この時期、体調がすこぶる良いので、あれだけ食べられなかった病院食もほぼほぼ食べられている。
不思議なものだ。見ただけで気持ち悪くなったものが、今ではこうして食べられる。
やはり、元気なことって素晴らしいんだな。と、また、当たり前のことを考えながら、本日の夕食も完食した。
夕食に出たフルーツのオレンジを勢いよくかぶりついたせいで、オレンジの繊維が歯にはさまった。
こいつが結構厄介だ。取れない時はずっと取れない。
どこにしがみついたら、そんなに取れないものかと思う程だ。
ティッシュでゆっくり繊維を取っていたら、なんか違う物が取れた。
おー、マイゴッド。
歯が取れた。
歯と言っても、被せ物だ。
被せ物と言っても、文字通り取って付けたようなものなので、歯医者さんからは、すぐ取れますよと言われていた。
確かに、すぐ取れたわ。
しかし、この歯はとても思い出深い歯なのだ。
まだ元気だった頃、お酒を飲んでいた私は、普通にトイレに行って、普通にお小水をした。
まだ出し終わらない時に、急に目の前が真っ暗になって、そこから記憶がない。
お小水の途中で見事に失神したのである。
人生初めての気絶だった。気づいたら・・・トイレでぶっ倒れていて、シャツは血だらけ。
なんじゃこりゃー!と、またしても松田優作ばりに叫んで鏡を見たら、顔も血だらけ。マジ卍。
なんなら、チャックも空いたまま。
全く状況を掴めない私は、一気に酔いも覚め、この状況を分析するので必死だった。
おそらく、お小水の途中で、血流だか血圧の関係で気を失い、そのままぶっ倒れてしまったのだろう。
怖すぎる。
少し落ち着いた私は、とりあえず起き上がり、状況を再確認した。
途中で入ってきたおじさんに「大丈夫ですかー?」と聞かれ、大丈夫じゃねーだろ!と思いながら、笑って「あ、大丈夫ですー。すみません!」なんつって、謎の謝罪も添えながら強がってみせる。
血を拭いながら、改めて鏡を見ると、上唇から大量の血が出ており、なんか貫通している。
なんじゃこりゃ・・・。2回目の優作を呟いたところで、そのまま目を下にやると、歯が見事に欠けていた。
この歯が上唇に刺さったのか?銃弾を探す様に必死に上唇の中を探したが何も無かった。
うーん、一体。
いづれにしても、やばめなことは確かだ。
血が止まったところで、一緒に飲んでいたメンバーに謝罪し、その日はシャツ1枚で帰宅した。
という思い出深い歯の被せ物が取れたというお話である。
この失神事件は後日談がいっぱいある。けど、ここで書くと長くなるのでやめておく。
とにかく、お酒を飲んだ時のトイレには十分気を付けていただきたい。
そして、繰り返し、お口の中は大事にしていただきたい。
失神なんてしたら、神様の存在が失われてしまうかもしれない。
髪は失っても、神は失ってはならない。
それが失神だ。