第一話~決別~
第二話~ 底 ~ はこちら
あれから二週間が過ぎた。
あの時以来、電源は切ったままだった。
出前を取りながら、なんとか食うには困らなかった。
しかし、別の問題が発生した。
「金…金が・・・ない。」
手持ちの現金が尽きた。
銀行に行けばあるのだが、とても外に出る気にはなれない。
僕は冷蔵庫を開けた。
中には冷えたビールと、いつ買ったかわからない[さきいか]や[サラミ]それだけだ。
「とてもじゃないが…無理だな。」
仕方ない。僕は銀行に行く決心をした。
「昼間だし…アイツら寝てるよな。」
僕は自分に言い聞かせ、家を出る。
実に三週間ぶりの外出だ。
「眩しいなぁ…」
降り注ぐ太陽が僕に勇気をくれた。
そう思いたかっただけなのかもしれないが。
初めこそキョロキョロと辺りを見渡しながら挙動不審に歩いていたが、5分としないうちに楽しくなってきた。
「そういえば昼間にブラブラ歩くなんてどれくらいぶりだろう?」
完全に夜型の生活を送っていた僕には、それがひどく懐かしいモノのように思えた。
「よし!金を卸したら美味い物でも食いに行こう。そうだ、髪も切らないとな。」
久々の外出で僕は少し浮かれていたのかもしれない。
「あれ…?サトル??」
心臓が止まるかと思った。
何故気付かなかったんだ!
僕は激しく後悔した。
僕の真正面に立つ女性。
名をマキと言った。
レナと同様に、僕の店に来ていた客だった。
本人は24歳だと言っていたが、その容姿から僕ら従業員の間では陰で【おばちゃん】そう呼ばれていた。
僕は咄嗟に身を翻すと、その場から逃げ去ろうとした。
「待って!私は…私は大丈夫だから!」
(大丈夫?何が大丈夫なもんか!)
僕は心の中で吐き捨てた。
(そんな事言って油断させて俺を捕まえる気だろう?俺はそんなに馬鹿じゃない!)
僕はもう何も信じられずにいた。
マキが必死で訴えかける姿さえも偽物に見える。
「聞いたよ…店辞めたんでしょ?」
僕は答えなかった。
「私も…色々聞かれたわ。協力すれば金もやる、そう言われた。」
「・・・幾ら貰ったんだ?」
「見損なわないでよ!断ったわよ!」
「見え透いた事を…みんな金が一番さ。」
真実、僕はそう思っていた。
人の心なんて簡単に買える…そう信じて疑わなかった。
「わかったわ…そこまで言うなら証拠を見せてあげる。」
そう言ってマキは服の袖をめくった。
【嘘つき女!】そこにはそう切り刻まれていた。
「まさか…」
「うん。やられちゃった」
マキは笑顔で答えた。
「そんな…お前・・・」
「ちゃんと消えるかなぁ?コレ」
まだうっすらと血の滲む腕を見ながらマキは言った。
笑顔のまま。
「お前…馬鹿だよ・・・なんで…なんで俺を庇う!」
「わかんない?」
「わかる訳ないだろ!そんな目に合うくらいなら俺を売るのが普通だ!金だって貰えるんだろ!!」
「馬鹿ねぇ…人の心は買えないって事よ」
僕の体に衝撃が走った。
その衝撃は僕の体を突き抜け、そのまま頬を伝う涙となって零れ落ちた。
「ごめん…ごめんな・・・ごめん…」
かすれた声で僕は何度も繰り返した。
「いいのよ…もう。」
「ご…ごめ・・・」
ついに言葉にならなくなった。
僕は人目もはばからず大声で泣いた。
「わかったから…恥ずかしいよ…ね?」
少し困ったような笑顔でマキは僕の手を取り、こう言った。
「ねぇ、ウチ・・・来る?」
第二話~ 底 ~ はこちら
あれから二週間が過ぎた。
あの時以来、電源は切ったままだった。
出前を取りながら、なんとか食うには困らなかった。
しかし、別の問題が発生した。
「金…金が・・・ない。」
手持ちの現金が尽きた。
銀行に行けばあるのだが、とても外に出る気にはなれない。
僕は冷蔵庫を開けた。
中には冷えたビールと、いつ買ったかわからない[さきいか]や[サラミ]それだけだ。
「とてもじゃないが…無理だな。」
仕方ない。僕は銀行に行く決心をした。
「昼間だし…アイツら寝てるよな。」
僕は自分に言い聞かせ、家を出る。
実に三週間ぶりの外出だ。
「眩しいなぁ…」
降り注ぐ太陽が僕に勇気をくれた。
そう思いたかっただけなのかもしれないが。
初めこそキョロキョロと辺りを見渡しながら挙動不審に歩いていたが、5分としないうちに楽しくなってきた。
「そういえば昼間にブラブラ歩くなんてどれくらいぶりだろう?」
完全に夜型の生活を送っていた僕には、それがひどく懐かしいモノのように思えた。
「よし!金を卸したら美味い物でも食いに行こう。そうだ、髪も切らないとな。」
久々の外出で僕は少し浮かれていたのかもしれない。
「あれ…?サトル??」
心臓が止まるかと思った。
何故気付かなかったんだ!
僕は激しく後悔した。
僕の真正面に立つ女性。
名をマキと言った。
レナと同様に、僕の店に来ていた客だった。
本人は24歳だと言っていたが、その容姿から僕ら従業員の間では陰で【おばちゃん】そう呼ばれていた。
僕は咄嗟に身を翻すと、その場から逃げ去ろうとした。
「待って!私は…私は大丈夫だから!」
(大丈夫?何が大丈夫なもんか!)
僕は心の中で吐き捨てた。
(そんな事言って油断させて俺を捕まえる気だろう?俺はそんなに馬鹿じゃない!)
僕はもう何も信じられずにいた。
マキが必死で訴えかける姿さえも偽物に見える。
「聞いたよ…店辞めたんでしょ?」
僕は答えなかった。
「私も…色々聞かれたわ。協力すれば金もやる、そう言われた。」
「・・・幾ら貰ったんだ?」
「見損なわないでよ!断ったわよ!」
「見え透いた事を…みんな金が一番さ。」
真実、僕はそう思っていた。
人の心なんて簡単に買える…そう信じて疑わなかった。
「わかったわ…そこまで言うなら証拠を見せてあげる。」
そう言ってマキは服の袖をめくった。
【嘘つき女!】そこにはそう切り刻まれていた。
「まさか…」
「うん。やられちゃった」
マキは笑顔で答えた。
「そんな…お前・・・」
「ちゃんと消えるかなぁ?コレ」
まだうっすらと血の滲む腕を見ながらマキは言った。
笑顔のまま。
「お前…馬鹿だよ・・・なんで…なんで俺を庇う!」
「わかんない?」
「わかる訳ないだろ!そんな目に合うくらいなら俺を売るのが普通だ!金だって貰えるんだろ!!」
「馬鹿ねぇ…人の心は買えないって事よ」
僕の体に衝撃が走った。
その衝撃は僕の体を突き抜け、そのまま頬を伝う涙となって零れ落ちた。
「ごめん…ごめんな・・・ごめん…」
かすれた声で僕は何度も繰り返した。
「いいのよ…もう。」
「ご…ごめ・・・」
ついに言葉にならなくなった。
僕は人目もはばからず大声で泣いた。
「わかったから…恥ずかしいよ…ね?」
少し困ったような笑顔でマキは僕の手を取り、こう言った。
「ねぇ、ウチ・・・来る?」