三回目の一時退院、無事に自宅へ戻った。

 

今回は10日ばかりの短い再入院だったはずだが、だいぶ久しぶりに感じた。

 

味覚もバグるのであれば、時間感覚もズレてしまうようだ。

 

いつにもまして家の周りの景色が懐かしかった。気持ちの問題なのかしれない。

 

一度は中止になった骨髄移植だったが、有難いことに、再度ドナーさん候補が見つかり調整が進んでいた。

 

順調に移植となれば、今回の退院が移植前の最後になり、再入院すれば2~3カ月病院に缶詰になることが予想される。

 

抗がん剤治療では、長くても1カ月強の入院だった。

 

1カ月でも気持ちは限界に達する中で、2~3ケ月ともなると、どうなってしまうのか想像がつかない。

 

しかも、様々な副作用や合併症などと闘う可能性が大いにある。

 

もはや、覚悟を決めるしかないのだが、そういう意味では、今回の退院は心身共に極めて大切なリフレッシュタイムである。

 

学校を終えた子供たちが帰ってきた。今回もなんだか雲行きがおかしい。

 

長女と次女が早速喧嘩して帰ってきた。あら。

 

過去2回とも、不覚ながら長女と次女に激怒して、一気に体調が悪くなった反省がある。

 

帰ってまだ1時間。またも同じ過ちは許されない。

 

でも、長女の不機嫌が止まらない。2度ある事は3度あるとも言う。

 

あー・・・親スイッチ・・・が。

 

しかし、グッと堪えた。

 

よし、ちゃんと話を聞こう。長女と次女の喧嘩の顛末を相槌百倍で聞いた。

 

結果、2人の機嫌も直ってきた。あー良かった。急いでお菓子を贈呈し、おやつタイムで事なきを得た。

 

3度目の正直で順調な退院生活のスタートを切った。

 

初日から楽しむぞ。

 

夕食にお寿司をリクエストし、久しぶりに生魚を食した。

 

残念ながら、味覚は応えてくれなかった。素材の食感を敏感に感じすぎて、酢飯も醤油も何故か味がしなかった。

 

不思議だ。まーしょうがない。

 

それよりも、家族団らんで食べるご飯が楽しかった。

 

すっかりご機嫌を取り戻した子供たちは、テンション爆上がりで、家族のモノマネ大会で盛り上がり始めた。

 

こいつら天才か、と思うくらい、レベルが高い。ケラケラ笑ってしまった。

 

子供ってのは本当にちゃんと見てるんだな。

 

そう思いながら、病院では見せることのない笑顔で笑ってしまった。

 

素晴らしいことだが、つい、病人であることを忘れてしまう。

 

笑えば笑うほど、激しく頭痛がしてきた。

 

そして、何より、うるさいうるさい。脳の中枢にキンキンと高い声を響かせてくる。

 

物凄い声量だ。先日体験したMRIよりもうるさい。

 

どんどんと頭は悲鳴を上げ、ガンガン、ギンギン、ついには星が回り始めた。

 

でも、モノマネめっちゃ面白い。ケラケラ、カタカタ。

 

そんな擬音語満載のなんとも激しい宴となった。

 

今日は金曜日。我が家では花金は、夜な夜な金曜ロードショーを見ながら、お菓子をボリボリ食べることが許されている。

 

病院なら消灯しているこの時間に、背徳のポテチとジュースを口いっぱいに頬張りながら、輪になってリビングを囲んでいた。

 

もはや、誰も金曜ロードショーなんか見ていない。

 

そして、この場所に看護師さんがいたなら、往復ビンタで成敗されているだろう。

 

気付いたら、リビングで寝ていた。

 

こんなに頭ガンガンになったのも、笑顔サンサンになったのも、いつ振りだろうか。

 

楽しかった。

 

改めて病院の静けさと家の騒々しさを感じながらも、笑える幸せに浸っていた。

 

良くも悪くも子供はピュアで美しい。

 

子供といると楽しい自分は、やはりまだまだ子供なんだと思う。

 

そう思いながら、また眠りについた。