人気のドラム音源、BFDとBFD Ecoのオーディオデータをミックス依頼のためにバラバラにエクスポート/バウンスする方法を解説します。
オーディオデータをエンジニアに渡すときの基本は「エフェクター/プラグインは全部オフ」
宅録やDTM、打ち込みのデータをミックス師やレコーディングエンジニア、ミキシングエンジニアに渡す際に、今作業しているDTMソフトのオーディオデータを、エクスポートする必要があります。
その際、大前提として、絶対に覚えておいて欲しいことは、「エフェクター/プラグインは全部オフ=なるべく素の音」を渡す、ということ。一度かかってしまったたエフェクト(音色の変化)を「無かったことに」して元に戻すことはできません。
※料理で調味料をかけてしまった後は元に戻せない、というのと同じイメージです。
- イフェクトはオフ
- なるべく各トラックをバラバラに
- エンディングにしか出てこないトラックも、必ず0:00の曲頭からバウンスする
この3点は必ず覚えておいて欲しいポイントです。
BFDとBFD Ecoで、画面上細かいところは違うところもあるかもしれません。大まかにはEZdrumなど他のドラムシュミレータのソフトも機能は似たり寄ったりだと思います。ここでは、データの打ち込みは終わっていて、最後にミックス依頼などでエンジニアにデータをオーディオデータを渡すためにBFD の各パーツを、個別にエクスポートする(オーディオファイルにする)ためにはどうすればいいのか、ということを解説します。
※ 今の BFD の状態や、DTMソフトのソングファイル/プロジェクトファイルの状態は、必ず「別名で保存」して、バックアップを取っておいてください。ここから操作して行く部分は、あくまでオーディオをエクスポートするために、一時的に行う作業です。
BFDのミキサー画面を確実に把握する
一見、遠回りなようですが、ミスによるやり直しを極力防ぐため、BFDのミキサー画面でできる操作、機能を確実に把握しておきましょう。
重要なフェーダーやツマミを基本位置(0)に戻しておく
次に、その上にあるミキサー画面で、一番右のチャンネル、マスターフェーダーを確認します。こちらは一番上から20%ぐらい下がったところで、右側に「0」という数字が書いてあります。これもプラスマイナス0デシベル(±0dB)、つまり「フェーダーでは音量を上げたり下げたりしていません、何もしていません」ということなので、「一番音質がいい状態=入ってきた音から、変化が加えられていない状態」となります。この「0位置」になるように設定してください。これがBFDミキサーの機能設定の最重要ポイントになります。
ルーティングの確認
次はルーティングの確認です。ルーティングとは音の通り道(ルート route)を設定することです。BFDで最初にドラムキットのプリセットを選んでいると、ミキサーの設定にも紐づいたプリセットが読み込まれるかもしれません。その際にはミキサーの設定も「自分では何も設定してなかったのに・・」ということがあるかもしれません。そのため、まずは「今どうなっているか」を確認しておきましょう。
先ほど見たマスターフェーダー(MASTER)の左隣にAUX1,AUX2がありますよね。オグジュアリーと読みます。
これが普通のミキサーでは(バス)と呼ばれているものです。ミキサー内にさらにミニミキサーが入ってるようなイメージです。BFDでは、このAUX1,AUX2の各バスに、ドラムキットのいくつかを送り込むことで、複数のパーツに、まとめてEQやコンプレッサーをかけたり、リバーブをかけたり、といった処理ができるようになっています。
複数のチャンネルを同時にまとめて一つの処理をしたいときに使う、サブミックスという方法です。それぞれのトラックの一番下が、各チャンネル(BFDではドラムの各パーツ)の行き先を設定します。
上の画像だと、左から4、5、6番目のタムのトラック3つが「AUX2」にアサイン(割り当て)されていることがわかります。
他のチャンネルは赤地で「MSATER」(マスター)に送られるように設定されていますが、この左から4、5、6番目のタムのトラック3つだけ 黄地で「AUX2」と書いてありますよね。つまり、このタムの3トラックは直接マスターフェーダーに行かずに、1度 AUX2(バス)に送られているということです。これによって、マスターフェーダーの左隣のAUX1、AUX2のトラックで、タム三つまとめて何かイフェクトをかけたり、または単純にまとめて音量調整したり、ということができます。
これは呼び名は様々かもしれませんが、実際にプロのミキシングでも非常に多く使われている方法です。
※ 実際、プロのミックス作業でも似たようなことは良く行われています。テープレーコダーがデジタル48チャンネルのソニー3348になる前、16-32トラックレコーダーを使っていた頃は、タム(+フロアタム)のマイクが3-5個あっても、2チャンネルステレオにまとめて録音されることが一般的でした。3348でチャンネルに余裕ができて、タムの録音がバラバラにできるようになっても、ミックス作業の際には、タム内でのバランスを整えたら、後はその中の関係性は動かしたくないので、このようにバスにまとめることは多いです。
ひょっとしたら、エクスポートする時にはこのバスへの送り(AUX1,AUX2)は外して、マスターフェーダー(MASTER)に直接送った方が良いかもしれません。ここは打ち込みデータでどれくらいタムを使っているかによる、という判断もあります。
イフェクトのオン/オフを確認する
次にEQやエフェクト(FX1,FX2)のオン/オフを、必要に応じて、正しく行う必要があります。「今どんなエフェクトがかかっているのか」といったことを確認できて、自由にオンオフできるようにしておきましょう。特にミックス依頼をする場合には「なるべくイフェクトがかかっていない状態で、「素(す)」の 素材の音をそのまま送ってほしい」ということがほとんどです
BFD Ecoには、各トラック、各フェーダーのパンの上にも「FX1,FX2」のオンオフボタンがありますが、一番確実なのは、各トラックを一度クリックした後、一番上の「Channel」(チャンネル)と書いてある部分を見ること。EQ、FX1、FX 2、と3つ枠がありますよね。このそれぞれの枠の中で一番左上隅の青色のボタンが点灯している場合には、エフェクトがかかっている状態、になります。一方この一番左上のボタンが点灯していない(黒)の場合には、「エフェクトがかかっていない=バイパスの状態」ということになります。
ミュートボタンを「確実に」使う
通常の作業中でもそうですが、エクスポートする作業、オーディオの抜き出しをする作業の時に確実に(自信を持って)使って干しいミキサー機能がソロボタンやミュートボタンです。
フェーダーの上にある赤い「 M」 と書いてあるボタンがミュートボタンです。そのトラックの音を一時的に出ないようにミュート(無音に)するボタンです。もう一度押せば戻りますので、気軽に押してみてください。
その横の黄色い 「S」 と書いてあるボタンがソロボタンになります。ソロとは「1つの」という意味で、そのトラックの音だけを聞くことができます。ただこのソロに機能は落とし穴がいろいろあります。ちゃんとソロ機能の動作モードのわかっていれば、使ってもいいのですが、それが分からないうちは、エクスポートする作業、オーディオの抜き出し作業の際には、ソロボタンはあまり使わない方がいいかもしれません。
PAN(パン)で左右の定位を設定する
ミュートとソロのボタンのさらに上には、横長の黒い部分がありますよね。これがPAN(パン)といって、ステレオ空間の中で左、右、真ん中、どこに音を定位させるかということを調整するできる機能です。
例えば、上の図では、一番左のスネアはセンター(真ん中)になっていますが、HighTom(ハイタム)は右側に定位しています。
ドラムの定位には2つのパターンがある
ドラムの各パーツのパン定位についてはパターンが二つあります。
ドラムに向かい合って、レコーディングスタジオのコントロールルーム(調整室)から見た時の見た目、ライブで客席から見た時の見た目に従って配置する方法です。(Lo-Hiといいます) こちらが基本です。
一方ドラマから見た目、自分がドラマーになったつもりで各パーツを配置するというパターンが二つ目です。(Hi-Loといいます) これは特に「自分が実際にドラムを叩く(こともある)」と言う方には、非常に理解がしやすいイメージがつかみやすいので、ドラマーの方やアーティストの方自身がミックスをする時には、このような配置にすることがあります。
昔は客席から見た目の配置にするものが8割以上だったのですが、最近ではDTMが発達して、アーティストが曲作りのかなり最終段階に近いところまで自分でやるケースが増えてきているので、ドラマから見た目の配置も増えてきています。
どちらにしてもキックとスネアは必ず真ん中(センター)になります。
ハイハットはパターン1の時には右寄り、パターン2の時には左寄り。(センターが0で両端が100とすると、80から100ぐらいのところに振り切っていることが多い。特にシンバルのマイク(Cym/Top)から見ると、ハイハットがドラムキットの一番端にあるから、ということが理由です)
タムはミッドタムが真ん中付近で、パターン1の時には右、ハイタムが右側フロアタムは左側となります。
シンバル類はクラッシュ、シンバル、ライドと書いてありますが、パターン1の時には、クラッシュが右寄り、シンバルが左寄り、よりライドがさらに左寄り、ちょうどハイハットの反対側、対称になるイメージで定位させることもあります。
生のドラムのレコーディングでは、録音した時に、ドラマーの方がセッティングされた配置=「トップのマイクから見て、どのような位置関係にあるか」に従ってパンを配置していきます。そのため、「ライドは結構真ん中寄り」という場合も少なくありません。BFDでは好みでOKです。曲中での使用頻度、パターンによって決めたり、普段から自分の好きなバンドやドラマーのCDを良く聞いて、分析しておくのがおすすめです。
パーカッションの定位は好みです。画面上にあるからと言って、毎回、全ての楽器・パーツを使い切る必要もありません。全く使っていないことも多いと思います。使うのであれば、何かリズムを刻むなら、ハイハットと対称の位置、反対側の位置に置くと割とバランスが取れることが多いですよ。
BFDの各トラックをバラバラにエクスポートしていく方法
やっとですが、実際にBFDの各パーツをバラバラにエクスポートしていく順番です。
レコーディングスタジオでは一緒に作業をしているので、アーチスト・バンドとエンジニアでイメージのズレというのはあまり発生しないのですが、アーティスト・バンドが自分たちでトラック製作やDTM・打ち込みを行っている場合は、「どういうバランス、どういう音で作業をしていたのか」というのを一度エンジニアに聞かせてもらえると、イメージが共有しやすくなります。
1. そのためまずは、これまで作業していたところ、自分なりに曲が完成した状態のままで、歌もオケも全部入った自分達なりの完成形に近い状態のオーディオトラックを、頭(0:00)から終わりまでバウンスしておいてください。作業中スナップショット、ラフミックスというイメージです。
2. 次に、このままの状態で、ドラム以外の全トラックをDTMソフト上でミューとして、ドラムだけ、ドラムが全部入った状態で、BFDも特にいじらずに、そのまま1度、頭(0:00)から終わりまでバウンスしてください。ドラムだけのラフミックスです。
ここまで終わったら、一度、BFD の全部のチャンネルをミュートしましょう。そしてエフェクトも全部オフ。EQも全部オフにしましょう。
ルーム(Room)とオーバーヘッド(OH)のトラックをバウンスする
3.ルームだけのトラックをバウンスします。マスターとルームだけミュートをはずした状態で、MIDIデータではドラムキット全体が鳴っている音を頭(0:00)から終わりまでバウンスしてください。この時イフェクトはオフになっていることを確認してください。
終わったらルームのトラックをミュートします。
4.オーバーヘッド(OH)だけのトラックをバウンスします。マスターとオーバーヘッド(OH)だけミュートをはずした状態で、MIDIデータではドラムキット全体が鳴っている音を頭(0:00)から終わりまでバウンスしてください。この時イフェクトはオフになっていることを確認してください。
終わったらオーバーヘッド(OH)のトラックをミュートします。
あとは、個別のトラックごとに1トラックずつエクスポートしていきますが、このとき、BFDのミキサー画面で一つのトラックの音だけを出しておくだけでは不十分です。DTMソフト上で、MIDIデータで、不要なドラムのほかのキットの音をミュートする必要があります。例えばバスドラムのトラックをバウンスするなら、「バスドラム以外」のドラムのMIDIデータを一時的にミュートする必要があります。
5.バスドラム(Kick)だけのトラックをバウンスします。BFDのミキサー画面でマスターとバスドラム(Kick)だけミュートをはずした状態にします。次にDTMソフト上で、MIDIデータではドラムキット全体を一度ミュートして、バスドラム(Kick)だけが鳴るようにします。この状態で頭(0:00)から終わりまでバウンスしてください。この時イフェクトはオフになっていることを確認してください。
終わったらBFDのミキサーでバスドラム(Kick)のトラックをミュートします。
6.スネアドラム(Snare)だけのトラックをバウンスします。BFDのミキサー画面でマスターとスネアドラム(Snare)だけミュートをはずした状態にします。次にDTMソフト上で、MIDIデータではドラムキット全体を一度ミュートして、スネアドラム(Snare)だけが鳴るようにします。この状態で頭(0:00)から終わりまでバウンスしてください。この時イフェクトはオフになっていることを確認してください。
また、スネアでは必ずTop/Botのバランス調整ツマミを確認してください。Topはスネアドラムの上側の皮の音、Bot(Bottom)はスネアドラムの下側の響き線の音になります。スネアの音色は曲のイメージに非常に大きな影響を与えますが、このスネアのトップとボトムのバランスは、バウンスされた後では、データを受け取ったエンジニア側では変更することができません。
心配な場合は、スネアドラム(Snare)のみ、Top/Botそれぞれ振り切った状態にして、合計2回バウンスしておくのがおすすめのリスク回避法です。「スネアTop」のトラックと「スネアBot」のトラックを作るイメージです。
終わったらBFDのミキサーでスネアドラム(Snare)のトラックをミュートします。
7.フロアタム(FloorTom)だけのトラックをバウンスします。BFDのミキサー画面でマスターとフロアタム(FloorTom)だけミュートをはずした状態にします。パンはセンターにしておきましょう。次にDTMソフト上で、MIDIデータではドラムキット全体を一度ミュートして、フロアタム(FloorTom)だけが鳴るようにします。この状態で頭(0:00)から終わりまでバウンスしてください。この時イフェクトはオフになっていることを確認してください。
終わったらBFDのミキサーでフロアタム(FloorTom)のトラックをミュートします。
8.ミッドタム(MidTom)だけのトラックをバウンスします。BFDのミキサー画面でマスターとミッドタム(MidTom)だけミュートをはずした状態にします。パンはセンターにしておきましょう。次にDTMソフト上で、MIDIデータではドラムキット全体を一度ミュートして、ミッドタム(MidTom)だけが鳴るようにします。この状態で頭(0:00)から終わりまでバウンスしてください。この時イフェクトはオフになっていることを確認してください。
終わったらBFDのミキサーでミッドタム(MidTom)のトラックをミュートします。
9.ハイタム(HighTom)だけのトラックをバウンスします。BFDのミキサー画面でマスターとハイタム(HighTom)だけミュートをはずした状態にします。パンはセンターにしておきましょう。次にDTMソフト上で、MIDIデータではドラムキット全体を一度ミュートして、ハイタム(HighTom)だけが鳴るようにします。この状態で頭(0:00)から終わりまでバウンスしてください。この時イフェクトはオフになっていることを確認してください。
終わったらBFDのミキサーでハイタム(HighTom)のトラックをミュートします。
10.シンバル(Cym)だけのトラックをバウンスします。BFDのミキサー画面でマスターとシンバル(Cym)だけミュートをはずした状態にします。パンはセンターにしておきましょう。次にDTMソフト上で、MIDIデータではドラムキット全体を一度ミュートして、シンバル(Cym)だけが鳴るようにします。この状態で頭(0:00)から終わりまでバウンスしてください。この時イフェクトはオフになっていることを確認してください。
終わったらBFDのミキサーでシンバル(Cym)のトラックをミュートします。
11.クラッシュシンバル(Crash)だけのトラックをバウンスします。BFDのミキサー画面でマスターとクラッシュシンバル(Crash)だけミュートをはずした状態にします。パンはセンターにしておきましょう。次にDTMソフト上で、MIDIデータではドラムキット全体を一度ミュートして、クラッシュシンバル(Crash)だけが鳴るようにします。この状態で頭(0:00)から終わりまでバウンスしてください。この時イフェクトはオフになっていることを確認してください。
終わったらBFDのミキサーでクラッシュシンバル(Crash)のトラックをミュートします。
12.ライドシンバル(Ride)だけのトラックをバウンスします。BFDのミキサー画面でマスターとライドシンバル(Ride)だけミュートをはずした状態にします。パンはセンターにしておきましょう。次にDTMソフト上で、MIDIデータではドラムキット全体を一度ミュートして、ライドシンバル(Ride)だけが鳴るようにします。この状態で頭(0:00)から終わりまでバウンスしてください。この時イフェクトはオフになっていることを確認してください。
終わったらBFDのミキサーでライドシンバル(Ride)のトラックをミュートします。
13.このほか、カウベルやシェイカー、カバサなどパーカッション類があれば、上記と同様に個別にバウンスしていってください。