「坂の上の雲」、NHKのドラマにもなったことだし知ってる人も多いと思う。
司馬先生の著作の中でも大のお気に入りなのです。



あくまで「小説」であり、「史実」とは違う部分もあるのだけど(そりゃそうだ。一々全ての記録が正確に残ってるわけがない。都合の悪いモノは改ざんしたり、伏せたり、無かったことにしたり…現代の日本とあんま変わらん。というか、明治の日本と現代日本は地続きなのである)
そこは流石に司馬先生で、独特な軽さと重厚さを巧みに織り交ぜて読む者を引きつけます。




もう何度も読み返してるのですが、ラーメンの汁がかかったり、コーヒーが跳ねたり、風呂で読んでしわしわになったり…するかと思いきや、
どうしてどうして、文春文庫の装丁がなかなかに頑丈なので、今のところ目立った外傷はありません。

そのうち保存版を買おうとは思ってるけど、まー、それは未来のお話。




秋山好古(あきやまよしふる)秋山真之(さねゆき)の兄弟、そして正岡子規。
本作の主人公は一応この3人ってことになってます。
とても魅力的な人物たちです。



小説が描く舞台は日清・日露戦争の頃の日本とロシアとその周辺というおそろしく巨大なモノ。
世界とはあまりにも広いもので、この3人の視点だけでは物語は空白地帯だらけになってしまいます。それを埋めるべく、これまた魅力的な人物が出て来てくれるのですが、それは追々。


ブログでは、個人的に好きなエピソードを紹介していこうかなって思います。



さて、真之。伊予松山(愛媛県)の人。
天才参謀、軍師と言った方が通りがいいのかしら。
日本史上の軍師というと、竹中半兵衛、大河ドラマ予定の黒田如水や、「天地人」の直江山城、石田三成における島左近etc


といった辺りが有名だけど、日本史いや世界史に与えた影響度で言えば、真之の方がでかいんじゃなかろうか。なにしろ活躍の舞台が日露戦争だし。



この人物がいなかったら日本はどうなっていたか分からんとまで評された天才参謀だけど、
産まれる前から人生最大のピンチを迎えたらしい。



1868年の生まれってことだから、戊辰戦争のあった年ですね。
秋山家は貧しく、真之が生まれる際には「おろしてしまおうか」と相談してたらしい。
産婆さんに頼んで、産湯でもって溺死させてしまうという随分と残酷な話だけど、
この時代はそういうものだったらしい。

けど、さすがに溺死はアレなので、結局は寺に小僧にやってしまおうということになったそうな。口減らしってやつだ。


そこで兄の好古が登場。まだ10歳になるかならないか。



「あのな、そら、いけんぞな」


「あのな、お父さん。赤ン坊をお寺へやってはいやぞな。おっつけウチが勉強してな、お豆腐ほどお金をこしらえてあげるぞな」





か、、、、かわいい…


10歳くらいの子供が、生まれてくる弟を守ろうと一所懸命な姿が目に浮かぶ。
そしてセリフがかわいい。伊予弁ってかわいいよね。


もうこれだけで萌え死できそうなんだけど、ワタシ変ですか?



お豆腐ほど、、、、か、、、かわいい…
藩札(江戸時代に各藩で発光されてた紙幣)か何かは知らんけど、豆腐くらいの厚さの金を稼いでやるってことでしょう。



ともあれ、真之は無事に産まれてくることができましたとさ。


変人と評判だった真之が兄の好古の前でだけは素直だったらしいので、
このエピソードはたぶん本当にあったんだと思う。