初めて入ったギルドをちょっとした事件をキッカケに脱退することになったワタシ。
もはやブログというより過去の日記帳であるが、そもそもブログというのは何を書くのが正解なのか分からない。
ふたたびぼっちに戻ったワタシは、相変わらずテキトーな日々を過ごしていた。
ROの世界がワタシにとって居心地が良かったのは、特に誰からも必要とされず、期待もされず、ただ穏やかに過ごしていられる空間だったというのが大きい。
必要とされ期待されるといえば聞こえはいいが、つまりは利用され、押し付けられるという事を体よく表現している面が強い。特に社会においてはそうだし、それが趣味の面にまで及ぶと滅入る。実生活のそういう面にかなりウンザリしていたワタシには、気楽にのほほんと他者と接する事ができる空間が必要だったのだろう。それこそ匿名空間の素晴らしさだと今でも思う。
とはいえ、せっかくROに参加してるからには、それなりに楽しく過ごしたいと思うのも人情なので、ワタシは別のギルドに加入することにした。
次に入ったのは、何語かよく分からんけどカッコいい名前のギルドだった。まったく世の中にはネーミングセンスに溢れた人が多くて羨ましくなるぜ。
話を聞いてみると出来立てホヤホヤのギルドらしい。こっちもまだギリギリでホヤホヤの新人と言えないことも無いので丁度良い。ありがたくお世話になることにした。
マスターさんは(今度はMさんとしよう)、少し前までそこそこ大きなギルドにいたらしいが、そこに別キャラを残しつつ、サブマスターのAさんと共に新ギルドを立ち上げたそうだ。
大変気楽で過ごしやすいギルドだった。
ワタシが入って早々に大事件が起こった。エンドレスタワーという週に1度しか入れないダンジョンに4人PTで行った時の事だ。その出来立てホヤホヤのギルドは、まだ総勢4名だったのだ。
"出た"のである。
MVPカードが。
もう一度言おう。
MVPカードが出たのだ。
あまり詳しく書くのもアレだが、当時のROでMVPカードは超最高級のレアアイテムで、通常の露店では桁が足りないので取引されない。というか、そもそも出回るような数が無いし、出回るような品でもない。対人戦に力を入れてるギルドなら垂涎物の逸品なのである。
要するに、めちゃくちゃ高額で取引されている。
・・・というのは全部後で教えてもらったことだ。
そんなわけで、ワタシは開始して数か月にしてかなりの大金を持つことになった。おかげで色々と装備が調ってしまった。オンライン故に流行り廃りも早かろうが、ともあれ暫く困らない程度には装備と金が揃ったのである。
まったくあり得ない幸運だったというのが今なら理解できる。他のメンバーの興奮はさぞや凄かったのだろう。その興奮を同じように味わいたかったが初心者には無理な話だ。
と、順風満帆に行くかに見えたギルドであるが、やはり人の集まりを運営するというのは一筋縄ではいかない。ギルド運営というヤツは学校なんぞより社会の縮図を感じやすい気がする。こう書いたのは後にワタシがマスターになった際に感じたからである。
マスターのMさんはギルドバトル「GvG」に参加することを目標にしていた。対人戦である。
ワタシは対人戦は別に嫌いというわけでもなく、みんなが出るなら構わないし、気の合う仲間と色んな事をやってみたいと思っていたので、特に問題にはしていなかった。実際に何の役に立つかは別にして。
当然、新たに加わるメンバーもGvGをいずれは~という人が集まってくる。集まってくるが、そう上手い具合に次から次へと加入してくるわけでもないし、ウマが合う人間ばかりでもないだろう。Mさんにすれば色々とストレスを抱えたりする事もあったのかと思う。
ここで一つ微妙な問題がある。Mさんが別キャラを残しているギルドは鯖内でもそこそこ強いギルドなのだ。交友関係もあるので、キャラを残すこと自体には何の問題も無いのだけど、話はそういう次元とは別に進行してしまう。
まったく自然な感情かと思うが、Mさんは戻りたくなったのだ。そこそこ強いギルドに。しかしそうなるとマスター不在、すなわちギルド解散である。
サブマスターのAさんもそのギルドに別キャラを残しているが、Aさんは新しいギルドに集まったメンバーの事を考えてか、それには反対していた。
つまりギルドの中心が真っ二つに割れたのである。
ワタシは初心者に毛が生えた程度ながら、そのギルドでは最古参メンバーであった。歴史は短いものの、実際に最古参なのだから仕方がない。自然、相談を受ける事が増えた。
が、正直手に余る。ワタシは対人戦も未経験であれば、ほとんどの事にまだ不慣れだったので。
というワタシの内心の思いとは無関係に、マスターから見たワタシは最古参メンバーであり、みんなとも仲良く上手くやってる存在だった(と言われた)。
実際、ほとんどのメンバーと仲良くしてたので、Mさんの言うことは間違っていない。人の見方というのは角度によって万華鏡のように姿を変えるものだなぁと不思議な感慨を持ったのはこの時である。
なんやかんやと話し合ううちに、ワタシがギルドマスターとして引き継いでいくことになった。
え、マジで?という感もあるが、ワタシにも自分の所属する集団への愛着が人並み程度にはあるらしい。
振り返っても無謀にしか思えないが、まさかのギルドマスター誕生である。