タイトルのまま。聞かれたので考えてみようと思ったのだ。
まずは事実確認。
・福井県が全世帯(289,000世帯)に最大100枚分のマスクが買える購入券を配布
・地元企業など県内外2社が、中国製の不織布30万箱(1箱2350円)を輸入確保
・不足する分は、県が追加で確保の準備を進める
・県内全17市町にあるゲンキー64店舗で販売
・販売期間は4/24~5/10
・当然に転売禁止
・福井県内の医療機関等には優先配布済
つまりは福井県が斡旋して一般の県民向けに3,000万枚の不織布マスクを確保するという施策ですね。
どうもかなり評判の良い施策らしいので、それに対して反対の位置を占める結果になるんじゃないかと個人的に嫌な予感はしている。概要を見るとそういう勘は働くもので。
だけど、賛否を決めてかかるのではなく、考えてみた結果として自分の賛否が決まるという基本スタンスからすれば、その嫌な予感は避けようもないわけで。まぁ続けてみる。
こういう場合、「何故この手の施策を実行した者が今までいなかったか」という裏側から見る事が大事だと思っている。施策を実行しない理由を考えてみるのは基本だし。まして評判の良い施策となれば、首長選挙を見据える市長やら知事やらがやらないわけはないので。
公的機関がマスクを確保し配布整理を行うという考えは、トルコみたいに他国でもやってるんで、別に目新しいものではない。では、目新しいものではないのに、何故これまで日本国内で実現していないのか?ここを考えるのが肝な気が。
さっと考えてみるに、まず全国統一の枠組みが存在していないことに気付く。要するに自治体がマスクを確保して云々する施策に対するルールが無い。だから出来ない、やらない。
枠組みが無いことが何を意味するかというと、「やったもん勝ち」ということ。問題があっても全国規模で是正する仕組みが存在していないこと、だ。
福井県の場合、地元企業含む2社と協同して3,000万枚のマスク(日本国内のマスク生産&輸入量の合計が約7億枚として4~5%に相当)を確保するわけだけど、もし他の自治体が同様の施策を実行したらどうなるか。
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この時点で「あぁ、これアカンやつや」と気付いてしまうような。困ったなぁ。
シンプルに考える。
例えば東京都が同じことをやるとする。都の670万世帯に対して100枚ずつを確保するとなると6億7千万枚。全国の月間マスク生産量とほぼ同数という…これは絶対やったらアカン。
まぁモノが無い以上は現実的ではないし、仮にそんな事をやったら、東京優遇を理由に国内で暴動が起きるし、都知事も退陣モノだろう。なるほど人口の多い自治体が1カ所でも福井式の施策を実行したら大変なことになるのは分かった。
つまりは、東京大阪神奈川愛知etcは、絶対にやってはいけない施策ということだ。だからやらなかった。なるほど。
人口の少ない島根とかでやったとしたら、然したる問題も無いように思う。もっとも、マスクの調達能力は行政組織の優劣というより、その環境(企業がある工場があるといった)に依存する方が大きいので、実現可能性があるとも限らないけど。
では複数の自治体が福井式に倣ったらどうなるか?
あれ、、これもう考える必要ない気がしてきた。全国的な枠組み・ルールが無い以上、全体を調整する機能が存在していないわけで。
そんな状態で各自治体が思い思いにマスクの確保に走ったら、なんというか非常にマズイ。何がマズイって、マスク券の配布がマスク確保と直結してる点がマズイ。
分かりやすく言うと、自治体にマスク確保義務が生じてる点でマズイ。
これが一般店舗で行われる整理券配布のように、在庫数に対して一定以上の責任は負わないものなら何の問題も無い。むしろ推奨すべき施策にさえ思える。
ところが、福井式だと全世帯に100枚ずつを保証することになるので、自治体側は万難を排してマスクを確保せねばならない義務を市民に対して負う事になる。
それを全国各地の自治体が始めたらどうなるか。最大で全国5,800万世帯に対して58億枚のマスクを確保しないといけない。無理に決まっておる…月間総生産量の8倍以上だもの。
まぁ、最大で58億枚というのは現実感が無いながらも、枠組みが無いからには可能性はあるし、自治体戦国時代というか幕藩体制の頃に戻るような感覚でもって、県庁(藩政府)同士が対立するってこともあり得る。市民に対して義務を負った為政者同士の利害がもろに衝突するわけだから。
ルールが無いからこうなる。だから今まで誰もやらなかった。なるほど。できるわけがないし、やってはいけない状態なわけだ。
複数の自治体が福井式に倣ったらどうなるか?をさらに考える
不織布マスクに関わる問題なら、医療機関等への配布を交えて考えないわけにはいかない。
福井式に他の自治体が追随してしまうと、必然的に調達環境に恵まれていない自治体は不利になるので、ある自治体は一般市民の分までマスク確保(福井のように)する一方で、およそマスクを確保できない自治体も出てくる。
なにせ国内月間生産7億に輸入分をプラスしたところで8億にも届かないだろう一方で、需要は青天井で20億とも30億とも言われている以上、当然の成り行きに思える。
そういう自治体にとっては災難以外の何物でもなくて、自治体独自の取り組みとして医療機関等へ優先配布をする事も難しくなるかもしれない。
ついでに、医療機関への不織布マスクの優先配布は国も音頭を取っているんだけど、これは国が単独でやっているのではなくて、厚労省の医政局から各都道府県の衛生主管部に対して協力要請して行っている。
国と県で協力して優先配布施策を実行しているわけだけど、自治体によってマスク格差が開いてしまえば、この施策は上手くいかなくなってしまう。だって、ある自治体で不足が目立つ理由が他の自治体がマスクを抑えてしまう事にもあるから。
んー、、、これは近いうちに福井県VS厚労&総務省でバトルが始まるかもしれない。
ワタシの結論としては、これは広めてはいけない施策。実行するなら、その前に全国的なルール作りをしないといけない。
個人的な感想を言えば、一般市民は布マスクでいいじゃないかと思います。
でね、今回は記事をアップする前にツイッターの反応を見てみようと思ったわけですよ(前回すげぇ怖かったし)。
見てみたら「素晴らしい!」のオンパレードで、またも怖い思いをしている。別に逆張りしようなんて考えていないんだけども…まぁ、1週間もすれば礼賛の流れは変わり始めるんじゃないかと見ています。
石を投げないでください。オネガイシマウ
こんなんで良いですか?