い"
自分のお金ではないと知りながら、自分のお金だと見せかけて400万円を口座に発生させたことかな。その際に騙した相手が窓口の人間ではなく、業者のシステムだったから本罪とした。
・本罪は親告罪ではない。
→これ肝だと思ってる。オンラインカジノ絡みなので、賭博罪と併せて考えると業者自体がグレーゾーンだから、被害届を提出するとは思えない。大事になってメスを入れられると大変だから。
基本的に被害届なしでの逮捕はしないけど、別にそういう決まりがあるわけではないので、上記のことや世の中への影響を考えて逮捕に踏み切るのは分からなくもない。
或いは被害届の提出と残金の返還を条件に、深入りしないよう取引したというシナリオもあり得るけど、穿ち過ぎと思う。
さらに重要なのは、その逮捕状請求を裁判所が容れ、発行している点。「本罪では起訴できない」という意見も見られるけど、裁判所が厳正に審査して逮捕状を発行してる以上、門前払いというのは考えにくい。レアケースにして世の注目が高いとなれば、裁判所は念入りに検討したはずだから。
ひとまず逮捕して逃亡を防ぐという狙いもあるのだろうけど、この件について警察も地裁も敗北やミスは絶対に許されないから、相当の確信を持って電子計算機使用詐欺罪で逮捕状を請求・発行したのは間違いない。発表されてる情報以上のことを掴んでるんだろうなぁ。
・阿武町は不当利得返還請求の当事者ではあるけど、本罪については第三者
これはオマケなのだけど、結構勘違いしてる人がいるっぽい。
さて、いくつか弁護士さんの書いた記事を見てみた。無罪とか本罪の適用は無理があると言ってる人が多い模様。
ものすごく簡単に書いてみる。
1.「誤送金でも、いったんそれを有効なものと認める」という判例がある
2.だからTが自分の口座から400万円をオンラインカジノの口座に移したのは虚偽の情報とは言えない
3.虚偽の情報じゃないから、本罪は成立しないので無罪
アバウトだけどこんな感じ。
少し噛み砕くとこうなる。
1については「え?」と思うかもだけど、銀行口座の入出金は毎日無数にあり、それらの全てが正当な取引かを事前に審査するのは不可能。そこで「ひとまず預金債権は有効なものと扱う」事にし、問題があれば後で個別に対処しましょうというもの。現実的ですね。
この預金債権の有効性が認められるから、阿武町からの誤送金もこれに照らして、ひとまず有効なものとする(もちろん返還の責任はある)。
ひとまず有効な預金債権なので、この金をTが移動させる際に機械に与えた情報が、本罪でいう所の「虚偽の情報」にあたらないので無罪。
・・・という見解が広く知れ渡ってるようだ。
ただ、これを主張してる人の全員が触れてない点があって、「その預金債権の有効性はいつまで続いてるのか?」だ。
これが永久に続くのなら確かに無罪なんだけど、そんなことはあるんだろうか?
世の中には債権放棄という言葉もあって、債権は当人の意思で放棄できる。この事件の場合には、Tは役場からの連絡を受けて、一度は返還を了承して、さらに銀行まで職員と一緒に行っている。
この行動を見る限り、この時点で既に債権は元の持ち主(阿武町)に返す意思表示をしてるように思う。
先に書いた判例の「ひとまず有効と認める」は、毎日の入出金が法的に不安定になってしまうことを避ける為のもの。Tはその安定性の上に立って返還の意思表示をした以上、この時点でもう債権は町に戻ってるんじゃないかな?と思うんだ。
阿武町に債権が戻ってるなら、Tの行動は"虚偽の情報を与えて"に該当するので有罪になるのだけど、はてさて。
とまぁこんな風に考えてたら頭疲れた。これ難しすぎんだろ…