前にも書いた通り、私の場合、どんなに治療が辛くても、どんなに食欲が無くても、食べ物の欲だけは損なわれることが無かった。

 

大食いYouTuberの動画を見あさり、高級食材が捌かれるシーンをヨダレを垂らしながら眺め、挙句には動物達が必死に食事をする姿に感銘を受けていた。

 

食べたい物は常にリストアップしながら、一時退院の時にはできるだけ食べることはできたので、都度都度概ね満足はしていたと思う。

 

ただ、それでも本能的にはまだまだ満足していないのか、また再入院をすると食べたい物がどんどんと出てくるのだ。

 

基本的に大好きな肉料理や寿司なんかをベースに、そんな感じの料理を食べたいと思うのだが、もはや2周も3周もしてくると、自分でも全く予想できない食材が脳裏にポンポンと描かれる。

 

まず、伊勢海老。

 

小さい頃に人生で一度だけ食べた記憶しかないが、無性に伊勢海老が食べたくなった。

 

丸ごとガブっとな。こりゃ、美味いに違いない。

 

続いては、鰻。

 

ウナギなんて、人生で一度も食べたいと自分から言ったことのない食材だ。

 

それが、何故か突然出現する。

 

伊勢海老も鰻も高級食材だ。

 

これはもしや。

 

生きるか死ぬかの世界にいると、本当に美味いものを食べたくなるやつか。

 

そんなことを思いながら・・・

 

しかし、全くそうではないことに気付く。

 

何故なら、次に出てくる食材が可愛い過ぎるからだ。

 

続いて登場するのが、タコさんウインナー。

 

これが無性に食べたくて仕方なかった。

 

あの真っ赤な可愛いフォルムに、何ともケミカルな味。

 

いや、むしろ田舎の味を連想させる懐かしいタコさんを喰らいたくて喰らいたくて。

 

大好きなナポリタンにたくさん入れて。

 

ここまで来ると、やはり一貫性のない支離滅裂なメニュー群である。

 

最後は、お雑煮。

 

お正月にしか食べないお雑煮。

 

しかも、小さい頃は儀式的に半ば食べさせられていた記憶のある代物。

 

大人になるにつれ、そのおいしさに気付いていくが、言っても1年に1回しか食べない料理だ。

 

それが、突然食べたくなるのだから、実に不思議である。

 

これ以外にも、新たに食べたいメニュー群は日々出現している。

 

食べたい欲があるうちはまだまだ元気か。

 

と思いながら、今日も舞い降りてくるメニューを楽しみに待っている。