何度でも言う。オイゲン恐るべし。



それはMAP17開始前の事である。
リュナン率いるラゼリア・ウェルト連合軍は、バルト要塞攻略を控えていた。


ここで、オイゲンは速やかなバルト攻略のために、レオンハートにセルバの帝国軍を牽制してもらうよう立案する。レオンハートの協力を取り付けるために「共にセルバを攻めよう」という口上も持たせはするが、要はレオン軍が牽制してるうちにバルトを攻略しようという作戦である。


バルト要塞は帝国東部戦線の要であるが、既に前線のセネーは陥落し、支城としての役割を果たすのはセルバだけである。しかも、バルト要塞はまだ防備が調っていない。何よりガーゼルの祈祷師軍団が到着していない。

この隙に速攻をかければ、いかにバルト要塞と言えども陥落は必至である。



しかし、リュナンは愚かにも本当にセルバに出陣してしまう。愚かと何度言っても足りぬ程に愚かな選択である。


バルト要塞は幹である。それに比べてセルバなどは枝葉にすぎず、バルトが落ちれば勝手に落ちる存在である。補給路が確保できないのだから当然である。

この程度の砦にはレオン軍を牽制に向かわせるだけで十分だった。それだけでリュナン軍への側面攻撃を防ぐという戦略目標を達成できるうえに、レオンの求めるセルバ攻略も同時に成るというのに。



リュナンが愚かにもセルバに出陣したおかげで、バルト要塞にはガーゼルの増援も到着してしまい、一挙に難攻不落と化してしまった。オイゲンの無念は察するにあまりある。


「兵は詭道なり」と言う。信長や信玄であれば、間違いなくレオンを利用するだけ利用してバルト攻略の果実を得ただろう。

既にウェルトの内乱を鎮圧していた頃とはリュナン軍の力は比べ物にならない。その段階まで来たなら、レオン程度の感情など無視して、より速やかな攻略を求めるべきだったのだ。



しかも、このセルバの戦いで追い詰められたカーネルは、ポエムを呼び寄せてしまう。このことがネイファの竜化を招き、グエンにその所在を知られるキッカケとなった。リュナンがセルバに出陣しなければこの事態は起こらず、邪神復活の儀は行えなかったことを思えば、返す返すもリュナンの失態は大きかった。





斯様に、オイゲンの知略は尋常ではない。
その一方で、大政治家としての才も兼ね備えている。


ノルゼリアの和約の調印についてである。

オイゲンは、ヴェーヌがセネトの意向を伝えてから、ノルゼリアに至るまでの僅かな期間に条約の調印文書を作り上げている。恐るべき能力である。


しかも、この調印文書が必要にして十分な効果を上げた事は、後にリュナンが呑気に船旅に出ても何も問題が起こらなかった事から明らかである。


当時、リーヴェ国内には反カナンの機運はあった。それは作中でも触れられている。当然、カナン国民も事実上の勝者であるリーヴェ王国に対する不満はあった。なにしろ戦争が続きすぎた。どちらが仕掛けたかという話を通り越して、既に親しい人間を殺された等の恨みの連鎖が起きている。


という具合に、終戦後の両国は水面下で緊張関係にあった。無いわけが無い。


しかし、何も問題が表面化しなかったというのは、偏に国政を預かったオイゲンの手腕、そしてカナンを治めるセネトの手腕。何より、両国の和平を実現したノルゼリア和約の出来が良かったからに他ならない。


史実でも、ベルサイユ条約のように、後世から見れば欠陥品のような条約のために戦争が起こった事を思えば、オイゲンがスピード作成した条約内容が如何に優れていたかが分かるというものだ。



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だからさ、これマジですか?