彼が小学生の時に、母が病気で亡くなり、小さな妹の面倒を見たり、家事を父が帰って来るまでしていたそうです。
遊びたい盛りの時に、遊べず、経済的にも苦しく、友達も作れず、イジメられたそうです。
中学生になった頃、それまでの状況に耐えられず、非行に走り、卒業と共にヤクザになりました。
M君曰く、こんな自分を受け入れてくれるのは、この組しか無かった。と…
彼が組を抜けたのが、それから15年ほど後になってからで、ヤクザをしていても自分が落ち着ける場所じゃないと気付き始めたのと、彼女が出来た事がきっかけでした。
その頃に出逢ったのです。
全身に入れ墨が入り、目付き鋭く、近寄るのも怖い感じでした。
しかし、付き合って話を聞いてみると、寂しさから組に入ったものの、今は大切な人が出来たから、真面目に働きたいんだ、と言ってました。
それからは、仕事をしながら夜間大学に通い、彼女の両親に認められるように、一生懸命でした。
大学卒業間際に、自動車の盗難に遇い、提出する卒論が無くなり、卒業出来なくなってしまいました。
悪いことは続くもので、仕事のミスがあり、借金が出来てしまい、連日の取り立てにあいました。
その時には、M君には子供が出来ていたのですが、この状況を見かねた彼女の親が、子供と彼女をM君から引き離しました。
M君は何度も懇願しに行っても、警察を呼ばれてしまう始末。
ヤクザものは、所詮こんな事だ、と言われたそうです。
借金返済の目処も立たない時に、友達だと思っていた業者に騙され、材料や道具まで取られてしまいました。
ある夜M君から電話があり、泣きながら「あほ犬さん、真面目にしてたら良い事あるって、言ってたけど何も良い事なんか無かった、真面目に生きるてなんやねん」
言葉に詰まりましたが、「それでも真面目に生きなあかんねん」としか言えませんでした。
次の日、M君は騙された業者の家にトラックで突っ込み、逮捕されてしまいました。
もう釈放されているとは思いますが、全く連絡が着かないままです。
それでも真面目に生きていて欲しい野良
