今更ながらの続き。

 

 

 

銀賞という結果を聞いた俺は、一人になりたいと思った。

 

しかし副部長であり、これを以て引退という立場にあっては、そういう訳にもいかない。ミーティングに居なければならない。役付きとは不便なのだ。

 

 

会場からの撤収で楽器の積み込みやら何やらをする中、俺はただうずくまっていた。

 

 

応援に来ていた先輩たちも見かねたのだろう。先代と先々代の学生指揮者がオレの元に来た。色々と慰めの言葉をかけてくれたのだと思うけど、内容は覚えていない。

 

ただ、僅かに覚えている言葉があって「おまえはすげーもんを積み上げたよ。俺らじゃ真似できない」と先輩は言った。

 

 

 

当時の俺は、そういう言葉を真摯に受け入れる状態には無かった。内心で「当たり前だ!俺は文字通りに全てを賭けたんだ。他のヤツに同じ事ができるかよ」と思った。口に出せるわけもないけど。

 

 

 

 

どれだけ情熱を注いでもダメなものはダメ、という現実を思い知らされた高校3年生は、この程度にやさぐれるし、内心だけなら、どこまでも傲慢になれる。

 

 

 

 

この一連の記憶は、いつまで経っても胸をチクチクさせる棘のようなものだけど、とうに高校生ではない自分には、それを取り除く手段は何処にも無い。

 

こういう思いと記憶を持ってる大人は何処にでもいるんだろうなと、今は思ってる。