トリノの街で見かけるオリンピック公式スポンサーで一番目を引くのは 日本のパナソニック。とにかく”ビエラ”の宣伝をあちこちで見かけます。

我々が宿泊しているホテルがたまたまパナソニックの会社の常宿なので、特に関係者の方とよくお会いしてしかも ビエラで会場の映像を見せてもらっています。おかげて私もすっかりビエラが欲しくなってしまいました。^^

ツアーの他の参加者から聞いたところにいると 我々の泊まっているこのホテル どうも マスコミや公式スポンサー向けに借り切ってあるらしく 警備員がやたら多くて 警備が厳重です。

スピードスケートの会場でお見かけした ダウンタウンの浜ちゃんや フジテレビのアナウンサー(名前忘れた)など 会場で見つけては うわぁ~と 喜んでいましたが 実は このホテルでも 見かけることが できるそうです。知らなかった・・・。

男子フィギュアの高橋大輔選手ファイギュSPの応援に行ったときのこと。たまたま JOCの役員方が横にいらっしゃっていろいろお話を聞くことができました。このJOCの方は オリンピックと言えば ここ20年位 夏も冬もすべてのオリンピックに参加しておられる とても”うらやましい”方で、このときJOCの中で一番話題に上っていることを教えてくださいました。 その時一番 話題(問題?)になっていたのは ファギュアスケートの採点方法でした。その問題とは 昨日のフィギュアのペアのフリーで銀メダルに輝いた 中国のペアの採点に関してでした。 聡子のブログにもありましたように、会場で生で見ていた私達(会場全体の観客)は 涙無しでは見られない 感動の”銀メダル”でした。たぶん今大会で 一番の”銀”メダルでしょう。

この銀メダルの採点のどこが問題となっているのか。 日本のマスコミでは ほとんど 否 全くと言っていいほどとりあげられていませんので 現地で見ていた 田中勇一が この問題を掘り下げてみます。

問題となった 中国のペアはジュニアの時から注目をされている若手で 日本でも昨年末の NHK杯で優勝したペアだといったら、知っている人も多いと思う 張丹・張昊(チョウタン・チョウヒ)のペアです。

このペアの演技は 息がぴったりあっているだけでなく、若さと力強さで印象の強いペアで特に 他の選手の演技に比べ、50センチ位高く投げ上げているのではないかと 思うくらいの スロージャンプ(遅いジャンプじゃなくて、男性が女性を高く投げ上げるジャンプ)で有名です。SPでは2位につけていたので、フリーの演技しだいでは、中国初のフィギュアペアの金メダルも夢ではない位置に付けていましたし、銀メダルは間違いない位の勢いがありました。このペアの演技は最終グループの最後が順番でした。

待っていて緊張もしたでしょうが、特に前の演技でロシアのペアが最高の演技を行い、かなりの高得点がでていたので、きっと力も入ったのでしょう。演技に入って40秒程したところの スロージャンプでいつもよりさらに高く 男性が投げ上げてしまいました。 女性はたまらず、着地に失敗 右足の内側を強く強打して 演技を続けられない状態になりました。ここからが問題なのです。

フィギュアで転倒することはよくあります。転倒してもすぐに起き上がって、演技を続けるのが普通ですし、転倒した分は減点されてそれで演技は終わります。

ところが、転倒した張丹はそのまま 演技を続けられず、リタイアしたように見えました。当然 音楽も止まって場内は騒然。なにせ銀メダル有望のペアのリタイアですから・・・

オリンピックのよいところは 各国の選手が争っているので、観客は自国の選手をもちろん応援していますが、ひとたび、怪我をしたりトラブルが選手に起こるとその選手に頑張るように 大きな声援が起こります。私は これが平和の祭典で、 観客がすべての選手に暖かいので オリンピックが大好きなのです。

張丹・張昊ペアにも惜しみない拍手と声援。よく頑張った、惜しかった、大丈夫か???いろんな国の言葉で、励ましの言葉が送られていたと思います。

さて、ここでそのままリタイアなら問題は起こりませんでした。惜しかった、残念だったと。

しかし、リタイアするのかと聞かれた、張丹は首を振ってリタイアしません、では演技を続けるのか、 いや演技もつづけられません・・・ というやりとりが行われているのが 遠目で見てもわかりました。

いくら若いペアでも 銀メダルのチャンスはそうは訪れません。まして、オリンピックを目指して、死にもの狂いで練習してきたのですから、最後まで演技はやりたりでしょう。よくわかります。

10分かそこらの間 そういうやりとりがなされていたように思います。大事をとってか 担架も運ばれて来ていました。やめるのか?続けるのか?

固唾を呑んで見守る中、やりたいといったんでしょう、張丹は 10分くらいした時点で リンクを試しに滑ってみました。でもかなり痛そう。ひょっとしたら骨折してるのでは、無理をしない方がよいのでは・・・心配した観客からの声援。見ている限り 普通に滑るのが精一杯で演技など 無理では・・・

それでも 張丹は止めるといいません。 もう少し待ってくださいと言っている様子。

どうなるんだろう。

さらに5分くらいしたときに、意を決したように、突如 二人が滑り始めました。

テストスケーティング・ウォーミングアップやっているように見えました。

そして、きっと 言ったのです。 演技を続けますと。

しかし、疑問がありました。始めからやり直すのか。それはダメです。

始めから、やり直したいですよね。例外はダメです。

では どうしたのか?

転倒した40秒地点音楽を聞き流して、、転倒した次の場面から 演技を再開したのです。

まるで何もなかったかのように。

しかも、足は痛いだろうに 演技は完璧でした。張昊が張丹(女性)を下に下ろすしぐさが ややいつも

より丁寧さを感じましたが、それ以外はいつも以上に完璧でした。

一度 失敗したら もう遠慮して 思い切って投げられないと思った スローもいつもどうり大きな演技でした。

失敗しても 信頼関係を失わず、しかも 痛い足でも確実にこなせる 演技に確かな技術と二人のレベルの高さを感じると同時に 最後まで 必死な二人の演技に心を奪われないものは いない と言える 会場の

雰囲気でした。

演技は 終わりました。

問題は 採点です。 

どうなるのだろう。

これを 読んでくれている あなたなら どう採点しますか。

結果は 金メダルペアに 惜しくも届かない、銀メダルでした。

会場は いつまでもいつまでも大歓声、拍手の嵐でした。

次の日の イタリアの新聞。この審判の判定に大クレームが起こり、審判団に大きな非難の

声が多く寄せられました。前回のソルトレークオリンピックで問題になった 情実判定をなくすため

の新採点システムなのに、またも情実判定。転倒したら誰だってもう一度 やり直したい。

この判定はおかしい。。。複数の金メダルを獲得したイタリアの英雄 アルベルト・トンバもゲスト

出演して 大いに怒りをあらわにしていました。

前回のソルトレークの反省で、会場でいくら盛り上がっても 専門家が技術をしっかり判定して公平を期する採点システムが、導入されました。地元選出の選手が出場する場合、会場は技術・演技構成の良し悪しにかかわらず、特に盛り上がります。この盛り上がりに、判定する審判員が惑わされること無く採点ができるようになったはずなのです。

それが、今回の中国ペアの時には、前回の教訓が生かされていない、それが非難の原因でした。


さて、今回の判定はどうだったのでしょう?

結論からいうと、現地で見ていた私は 審判員の判定は正しい(銀メダルで正解)と思っています。

理由は

1. 情実判定はあったのか?・・・

ちょっとはあったかも知れないが 審判員は意外に冷静に判断していてしっかり技術点で判定している。その証拠に演技構成を採点するプログラムコンポーネンツの点が高得点なのではなく、技術点を採点するテクニカルコンポーネンツが高得点であった。

2.本当に技術は確かだったのか?・・・

転倒の分を正式に減点しても、その残りの演技で採点しても 確かに 技術があった私は思います。転倒して、崩れてもおかしくない信頼関係も、練習のたまものなのでしょうか、二人の演技には相手をより思いやりながらの、真に心を打つ演技でした。

3 演技のやり直しはゆるされるのか?

これは難しい問題です。ですが、あえて言うと、転ぶまでの部分をやり直して 最初からやりなおすのは許されないと思います。このペアの場合、転んだ後の部分から、演技を続けた このように解釈された   

のだと思います。もちろん 転倒は大きな減点をされています。その後行われたフィギュアのシングルでも、レベルの高い選手が転倒しても銀メダルを獲得したことから考えても、おかしくないと思います。    

4 では問題はなかったのか?

このような場合に備えて しっかりともっとルール作りとそのルールを公開すべきだと思います。0.1点でメダルの色が変わったり 惜しくもメダルを逃したり 4年に一回しかないオリンピックで、気分で採点が変わっている印象を持たれてしまうことはやはり問題です。今後に課題は残しましたが 会場で見ていた 私は 銀メダル の判定は正解だと思っています。


この原稿は トリノの現地で書き始めましたが、日本に帰ってきて 大幅に加筆して 本日 公開となりました。 田中勇一