そんなこんなで時間は流れ、ワタシの持ちキャラも三次職実装前のボーナスタイムを利用し、ハイウィザードとハイプリーストになった。三次職が実装されても、転職するにはまだ時間がかかりそうだけども。
小遣い稼ぎ用のローグと露店用の商人もいたけど、てんで弱いキャラなのでカウント外にしておく。
ROを始めて1年くらい?そんなに経ってないかも?よく覚えていないが、三次職の実装とレベル上限の解放&その他諸々の大幅なリニューアル「R化」の時が来た。
なんとなく鯖全体が落ち着かない雰囲気で、楽しみなのか不安なのか色々入り混じって混沌としていたように思う。
ギルドの方はと言えば、運営の方は特に問題は無かった。Gvで結果も出ていたし、そっちの問題も特になしという状況。支援職の数もドカンと増えていたので、キャラの融通も利くようになっていた。
R化でレベル上限が150になったとはいえ、いきなりそんなに上がるわけもない。ほとんどの人はレベル100の壁にさえ難渋していた。経験値テーブルがそうなっていたのだ。
ワタシはと言えば、それにも届かずにレベル90前後でウロウロしていた。レベル上限が99だった頃は、90が最も広く公平PTを組めるので便利だったという言い訳をしておく。
ちなみに99以下の経験値テーブルは95以降が鬼のように上がりにくくなっており、それより下は緩やかである。ワタシはPTを組みやすい条件を満たせれば十分と思っていて、レベリングに興味が無かったのだ。
RO全体では、R化による環境の激変が原因で引退する人が出ていた。ウチのギルドにもそういう人が出てくるかもと覚悟していたが、幸いそういう人はいなかった。
とりあえず、R化のファースト・インパクトは無難に乗り切った格好である。むしろ、新しく調整された狩場を探索するのが楽しかったくらいだ。
経験値テーブルなど仕様上の問題もあるにはあったが、それがギルドに深刻な問題をもたらす事にはならなかった。何故ならみんなレベル100を前に足踏みしている点で共通だったからである。
変な言い方だが、評判の悪い経験値テーブルのおかげで、公平PTを組みやすい環境が守られていたのだ。
次の大きな問題は全く想像もしない形でやってきた。
根本的な原因は、ROプレイヤーのかなり多くの人が経験値効率を追求し始めた事による。レベル150があまりにも遠い道のりなので、効率を求めるのは自然な流れだ。
これは対人戦であるGvに力を入れているギルドほど顕著だった。ウチのギルドはと言えば、マスターのワタシがこんな感じなのでレベリングに力を入れるようなギルドではない。メンバー募集時に面接をするのもワタシなので、レベリングに拘る人も少なかったと思う。
が、対人戦で勝とうと思うなら、レベル上げは必須である。強いギルドはまったくもって研究熱心で、高効率を叩き出す狩場や手法を編み出していった。と噂に聞いていた。
まったくウチのギルドは暢気だった。いや、メンバーの中にはワタシのそういう姿勢に不満を持っている人もいたかもしれない。表立ってそれが噴出することは無かったので、実際にどうだったかは分からない。
ワタシがその問題を認識して最初に打った手は実態調査だった。高効率が出る人気狩場というのを、まずは見てみない事にはどうにもならない。それが面白楽しいものなら、取り入れても良いなと考えていた。
休日の朝は、臨時広場に参加できそうなPT募集があったら、練習とギルドメンバー募集を兼ねて参加していたのだが、そこでタナトスタワーの何階だかの狩りに参加してみたのだ。こういう時支援職は便利なものである。
このタナトスタワーというダンジョン、実はR化早々にギルメンの4人PTで行ったばかりだった。その時は人のいない過疎狩場だった。
編成も何もテキトーに冒険しにいっただけなので、効率が出ることに気づきもしなかった。かなり上の階まで登って「ここの敵強いねー」なんて暢気な感想を手に帰ったものだ。
ところが、臨時PTに参加して、再び上ったそのダンジョンはまるで違う魔境になっていた。所謂「トレイン狩り」の横行である。
もちろん、R化前からトレイン狩りなるものは存在していた。だが、一般的なプレイヤー目線からすると、モブを独占して連れまわる行為というのは迷惑なのである。迷惑であるが故に忌避されたものだった。
そこではそれが普通の事だった。正直、驚いた。
ワタシは余程の理由が無い限り、固定狩りというのを避けたいタイプの人間だった。余程の理由とは、狩場に人が多過ぎて後から後からモブがどんどこ湧いてどうにもならないような状況を言う。そういう状況で下手に移動すると、収集のつかない事になってしまうのだ。
そうでない限り移動狩りを好んだ。理由は簡単で、固定狩り特有の「ベースでトレイン役の釣りキャラが帰ってくるのを待ってあれこれする」のが、ベルトコンベアの作業のように思えてダメだったのだ。ものすごく悪い言い方をすれば、ベースでひな鳥が口を開けて餌を待っているかの如くという状況が苦手だったのだ。
これはアカンなぁと思った。だが、確かに効率は出る。これはジレンマだ。
何故なら、ウチはGvに参加するギルドなので、あまり他のギルドにレベルを引き離されるとアウトなのである。
これでいいのか?と思いつつ、結局は数回そういう狩りに参加した。正直つまらなかった。だが、ワタシは歴の長い人々に比べてレベルも低い上に、マスターという立場だったので、その程度の努力はしなければと思っていたのだ。
そのうち、とんでもない狩りに参加した事があった。拳聖というキャラのスキルを使って経験値が2倍になるというシロモノで、スキル名から「温もり」と呼ばれる狩り方だった。
噂には聞いたことがあったが、実際に目にするのは初めてだった。随分前に教えてもらった所によると、バグを利用してスキルを発動させるのだそうだ。その際に鯖や付近でプレイしてる人のPCに強烈な負荷を掛けるのも問題なのだと聞いていた。
トレイン狩りでも心折れそうな所に加えてバグ利用である。滅入った。とりあえず人並み程度に仕事をこなして、とっとと臨時広場からずらかり、以後二度と参加すまいと心に決めた。何事も経験とは言え、経験したいものではなかった。
そういった狩りの実態やらを知るにつれ、先代マスターMさんの作ったこのギルドの設立時の方針について、どうしたものかと悩み始めた。
そのころ、ウチのギルド同盟は毎週砦を確保し続けていた。同盟規模から考えて連戦連勝といっていい。その最中にワタシはGvにこのギルドが参加する事の限界を感じ始めていたのだ。