②「住み心地」を重視した「断熱工法」とは


Ⅰ.木造の断熱工法の種類


木造の断熱工法は大きくわけて3種類です。


A.充填断熱工法(じゅうてだんねつ)

B.外張断熱工法(そとばりだんねつ)

C.付加断熱工法(ふかだんねつ)


☆Cの付加断熱は(Aベース+B) 又は (Bベース+A)のように

AとBを組み合わせた断熱工法です。


A.充填断熱工法(じゅうてんだんねつ)
充填断熱工法とは、

繊維系断熱材を柱と柱の間に挟み込む(充填する)断熱工法です。


○欧米の充填断熱法
気密・防湿シートを張った枠組壁工法の枠組みの内部にグラスウール又は、
ロックウールを隙間なく充填しています。


○日本の在来木造の充填断熱法
☆在来工法は構造の軸組内に筋交や固定金物・胴縁があるため
断熱材が完全充填しにくい工法
である。

そのため従来より正しくない充填断熱工法が行われてきた結果
壁体内部で結露が発生し、断熱性の低下や構造躯体の劣化が指摘
され
社会問題となった。


ここでいう間違った充填断熱方法とは

①壁の厚さの半分しか断熱材を入れないので、対流が発生して熱が逃げる。

②断熱材をビニールの袋に入れる、不完全な防湿シートを使う。

③床下から小屋裏までが壁の空洞を通じて繋がり大きな熱損失を発生させる。

①②③の結果 使用した断熱材の厚さに見合う断熱性が得られなかった
これに、結露が加わるので、到底「住み心地」がよいとは言えない住宅
なっていたのです。


では正しい充填断熱方法とは

①断熱材の室内側に気密防湿層を施工

軸組内部に断熱材を隙間なく充填する対流の防止)

断熱材の外側で水蒸気が結露しないよう通気を設ける。

①②③の方法で断熱すれば、

充填断熱工法は有効にその役目を果たします。

確かに技術的には難しい面もありますが、

内部結露問題を契機に
最近では確実な施工で断熱性を確保しつつ結露を

回避する工事を行う住宅会社も増えています。


☆NPO法人 新木造住宅技術研究協議会HP参照


(充填断熱工法のメリット)
ローコスト
である。
外装材料の選択肢が広い。
建物の形状を複雑にできる。
断熱材の厚みを200mm300mmと簡単に厚くできる。
施工できる会社が多い。


(充填断熱工法のデメリット)
気密工事が煩雑
である。
配管・電気配線工事では融通性に欠ける
木部は断熱材の約1/3の断熱性なので

熱が逃げやすい熱橋の問題がある。
施工不良があると結露の心配がある。



B. 外張断熱工法(そとばりだんねつ)


外張り断熱工法とは、

建物の外側を発泡樹脂系断熱材で切れ目なく包み込む断熱工法。

外張り断熱を壁・屋根・基礎のどの部分までおこなうかで

3種類に分かれます。

壁だけ外張断熱工法(屋根・床下は充填断熱)
壁と屋根だけ外張断熱工法(床下は充填断熱 又は基礎内断熱)

壁と屋根と基礎を外張断熱工法(完全外断熱工法)


そもそも外張断熱工法は

木造の充填断熱工法のデメリットの項目に挙げられる

「気密施工が難しい」「熱橋による断熱不足」「結露の対策」

等の問題点を解決する一つの方法として考えられました。



(外張断熱工法のメリット)
熱橋がほとんどない。

気密が取りやすい。
建物形状が単純な場合は施工がしやすい。
発泡樹脂系断熱材は透湿抵抗が高いため、結露の恐れが少ない。

木材の腐朽の恐れが少ない。
配管・電気配線の融通性
がある。
デザイン上の木部を露出が可能である。
屋根小屋組の露出、野地板や垂木をあらわせるので木の素材感を活かせます。
湿度の調湿の能力が高い
基礎外張断熱の場合 地中熱の利用ができる。
基礎外張断熱の場合 熱容量が非常に大きくなる。


(外張断熱工法のデメリット)

壁厚が増える。
狭い敷地の場合 通路が6センチほど狭くなります。
屋根の断熱工事に時間がかかる。
充填断熱よりコストがかかる。
坪3万~4万円位
複雑な形状になると施工性が落ちる場合がある。
標準仕様では重たい外装材に対する制約がある。
施工できる会社が少ない。



(断熱工法の選択のポイントは)


☆「住み心地のよい家」という観点に立った場合
「充填断熱」と「外張断熱」のどちらがよいのでしょうか?


答えは、

丁寧に施工された「充填断熱工法」

正しい施工の壁と屋根だけの「外張り断熱」

断熱性能が同じならば、どちらでもよい。」

と考えられます。

つまり両者ともに丁寧に工事がなされて、

同じ断熱性能をもっているとしたら
断熱の位置だけでは「互角」、「甲乙つけがたい」とうところです。


ちなみに、壁だけの外張り断熱工法は以下の2つ理由により

お勧めできません。

(理由)

①グラスウールで付加断熱的に外張り断熱されている場合

内部結露対策にはなるが、外部からの結露対策にはならず、

夏の逆転結露による断熱性の低下の心配がある。

断熱・気密ラインがいびつなため、高気密・高断熱の施工が

難しい。結果 高気密・高断熱の住宅にならないから。



(理想的と言える断熱工法とは・・・)

☆それでは、ここで日本にもっとも多い地域つまり

「高温多湿の夏を持ち、冬も寒い地域」で住宅を

建てる場合に

もっとも「住み心地」がよいと思われる断熱工法は何でしょうか。


その条件を列挙してみます。


断熱性・気密性が高いこと

建物の熱容量が大きいこと

地中熱の利用ができること。

夏には、断熱性より遮熱性が重視されること。

建物の構造体の中を熱ごもりさせない仕組みをもっていること。

日本人が好きな「木造」であること。


①④⑥の条件であれば、「充填断熱工法」でも施工できます。

しかし、②③⑤が施工できません。

また、「壁・屋根だけの外張断熱工法」を採用した場合は①④⑥に加え⑤の施工が

可能になりますが、木造住宅の場合、コンクリート構造物に比べ

熱容量が大きくないので「壁・屋根だけを外張断熱」してもそれほど

熱容量の大きい住宅を造ることができません。


すると①~⑥のすべての条件を満たす断熱工法は

基礎コンクリートまで外側から断熱材ですっぽり包むことで

建物の熱容量を大きくしながら、地中熱の利用が可能になる

壁と屋根と基礎を外張断熱工法(完全外断熱工法)」ということに

なります。


「熱容量」を 「やかんのお湯」 の量に例えますと

「RC外断熱」がやかん一杯のお湯7Lとすると

「木造で壁・屋根・基礎まで外張断熱工法」 3.5L

「木造で充填断熱工法」 1L


木造・完全外張断熱工法の場合 

RC外断熱」と比べれば1/2の熱容量ですが、

「木造・充填断熱工法」と比べれば約3.5倍の非常に大きな熱容量の住宅

を造ることが可能になります。



これまで 

日本人が好きな木造でつくる「住み心地」のよい家が

どんな「構造」でどんな「断熱工法」なのか

を学んできました。

次の章では、これまで学んできた知識を活かしながら、具体的に「住み心地のよい家」を

探してみることにします。


RECOM㈱
代表取締役 田中勇一
RECOM新築用web 
http://www.recom.ne.jp/