住み心地が何故 注目されてなかったのか?



Ⅰ 住宅の供給者(住宅会社)側の問題点


住宅の価値には、
目で見て触れて、説明すればすぐできる

面的・機能的な価値
住んでみなければわからない

「住み心地」という価値があります。


 A.犠牲にされてきた「住み心地」

住宅会社は自社の利益を最大化するために

お客様にとって一生に一回の住宅について

「いかに早く売って」「いかに早く、

安く造り」「いかに早く回収するか」

をテーマに仕組み作りを行ってきました。


パッと見て、パッとわかる 一目瞭然なデザインや

設備に気持ちをひきつけて
購入意欲を一気に高めて契約に漕ぎつける

ことを流れを理想としています。

この効率を最大化するためには、

時間をかけてじっくり検討されたり
何回も確認しなくてはいけない要素は

限りなく省略しなくてなりません。


その結果、最大の犠牲にされたのが

「住み心地」なのです。


「住み心地」は、一言では説明しにくい上に、

「建築コストがかかり」「確認に時間がかかる」

住宅会社には、やっかいで面倒な要素です。



ですから住宅会社は

お客様には「住み心地」というものに

できるだけ興味をもたせない内に、

一生に一回の買い物である住宅を

衝動買いさせる仕組み

を作ってきたのです



 B.「住み心地」を「メリット」にすると多くの不都合がある。

住宅会社にとって 「住み心地」のよさを

お客様にアピールすることは
どうもたくさんの不都合な要素があるようです。

どのような不都合があるのでしょうか?

順に列挙してみます。


①説明する担当者の教育に時間がかかる。

目で見てわかりやすいカタログやパンフレット、

モデルハウスなどでは「住み心地」を


お客様に理解してもらうことはできません。

そのため、説明する担当者にかなり高度な専門教育が必要
になります。

仮に一級建築士であっても「住み心地」の説明に関してはかなり訓練
しないとできないほどの難しさがあるのです。
説明する担当者の教育・育成に時間がかかり

なかなか戦力化できない

ので不都合なのです。


②「住み心地」の確認には時間がかかる。

仮に、「住み心地」に関して説明できるようになったとしても、
次にお客様は実際にそれを「体感して確認したい」とおっしゃることでしょう。
春夏秋冬、梅雨の時期のそれぞれの「住み心地」について

それこそ一度に体験・体感することは当然できません。

そのため 体感も時期をづらして何回も行う必要が出てきます。
どんどん「早く」商談を先に進めて早く契約に漕ぎ着けたい

住宅会社にとってこれも不都合なのです。


③居住者の声をたくさん聞かせてくれと言われると困る。
もっとも住宅会社にとって不都合なことは、

実際に住んでいるお客様の声をたくさん聞かせてほしい、

居住者の方にたくさん会わせて欲しいと言われることです。


住んでみなければわからない住み心地の良さを確認するには

実際に住んでいる方の話が一番信憑性があります。

住宅会社の営業マンが発する 売りたいがための「セールストーク」

を消費者は簡単に信じることはできないからです。

しかし 住宅会社は

何故、たくさん居住者の声を聞かせてくれと言われると

困るのでしょうか。


理由その1

「住み心地」の感想は入居後、しばらくしてから頂くものです。

ということは、契約、打合せ、工事中、入居後アフターの段階まで

信頼関係に基づくよい人間関係が継続しているということが大前提にあるわけです。

「住み心地」はどうですか・・・と取材をさせて頂いて感想を聞かせてもらえるだけの

人間関係が入居後の段階まで継続できていないことが多いのでしょう。
つまり信頼を失ってアフターの段階までお客様の協力が得られない住宅会社が

それだけ多いことを意味しているのです


「住み心地」を「メリット」として住宅を販売することは

契約後のお客様を大事にし、

アフターメンテナンスを万全に行っている会社

にしか実はできないことなのです。


お客様に「住み心地」を保証することは

「売逃げ住宅」「建逃げ住宅」を
販売している住宅会社にはとっても

とっても不都合なことなのです。

まして たくさんの声を聞かせて下さい・・・と言われたら 

住宅会社の方から逃げ出してしまうかもしれません。

「そんなややこしいことを言わない他のお客様を探そう」って。


住宅会社の中には営業段階は

びっくりするほど熱心なのに

、契約した途端に態度が
豹変してびっくりしたなんて話が

たくさんありますから注意が必要です。


理由その2

「住み心地」の性能がお客様の期待したほどではなかった・

ということがあります。

もともとそれだけの性能がないのに「夏涼しく、冬暖かい」ことを
オーバートークしている住宅会社もあるでしょう。

また、営業段階でお客様に期待を抱かせ過ぎることもあるでしょう。

そして工事の施工不良でその性能が発揮できていないこともあるでしょう。

「住み心地」は居住者の主観的な判断も加わりますのでよりその評価は
デリケートなのです。


「住み心地」で喜んで頂ける住宅は、

「消費者が期待する性能の家」を、
「正しく説明」して、「正確に工事」できる

「真面目で嘘をつかない誠実な住宅会社」

でないと実は作れないのです。


だから、そうでない会社にとっては、「住み心地」を「メリット」として
アピールすることは不都合なことなのです。



 C.社会背景:国の制度・方針にも問題


一級建築士さんは建築の専門家。

だから「構造計算」や「住み心地」に関してもプロのアドバイスが聞けるはず・・・

だと考えてしまいますよね。
ヒューザーの耐震偽装問題の時、

構造計算のミスを一級建築士が見抜けない
ことが社会問題化しました。

それどころかほとんどの一級建築士が「構造」のことは一応勉強はしているものの

実際は「構造計算」ができないことが判明しました。

「構造計算」は実は素人が考えるより

かなり専門性の高い高度な技術でなのです。
一級建築士なら誰でも「構造計算」ができると考えるのは、

医者なら誰でも「ガンの手術」ができると

考えるのと同じだったのです。
ちなみに「構造計算」については、

平成18年12月に法改正がなされて
一級建築士の中でも特別に試験に合格して

「構造設計一級建築士」と
認定された人でないと行えないようになってきています。


それでは「住み心地」についてはどうでしょうか?
同じように一級建築士さんなら「住み心地」についても

詳しくご存じのはず・・・
と素人は考えてしまいますよね。
しかし、建築士の試験科目は

「計画」「法規」「構造」「施工」の4科目。

この中に、「住み心地」に関する

「温熱環境」「空気環境」に関する項目は

ありません。
びっくりされるかもしれませんが、

「住み心地」に関する知識が全くなくとも
一級建築士試験には合格できてしまうのです。

だから、例えば夏の快適さを無視した、「窓だらけの家」を

設計してしまうような建築士さんが後を絶たないわけです。

今でも、

「日本の建築技術者の中には外部の

温度変化や日射の影響を受けにくい快適な

室内環境を守るノウハウを持つ人たちはほどんどいない。」

と言われています。


国土交通省が、住宅の性能を向上させるために

大手ハウスメーカーの
研究機関と共同で「性能表示制度」を作りあげ実施しました。

しかし、鳴り物入りで制定されたこの

「性能表示制度」で高い性能評価を
得ているはずなのに、

実際に生活している人の「住み心地」の評価は

いま一つ高くありません。


何故でしょうか?

大手ハウスメーカーが中心になって

制度づくりをしてしまったために
「住み心地」が大きく向上するとしても、

彼らが販売しにくくなるような
仕様設定を見送ってしまったからなのです。

性能表示制度は10の項目で評価しますが、

「住み心地」に係る部分の評価はその一つに過ぎず

、その部分の評価が低くとも残りの9つの評価を
高めれば、それで「いい住宅」であるという

評価となってしまうのです。

「住み心地」を本当によいものにするには実は 

それなりの建築コストを覚悟する必要があります。

大手ハウスメーカーは性能表示に関して、

販売しにくくなる「住み心地」の
向上を後回しにして、比較的わかりやすくて

しかもコストをかけずに高評価
できる項目に力を入れたのです。


そのおかげで、

「性能評価上」は高性能住宅を手に入れる
ことができます。

例を挙げると、省エネ基準の最高レベルは

「次世代省エネ」基準となっています。
これは「上質な住み心地」を実現する観点でみると

断熱性・気密性のレベルが
かなり低いレベルつまり

、計画換気が確実におこなわれるとは言えない
レベルであっても「次世代省エネ」基準に

該当してしまいます。


このようにたとえ性能評価上、

高い性能評価の住宅でであっても「サッシ」
「断熱・気密の工法」「地熱利用」「排熱工事

」のコストを省かれている
ために「上質な住み心地」を実現できない住宅が

供給され続けています。


建築の専門家が「住み心地」に関してもっともっと勉強し そして
それを制度化することが望まれます。



RECOM㈱
代表取締役 田中勇一
RECOM新築用web 
http://www.recom.ne.jp/

低予算でも高い