日中、ふらりと散歩に出た。なんとなく陽気に誘われただけで、目的などは何もなかった。

 

 隣町やら何やらを40分ばかり歩いて、とある公園の前を通った時、「営業中」の札が出ているのが目に入った。たまにイベントをやっている公園なので祭りでもやってるのかな?と気になって見てみた。札は文化祭であるような手作りのモノで、なんとなく作り手の人となりが伝わるような風韻をしている。先を見ると露店が1つ出ている。 「ポン菓子屋」とのことだった。

 

 珍しいなと思い、こんにちはと声をかけて買ってみる事にした。露店のご店主は40歳くらいの女性で、娘さんと思しき子と一緒だった。小3くらいだろうか?事情は知らぬが母娘だと勝手に思うことにする。

 

 ポン菓子と一口に言っても味のバリエーションは相当に豊からしく、チーズ味やらカレー味やらが何種類も小さな袋毎に包装されている。1袋100円の文字が見えた。

 

 とりあえず、普通のポン菓子1袋と、コンポタ味とマカロニをポン菓子にしたものを買った。3袋なので300円と思ったので財布から小銭を取り出す。

 

 会計は娘さんがやっているようだ。娘さんはよく通る声で「200円です!」と言う。あれ?300円じゃないのかな?と思い聞いてみると、コンポタ味などの小袋は2つで100円なのだそうだ。「お嬢ちゃんの方が賢いね」と言いつつ、200円を払って買った。

 

 

 営業中の札の横には、ご店主がポン菓子屋を始めた経緯やポン菓子についての紹介などが書いてあった。ワタシはそれをつぶさに眺め、本当に好きでやっているのだなと感じ入った。娘さんは母親と一緒にいられるのが嬉しいのかニコニコしている。

 

 3袋のポン菓子を袋に入れてもらい帰る道すがら、胸がやたらとキュンキュンして困った。嬉しいわけでも悲しいわけでもないのに、何故だか涙が出そうな気配がして困ったのだ。

 

 たぶん、何か貴いモノに触れたせいだろうと思うんだけど、どうにも上手い言葉が見つからない。この感じやすさは毒にもなるなと自分に呆れながら、思い出してまたキュンキュンしている。この感じやすさは、どうにもならない。

 

 

 コンポタ味はちょっと驚く程に美味かった。今からマカロニを食べる。ちなみに普通のヤツは家族に取られた。曰く「私はしょっちゅう買いに行っている」そうだ。なんとなく、俺の感傷を返せと言いたい気分になっている。