Gvからの撤退を決め、関係者の元に報告&お礼&謝罪をしていた頃の話。
幸いというか、レベル150キャラに一方的に蹂躙された出来事はそれなりのインパクトを持っており、撤退の件は案外とすんなり周囲に受け入れられた。
だが、より大切なのは今後ギルドをどうするかだ。解散するのか、新しいギルドとして再出発するのか、選択肢はいくつかあった。
自分から解散する事は考えていなかった。全員脱退による実質的解散の可能性は考えていたけど。
プレイ開始1年程度のワタシだが、自分のやりたいギルド像が固まっていたのである。だから残ってくれる人がいるなら、続けようと思っていた。今度は自分の意思で自分のギルドを作りたかったのだ。
再出発するギルドの方針はざっくりこんな感じだ。
・PTプレイ重視
・加入はメインキャラのみ(サブキャラ倉庫化による過疎化を防ぐ
・効率だけを求める狩りはやらない(臨時PTにメンバーが参加するのは自由
細かい内容は色々あるけど、大きくまとめるとこうなる。
ワタシは経験値やらを稼ぐためにゲームをしたいのではなく、遊びたいからゲームをしたいので、そのことを強く前面に出した。
ついでにこうも考えていた。今はレベルが上がりづらい状況だけど、そのうち誰でもレベル150を現実的に目指せる環境にアップデートされるに決まってると。
同時に、この基本方針は絶対に妥協しないと決めていた。絶対に、である。
ソロ狩りを否定はしないが、それはギルド外のキャラで自由にやってくれとも表明した。少なくともギルド所属キャラでログインし続けていながら、延々とソロプレイをするのだけは避けてほしかった。時にはそういう日があってもいいが、常にでは困る。基本方針が揺らぐからである。もっとも、ギルドチャットでの連絡を受けやすいようにという理由から、ソロプレイ向きのキャラを加入させること自体は認めていた。
(後日の余談ながら、メンバーが複数のキャラを加入させたがるようになり、メンバー枠を圧迫することになったので、加入権限を全員に付与し、一人2キャラまでの加入制限を設け、入れ替えは自由にしてもらうことになった)
ギルドは他にいくつもあるので、ワタシの方針に合わないなら他へ行けばいいと思っていた。こういう辺り、ワタシには暴君の素質があるのではないかとも思うし、商店主が共感できない客を店から追い出すような傲慢さも見える。
どころか、ギルメンからすればマスターが突然Gvの撤退を表明し、今後の運営方針に賛同できないなら他所へ移籍してくれと言い出したわけで、これは酷いとしか言いようがない。ワタシはそういう自分の悪を自覚していながらこれを断行した点で、屑マスターと評されることも覚悟していた。
これはゲーム内空間だから出来る事だったけど、何かを決めるというのは大なり小なりそういうものだとも思った。
それよりも、この方針に賛同して加入してくれる人を裏切るような真似をしない事の方が、遥かに重要と考えたのだ。ワタシの徹底ぶりによって、この基本方針は極めて純度の高い状態を保つことになる。
こんな具合でGv撤退と今後の方針を伝え、ギルメン各自に咀嚼してもらい、今後どうするかを決めてもらった。
多くの人が対人戦をやるギルドに移っていった。長い事一緒だった人々とも袂を分かつことになった。
サブキャラを残したいという人もいたが、基本方針に照らしてお断りした。非情であることは分かっているが、そういう妥協が過疎化を招いた例をいくつも知っていた。
トータルで見ると意外な結果であった。多くの人が移籍をしたけど、ワタシが想像していたよりも遥かに多くの人がギルドに残ったのだ。
効率至上主義が拡大しつつある中で、それに適合しにくい人々が一定数いる事も明らかになった。それなら、その一定数のためだけのギルドがあってもいい。
というわけで、実にきわどい綱渡りではあったが、方針の一大転換からの再出発である。
この時、ワタシはようやくギルドマスターになったのかもしれない。随分と時間がかかってしまった辺り、出来が悪いとしか言いようがない。