骨髄移植の日が刻一刻と近づいてきた。
先に申し上げた通り、予想を覆すべく、ドナーさんが決まり、トントン拍子に移植の話が進んでいった。
病院側も移植前の検査を実施すべく、急いで移植に向けた準備を進めてくれた。
家族も、正直長丁場になると予想し、ドナーさんが現れてくれることを毎日願っていたから、この状況をとても喜んでいた。
候補者もそう何人もいる状況ではないので、ぜひ、本決まりになることを心から願いながら。
そんな中、いつもの回診前に主治医が私のところにやってきた。
担当医が来ることはあっても、主治医が単独で直々に来ることはあまり無い。
お、どした。
そう思いながら、先生の顔を見た。
先生は淡々と「残念なお知らせですが、移植が難しくなりました」。と伝えた。
理由は、どうやらドナーさんが行う最後の術前検診で引っかかってしまったようである。
オーマイゴッド。
やはり、そううまくは行かないのが世の常である。
私は、少々驚きはしたが、決してショックは受けなかった。
入院してから何が起きても良い覚悟はできていたから、こういうこともあると、すんなり受け入れた。
それよりも、顔も名前も見たことのないドナーさんに対して、ここまでご協力いただいたことを心から感謝したかった。
直接言えるのなら明日にでも御礼申し上げたいくらいである。
有難うございましたと、心の中で呟いた。
もしかしたら、私よりもドナーさんのほうが悔しかったのではないかと思う。
それだけ人のために尽くせる心を持った素晴らしき人である。
今回は残念ながらドナーさんに巡り合うことができなかったが、必ずドナーさんが見つかることを信じて、また明日から頑張ろう。
とりあえず一時退院まで、移植前の様々な検査は継続して行うことになった。
一歩一歩。
二歩進んで一歩下がって、一歩ずつ前に行けば必ずゴールに辿り着ける。
この病気に勝てるのは、兎ではなく亀である。